交換レンズレビュー
ポートレートで使いたい待望の超大口径の標準レンズ
開放から優れた解像性能でボケも自然――M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
2016年12月20日 07:14
オリンパスのPROシリーズに待望の25mm(35mm判換算50mm相当)F1.2という大口径標準レンズが加わった。これまでズームレンズを中心にラインアップされていたPROシリーズに、F1.2という初のハイスピードレンズを待ちわびていた人も多かったのではないだろうか。
本レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」は解像力に影響する各収差を抑えながらボケの美しさを徹底して追求した設計となっており、大変自然で優しい描写を実現する。
今回は、12月22日発売のフラッグシップ機「OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II」に本レンズを装着してポートレートでの描写や使い勝手を中心に紹介していく。
発売日 | 2016年11月18日 |
実勢価格 | 税込14万750円前後 |
マウント | マイクロフォーサーズ |
最短撮影距離 | 0.3m |
フィルター径 | 62mm |
外形寸法 | 70×87mm |
重量 | 約410g |
デザインと操作性
PROシリーズにふさわしいデザインで、堅牢性の高い金属ボディーを採用。もちろん防塵・防滴性能を実現しており、雨などでも安心して使える。
レンズ構成は14群19枚。スーパーEDレンズ、EDレンズ、E-HRレンズ、HRレンズ、非球面レンズなどを採用した贅沢な作りとなっており、標準域の単焦点レンズとしては非常にレンズ枚数が多い。そのため全長は87mm、質量は約410gと手にしたときに重量感はあるが、高級レンズであるということをしっかりと感じさせてくれる。
主な操作系はフォーカスリングとL-Fnボタンのみというシンプルなもの。
フォーカスリングを手前に引くことでオートフォーカスからマニュアルフォーカスに瞬時に切り替えることができる「マニュアルフォーカスクラッチ機構」を搭載しており、操作性も十分。距離目盛りを目安にしながら目測スナップを楽しんだり、モデルの目にピントを合わせたい場合などシビアな調節が必要なポートレートにおいても大きな魅力となっている。
また、L-Fnボタンには好みの機能を設定できる。カメラ内の「L-Fnボタン機能」から自分のスタイルに合わせて設定を割り当てよう。
本レンズはAFが速く、精度も高い。カメラ本体の「顔優先AF」と合わせて使えば、被写界深度が浅い絞り開放でのポートレート撮影でも安心だ。
作例
50mm相当という画角は、人間の目で見た視野に近いと言われている。一般的に50mm前後の焦点距離を持つレンズのことを標準レンズというが、広角レンズのような遠近感が付くこともなくポートレートにも適した画角だといえる。
ポートレートの王道レンズと言われる85mm前後のレンズよりもボケを活かしつつ背景を広く写すことができ、自然な印象でモデルを切り取れる。
◇ ◇
被写体から少し距離をとって絞り開放で撮影。高い解像感がありながら、しっとりとした質感を持つ味わいのある描写だ。
絞り開放で撮影。若干ではあるが口径食が確認でき、周辺にはレモンボケが見られる。
歩道橋の手すりをモデルの手前に配置し、前ボケを作った。前ボケもクセがなく自然で滑らかな描写だ。
ピントの合っている右目からなだらかにボケが始まっている。絞り開放から解像感が高いが、パキッとしているというより自然で柔らかい描写だ。
F4まで絞って撮影。モデルの髪の毛から木の幹の質感まで、シャープに描写している。背景も自然にボケている。
場合によっては強い逆光時にフレアやゴーストが見られる場合がある。フレアやゴーストは逆に表現方法の一助になるので、個人的には嬉しいところ。
近接撮影に強いのも本レンズの特徴。レンズ先端から19.5cmまで被写体に寄ることができる。最大撮影倍率は35mm判換算で0.22倍。準マクロレンズ的にも使うことができるので、ポートレートにおける近接撮影能力に困ることはなさそうだ。
まとめ
F1.2という大口径でありながら、絞り開放から高い解像力と滑らかで美しいボケを誇るレンズだ。単焦点の標準レンズといえば安価なF1.8、上位モデルでも通常F1.4程度が多く、そこからさらに半段明るいF1.2というスペックに大きな魅力を感じる人も多いのではないだろうか。
今回はフラッグシップ機のE-M1 Mark IIを使用したが、フラッグシップ機にはPROレンズを使いたいもの。しかしズームレンズではどうしても携行性を損なってしまう。本レンズはマイクロフォーサーズの利点を保ちつつ満足のいく画質を得る、という点でもおすすめできる。
単に解像力が高いだけでなく、生み出される画は柔らかく上質で、写真表現としてのこだわりを持って作られたレンズだと感じた。
モデル:ひらく