交換レンズレビュー

ソニー FE 28-70mm F2 GM

F2のボケと解像を全域で両立 表現行為をアシストする大口径標準ズームレンズ

ソニー「FE 28-70mm F2 GM」は、35mmフルサイズセンサーに対応したEマウント用の大口径標準ズームです。

最大の特徴は、28-70mmという標準的なズーム域で、開放F値2通しという異例の明るさを実現した点です。αレンズ初となるF2通しの本レンズは、高い描写性能はもちろん、サイズ感や操作性も大幅に進化しており、「ズームレンズの技術もここまで来たか」と感心させられる、高い実力を備えています。

サイズ感

外形寸法は約Φ92.9×139.8mm、質量は約918gです。標準ズームとしては大柄で重いと感じるかもしれません。しかし、ソニーの「FE 24-70mm F2.8 GM(初期型)」(約Φ87.6×136mm・約886g)から一回りほど大きく重くなった程度です。つまりF2通しのズームレンズとしては、十分に小型・軽量に仕上がっているといえるでしょう。

なおインナーズームではないためズーミングで鏡筒が伸縮しますが、望遠端にしても全長の伸びはわずかで、撮影中に取り回しが不便になることはないでしょう。

操作性

リング類はレンズ先端から順に「フォーカスリング」「ズームリング」「絞りリング」という、他のG Masterと同様の配置です。いずれも適度なトルクでスムーズに動かすことができ、上質な操作感を楽しめます。

標準ズームということもありボタンやスイッチ類は多くありませんが、「フォーカスモードスイッチ」の他に、各種機能を割り当てられる「フォーカスホールドボタン」を2カ所に搭載しているのは、さすがG Masterといえる点でしょう。絞りリングを「A」ポジションにロックできる「アイリスロックスイッチ」も備わっています。

絞りリングのクリック有無を選択できる「絞りリングクリック切り換えスイッチ」も搭載。静止画撮影ではクリック有り、動画撮影ではクリック無し、といったように状況に応じた切り換えが可能です。

本レンズの操作性で特徴的なのが、「ズーム操作感切り換えスイッチ」です。スイッチを切り換えることでズームリングの重さを調整でき、スムーズな操作感を求めるなら「Smooth」、重めの操作感で不用意な鏡筒の繰り出しを防ぎたい場合は「Tight」といった具合に使い分けられます。大口径ゆえに重くなるレンズ構成を制御しつつ、好みのズーム操作感を選べる、優れた機構です。

G Masterらしく、高機能で本格的なレンズフード「ALC-SH182」が同梱されています。フードを固定するロックスイッチや、先端を保護するラバーカバーも装備。

さらに、PLフィルターなど回転式のフィルターを操作しやすくするための窓も用意されており、標準ズームの付属品としては贅沢な仕様です。

解像性能

あえて開放絞りF2で、平面的な建築物を撮影しました。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/28mm/絞り優先AE(1/2,500秒、F2.0、±0.0EV)/ISO 100

画面全体で素晴らしい解像感が得られています。フルサイズ対応の大口径標準ズームで、しかも開放絞りのF2での描写性能の高さには驚かされました。さすがに画面の四隅ではわずかに結像が甘くなりますが、拡大してようやく気付くレベルなので、実用上問題ないといって良いでしょう。

望遠端70mmでも高い解像性能は健在です。画面四隅の像の甘さがさらに抑えられ、広角端に比べて画面全体の均質性がより高まっています。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/28mm/絞り優先AE(1/2,500秒、F2.0、±0.0EV)/ISO 100

中望遠域の開放絞りで平面的な被写体を撮る機会は少ないかもしれませんが、いかなるシーンでも安定して高い解像性能が得られるのは心強い限りです。

近接撮影性能

本レンズの最短撮影距離は0.38m、最大撮影倍率は0.23倍ですが、どの焦点距離で最大撮影倍率になるかは公表されていません。

広角端28mmで最短撮影距離で撮影したのが下の画像です。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/28mm/絞り優先AE(1/200秒、F2.0、+1EV)/ISO 100

最大撮影倍率は0.2倍に満たない印象で、広角での近接撮影が得意というわけではありませんが、最短撮影距離でも画質が全く衰えない点はさすがです。また、28mmという広角でありながら、背景のボケが大きく美しい点は特筆に値します。

そして、望遠端70mmの最短撮影距離で撮影したのが下の画像です。手のひらで包んだ花のイメージを表現するのに十分な大きさで写せました。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/70mm/絞り優先AE(1/200秒、F2.0、+1EV)/ISO 100

どうやら最大撮影倍率0.23倍は、望遠端で実現できるようです。 広角端と同様、大きく美しいボケ味には感心させられます。ボケ味と解像性能の両立という、G Masterの思想は本レンズにも確かに生きています。

作例

テレ端の焦点距離70mm、開放F2でのポートレート撮影です。標準ズームの望遠端では「もう一歩望遠側に振りたい」と感じることもありますが、本レンズはF2という並外れた大口径により、理想的で大きく美しいボケ味が得られています。。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/70mm/絞り優先AE(1/400秒、F2.0、+1EV)/ISO 100

焦点距離50mmでのポートレート撮影です。標準域の50mmでも、大きなボケ味で被写体を印象的に際立たせることができるのは、F2通しである本レンズの魅力でしょう。F2.8通しとF2通しの差は絞り1段分ですが、実際に使うと、その差が表現力において想像以上に大きいことを実感できます。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/70mm/絞り優先AE(1/320秒、F2.0、+0.7EV)/ISO 100

被写体認識を「動物」に切り換えて猫を撮影。F2通しの標準ズームレンズのため、フォーカスレンズ群は当然重く大きいのですが、4基のXDリニアモーターによる高精度な制御により、驚くほど素早く正確なAFが実現されています。 画像を拡大すると、ピントが合った猫の瞳の解像感に圧倒されるほどです。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/52mm/絞り優先AE(1/60秒、F2.0、−1EV)/ISO 100

再び猫に遭遇したので撮影させてもらいました。地面すれすれから周囲の景色も入れたかったので、広角端28mmを使用。「α7R V」の4軸マルチアングル液晶モニターを生かしてローアングルで構図を決めました。

広角端の28mmは、現在F2.8ズームで主流の24mmより狭く感じられますが、実際に使ってみると、むしろ自然で無理のない画角に感じられました。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/28mm/絞り優先AE(1/160秒、F2.0、−1.7EV)/ISO 100

標準ズームなので、スナップ撮影との相性は抜群です。 ここでは焦点距離40mmを選択。被写体を見たままの印象で切り取れる、個人的に好きな画角です。 単にF2通しの大口径というだけでなく、卓越した光学性能の高さが、撮影後の満足感を大いに高めてくれました。

ソニー α7R V/FE 28-70mm F2 GM/40mm/絞り優先AE(1/80秒、F4.0、−2.7EV)/ISO 100

まとめ

F2通しのズームレンズだけあって相応に大きく重いのですが、描写性能が素晴らしく表現の幅も広いため、実際に使っていると満足感の高さが物理的なサイズ感を上回る、不思議な魅力を持ったレンズです。

操作性も極めて良好で、最新G Masterの機能は十分に備えています。 その上で、ズームリングの操作感を調整できる「ズーム操作感切り換えスイッチ」を搭載するあたりは、本レンズが標準ズームの中でも特別な存在であることを物語っています。

大げさにいえばまさに、「単焦点レンズいらず」とも捉えて良い標準ズームかもしれません。使用頻度の高い焦点距離をこれ1本で賄えるのですから、価格面でみても納得がいく実力といえるでしょう。

モデル:明日香

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。