交換レンズレビュー

SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary(キヤノンRFマウント)

超小型なのに開放F1.4 キヤノンRF-S唯一の中望遠レンズ

シグマから発売された4本のAPS-Cセンサー用キヤノンRFマウントの単焦点レンズのうち、最も焦点距離が長いのが「56mm F1.4 DC DN|Contemporary」です。

すでに他マウント版が発売済みですが、新たにRFマウント用が加わったことで、キヤノンユーザーもその画質を楽しめるようになりました。

APS-Cセンサー搭載のEOS Rシーズに装着すると、1.6倍換算で90mm相当の中望遠レンズとなります。

最短撮影距離は50cm。開放F1.4ということで、絞りを開ければ前ボケ・後ボケともに、大きくぼかすことができます。キットレンズにはないボケの美しさが単焦点レンズならではの魅力でしょう。

外観・機能

大口径レンズというと大きくて重いイメージがありますが、本レンズは軽量コンパクト。シグマRFレンズの中で最も焦点距離が長い割に、実は1番コンパクトな作りになっています。

小型軽量ということで、小ぶりなEOS R10とのバランスも良好。持ち運びしやすく、それでいて、絞り開放F1.4の大きなボケが楽しめます。

小さなレンズですが、マウントは金属製。簡易防塵防滴構造となり、発売済みのキヤノンEF-M版と違い、マウント部にはゴムのシーリングが採用されています。

AFはスムーズで、迷うようなシーンはありませんでした。絞り開放付近で撮影するときの被写界深度が極めて浅くなるので、ピントの確認はかなり慎重に行っています。同じシーンで多めに撮影しておき、なるべく撮影後に拡大して確認しておくといいでしょう。

F1.4ということでボケの質が気になるところですが、円形絞りを採用しているので、木漏れ日や点光源のボケが丸く、綺麗な形になります。さすがに画面の四隅では点光源のボケがレモン型になる口径食が発生しますが、中心部はある程度絞っても綺麗な丸いままです。

付属のレンズフードを装着したところ。それでもまだ小さく感じられるレンズです。

最短撮影距離

最短撮影距離は50cmで、最大撮影倍率は1:7.4。近接撮影でも解像感が高く、90mm相当という焦点距離もあり、テーブルフォトや花のクローズアップが得意なレンズです。

最短撮影距離付近で撮影したビオラの花。小さい花にもほどほどに迫ることができます。小さな被写体でも周囲をボケで包むことで、主役を引き立てることができます。空間を埋めるように前後にボケを入れました。

キヤノン EOS R10/SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary/56mm(89.6mm相当)/絞り優先AE(1/400秒、F1.4、+1.3EV)/ISO 100

作例

地面スレスレのアングルで落ち葉を撮影。葉脈の描写がとてもシャープでありながら、手前の草の輝きのボケが滑らかに描写されています。

キヤノン EOS R10/SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary/56mm(89.6mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F2.5、−0.7EV)/ISO 100

葉っぱの鋭い質感まで写し出すほどで、同じシグマのArtラインレンズに迫る切れ味です。90mm相当ですが、引いて撮ることで広がりを表すこともできます。

キヤノン EOS R10/SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary/56mm(89.6mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F6.3、−2.0EV)/ISO 100

西陽が差し込んで、壁に木の影が落ちていました。拡大してみると、壁の小さな凹凸や窓枠の塗装の剥げなど、細かな部分までリアルに描写されていることがわかります。

キヤノン EOS R10/SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary/56mm(89.6mm相当)/絞り優先AE(1/250秒、F8.0、−2.3EV)/ISO 100

午後の光なので弱めですが、逆光で輝くボケが綺麗です。絞り開放だと距離によっては背景がぐるぐるしたボケに見えますが、全体的には素直な印象です。

キヤノン EOS R10/SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary/56mm(89.6mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F1.4、+1.4EV)/ISO 100

まとめ

小型軽量で被写体に寄れて、シャープな解像力も持ち合わせている。使い始めたときはテーブルフォトに向いたレンズだという印象でしたが、都市風景や夜景にも実力を生かせそうです。画角やボケの大きさ、AFの速さなどを考えると、ポートレートでも使いやすいでしょう。いわゆる中望遠レンズの入門として、幅広く勧められる1本だと感じました。

レンズの選択肢が増えるということは、それだけ撮影の楽しみも増えるということ。キヤノン純正レンズ以外にも、こうした完成度の高いサードパーティ製レンズが発売され、ミラーレスカメラの世界がもっと賑やかになることを期待しています。

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。