交換レンズレビュー

SIGMA 50mm F1.4 DG DN|Art

ミラーレス専用設計で最適化 気になる描写をチェック

シグマから2月23日に、フルサイズミラーレス用の“新スタンダード”レンズとして「50mm F1.4 DN DG|Art」が発売されました。

2014年に発売された交換レンズ「50mm F1.4 DG HSM|Art」は、シグマのArtラインの地位を確固たるものにしたレンズです。ちょっと重たいけれど描写もデザインもコスパも良いレンズで、私もEFマウントのものをついこの間まで使用していました。

今回は発売したレンズは、フルサイズミラーレスカメラ専用設計で、2014年に発売されたレンズをベースにミラーレス用に最適化したそうです。LマウントとソニーEマウントに対応しているとのことで、早速ソニーα1に装着して使用してみました。この記事では、そこで得た使用感をご紹介したいと思います。

外観と操作性

サイズ感は、重量660gと初代よりも若干軽くなっているのですが、手に持つと想像よりも重量感があります。α1に装着したときのサイズ感は「このサイズならギリギリありかな?」という感じです。フードは頑丈でしっかりした造りですが、つけると長い印象になります。軽量コンパクトを求める方にはちょっとつらい大きさかもしれません。逆に、それなりの質量があるので、ホールドはしやすいと感じました。

α1に取りつけた様子

絞りリングに加えて「絞りリングクリックスイッチ」が採用されていて、クリックレス選択ができて良いと思いました。静音とスムーズさが求められる動画撮影の際にも役立ちそうです。私はスチールだとクリックしたい派なので「ON」にして使いました。

一番下の「Clickスイッチ」をオフにすることでクリックレスにできます

個人的には「絞りリングロックスイッチ」がありがたかったです。撮っているうちに勝手に絞りが動いてしまっていて発狂しそうになることが時々あるのですが、このスイッチがあるとそのようなことが起こらないので大変助かりました。

真ん中のスイッチが絞りリングロックスイッチ

フォーカスリングは幅が広くて、適度なトルク感があり気持ちが良いです。

高級感のあるシグマらしいデザインが魅力的です。フードの作りもしっかりしており、ボタンでしっかりと止められるので、不意に外れることがなく高評価です。

描写性能

解像力テストは約5,010万画素のα1で行いました。解像感は絞り開放から画面全体で均一な印象です。ただ、絞り開放時の解像感は、ハッと息をのむような感じではありませんでした。個人的にはF2.8くらいから、とてもシャープで美しいと感じます。

F1.4
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/5,000秒)/ISO 100/WB:太陽光
F2.8
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F2.8、1/800秒)/ISO 100/WB:太陽光
F4.0
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F4.0、1/500秒)/ISO 100/WB:太陽光
F5.6
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F5.6、1/250秒)/ISO 100/WB:太陽光
F8.0
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F8.0、1/125秒)/ISO 100/WB:太陽光

発色はとても良いと感じました。派手すぎず、地味すぎず、ちょうどいい塩梅です。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/200秒)/ISO 100/WB:太陽光

人物の肌色の再現も良いので、スナップだけではなくポートレートにも向いているレンズではないかと思いました。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/1,600秒)/ISO 100/WB:太陽光
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/3,200秒)/ISO 100/WB:太陽光

ボケ味

前・後ろボケはクセがなくきれいです。また、ピント面からボケへのつながりもなめらかです。大口径レンズを使う楽しみを教えてくれるレンズではないかと思いました。

F1.4
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/400秒)/ISO 200/WB:太陽光
F1.8
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.8、1/200秒)/ISO 200/WB:太陽光
F2.0
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F2.0、1/125秒)/ISO 200/WB:太陽光
F2.8
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F2.8、1/60秒)/ISO 200/WB:太陽光

最新の50mm F1.4にしては、「玉ボケ」が気になりました。一般的な他のF1.4レンズも同じ傾向ですが、フレームの端の方でレモンボケが目立ちます。F2.8あたりからだいぶ円形に整ってくる印象です。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/60秒)/ISO 800/WB:太陽光

F1.4の大口径を味わうためにやはり絞り開放を使いたくなりますが、フレームの端ではレモンボケが出るので、このようなボケの形がモロに出てしまうような絵を撮影する場合は、注意が必要です。

歪曲収差

撮っていて強く感じたのは、歪曲収差です。高層ビルなど直線の多いシーンをする際、絵が内側にグンと入ってくるような印象を受けました。「最新の50mmでもここまで出るのか」と思ってしまいました。

ちなみに、RAWファイルをLightroomで現像して歪曲を補正したところ、綺麗に修正されました。直線の多い絵は編集前提で撮ったほうが良いと思います。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F5.0、1/800秒)/ISO 200/WB:太陽光
α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/5,000秒)/ISO 100/WB:太陽光

色収差

また、絵によっては色収差も目立つように感じました。オールドレンズのようにバリバリ全開に出るわけではありませんが、気になる人はつらいと思います。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.8、1/1,250秒)/ISO 100/WB:太陽光

AFの速度

AFは高速です。「いまだ!」と思った瞬間になかなか合焦せず、イライラすることはありませんでした。逆光時もAFはサクサク合ったのでビックリしました。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/2,000秒)/ISO 100/WB:太陽光

暗所でもAFはしっかりと合焦しました。夜、高速で移動する船にピントを合わせましたが、一発で合焦して気持ちが良かったです。暗所でも積極的に使いたくなるレンズです。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/125秒)/ISO 800/WB:太陽光

逆光性能

フレームに思いっきり太陽を入れて撮影してみました。逆光耐性は、悪いわけではありませんが、強めの逆光下では盛大にフレアやゴーストが入ってきました。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F8.0、1/400秒)/ISO 100/WB:太陽光

最短撮影距離

最短撮影距離は45cmです。フルサイズの50mmレンズだと最短はこのくらいかな、という印象です。テーブルフォトを撮る際、座ったままでギリギリ被写体を写せるくらいの距離感になります。欲をいえばあと一歩近づきたかったです。

α1/50mm F1.4 DG DN|Art/50mm/マニュアル(F1.4、1/100秒)/ISO 200/WB:太陽光

まとめ

デザイン性が高く、AFも高速でいいレンズに仕上がっているとは思います。ただ、初代Art 50mm F1.4がとても良かったので、その分期待が大きすぎたのかもしれません。最新のレンズであることを考慮すると、描写に関しては「あれれ?」と思う部分がありました。私はボケと収差がかなり気になりました。

ミラーレス機に装着する50mmとしては、選択肢のひとつに入ると思いますが、描写性能にクセがあるので、それを把握した上で検討するのが良いと感じました。

1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。有限会社ハーベストタイム所属。雑誌・書籍での執筆やアーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動。