交換レンズレビュー
OM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 MACRO IS PRO」
驚くほどコンパクトな望遠マクロレンズ 最大撮影倍率2倍の「S-MACRO」モードも
2023年4月12日 08:00
春本番。頭上に、足元に、花たちが膨れ上がるように咲いています。ということで、今回は美しく可憐な花々をOM SYSTEMの新たなレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」で撮影しました。
OM SYSTEMのレンズには、35mm判換算で60mm相当の標準マクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」(以下30mm F3.5)、120mm相当の望遠マクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」(以下60mm F2.8)がありますが、2月24日に発売されたのは、最も焦点距離が長い望遠マクロレンズです。
いわゆる標準マクロレンズ、中望遠マクロレンズ、望遠マクロレンズのそれぞれに特徴がありますが、望遠マクロレンズのメリットとしては、ボケの大きさ、そして被写体との距離を長く保てることでしょう。花壇の奥にある花を狙ったり、気づかれないよう近づきすぎずに昆虫を撮ることができます。
最大撮影倍率は1倍(35mm判換算で2倍相当)。後述する「S-MACRO」モードでは2倍(同4倍相当)となり、接写性能に問題はありません。
既存の60mm F2.8(120mm相当)より、さらに焦点距離が長い90mm(180mm相当)の望遠マクロレンズは、花のクローズアップ撮影がメインの私にとって、待望のレンズだったのです。
外観・機能
30mm F3.5や60mm F2.8に比べると、大きさ・重さともにアップしますが、マイクロフォーサーズはシステムとしてコンパクトになるので、180mm相当の望遠マクロとしては453gと軽量、コンパクトといえるでしょう。一日中、手持ちで撮影していても腕が疲れにくいのはありがたいです。
フォーカスを合わせるとき、レンズの全長が伸びないインナーフォーカス式なのもポイントです。撮影倍率を高くしたときにレンズが繰り出して、うっかり狙っていた水滴を落としてしまったり、レンズ前面に花の花粉をつけてしまう心配もありません。
ピントリングは幅広く、マニュアルフォーカスの操作も容易。ピントリングを前後に動かすとオートフォーカス(以下AF)とマニュアルフォーカス(以下MF)の切り替えができます。
レンズの側面には「フォーカスリミットスイッチ」が備わっています。AFが作動する距離を制限し、近距離でより素早くピントを合わせをするための機能です。一般的なレンズの場合、このスイッチは2段階程度の距離範囲を選択できますが、このレンズでは「0.25m〜∞」「0.25〜0.5m」「S-MACRO」(後述)の3段階が用意されています。
「L-Fn」ボタンにはさまざまな機能を割り当てることができます。例えば「MF切替」を設定すると、AFが合いにくいシーンで瞬時にMFへと切り替えることができます。
同梱のレンズフードはロック式。取り外ししやすく、簡単には落下しにくくなっています。
作例
次に画質を見ていきましょう。ご覧いただけるように、ハイビスカスのしべを拡大して見ると、実に細くリアルに再現されているのがわかります。このときは手持ちで撮影していますが、最大7段分の補正効果というボディ・レンズ協調の5軸シンクロ手ぶれ補正が強力。ボケも滑らかで素直な表現です。
遠景の桜も花の一輪一輪が細かに解像され、近距離はもちろん遠距離までもシャープネスの高い画像になっていました。“撮れている”感覚が得られるのは撮影中、とても軽快でした。
細かいフレーミングはズームレンズの方が便利ですが、寄り引きできるところでは、マクロレンズならではの高画質を狙って使うのも良いでしょう。
ウメのしべの先端にピントを合わせています。小さな被写体でも、AFがスムーズに合うのでストレスを感じることは少ないです。
花の近くをホバリングしているミツバチ。動いている被写体を撮るのは苦手なのですが、AFがしっかり合わせてくれたのでシャープに撮ることができました。細かな毛だけではなく、そこについた花粉までしっかり写っています。
アートフィルター「ファンタジックフォーカス」を使用。ソフト系のエフェクトを通した画像ですが、ピントの合ったしべを見るとシャープです。
F11まで絞り込んで撮ってみました。ピント面の花がとてもくっきりしています。望遠ですし、やや近い距離で撮影しているので、奥に行くに従いボケています。
夕暮れの逆光で撮影しました。レンズ表面に光が直接入り込むギリギリぐらいの角度ですが、フレアやゴーストがほとんで見られずクリアですね。+2.3EVの補正をかけてハイキーに仕上げました。ムスカリという小さな花が群生していたのですが、前後の花のぼけを入れることで奥行きが感じられます。
春の野で見られるツクシ。奥に見えるのは桜で、背景を感じられる程度のボケになっています。単焦点レンズなので焦点距離によるボケのコントロールができないぶん、絞りや被写体との距離を意識してボケ具合を調整しています。
S-MACRO
「フォーカスリミットスイッチ」を「S-MACRO」に切り替えることで、撮影距離0.224m〜0.5mの高倍率撮影を行なうことができます。このときの最大撮影倍率は2倍。撮影距離0.224m時の絞り開放F値はF5となります。さらに、2倍のテレコンバーターレンズ「MC-20」を使用すると、「S-MACRO」時の最大撮影倍率は4倍に上がります。
チョウの標本を撮影させてもらえたので、1倍、2倍、テレコンを付けた4倍で撮り比べました。
顕微鏡とまではいきませんが、肉眼では見られない細部まで描写されています。パソコンで拡大してみると、意外な造形や金属的な光沢に驚きました。
ちなみにS-MACRO使用時はもちろん、テレコン装着時もAFが働きます。上の4倍の写真もAFでピントを合わせることができました。ここまでの拡大率でAFが効くのはありがたいです。
まとめ
これまで、私の中でのレンズの使い分けを以下のように考えていました。
1. 近距離でのクローズアップ(バラの花芯だけを切り取る、水滴を狙うなど)
→M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
[さすが本職のマクロレンズ、とにかく近づけるし画質も良い]
2. カメラから離れた花を狙う
→M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
[焦点距離を稼ぎたいため明るい望遠ズームレンズを使用]
ここに新しい選択肢として、「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 MACRO IS PRO」が加わりました。「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」(以下40-150mm)より撮影倍率が高く、被写体に寄れてボケが大きい。そしてマクロレンズならではの優秀な近接画質が得られます。ただし300mm相当までズームできる40-150mmは、今後も被写体が遠い位置にあるとき活躍してくれそうです。
私の撮影は花がメインですが、昆虫や小物の撮影にも便利でしょう。これからも次々に花の咲く時期が続きます。このレンズでいろいろな作品を撮ってみませんか。