ベンロ「C2180T」

~フラットに折り畳めるカーボン三脚

 ワイドトレードが扱う中国ベンロ(BENRO)から「フラット三脚シリーズ」が登場した。独自という本体形状を採用することで、折り畳んだときにフラットになるのが特徴。今回はハイエンドクラスのデジタル一眼レフカメラにも対応したカーボンタイプの「C2180T」(5万8,800円)を試した。

C2180T(装着カメラはペンタックスK-5)

 一般的な三脚は本体部分から放射状に脚が伸びるものだが、フラット三脚シリーズは1本の脚を前方に、残り2本の脚を後方に広げて使用する。変った展開の方法だが、真上から見るときちんと120度ずつの開きになっている。脚パイプ自体は一般の三脚と同様だ。

収納時に“フラット”になるのが特徴

 折り畳むと脚パイプを3本並べたような状態になるため、同クラスの一般的な三脚よりも収納しやすい。例えば旅行を想定すると、スーツケースに入れた際に収まりが良く、スペースを有効に使うことができる。ふつうの三脚はどうしてもパイプを束ねた三角形を作ってしまうのでこうはいかない。またリュックなどにくくりつける際にも、外側への突出が少ないといったメリットがある。

比較的小型のスーツケースに収めることができる。一般的な三脚と違って、ケース内で無駄なスペースを消費しないのがよい。このスーツケースの場合、雲台は取外す必要がある

 変った機構になっているだけに、立てたときの強度が不安という向きがあるかも知れない。だが、そこは心配無用だ。脚を全部伸ばして、本体部分をひねっても、一般的な同クラスの三脚と変らない剛性感を確認できた。一見変った形の本体部分だが、パイプをピンで繋ぐ仕組みは一般的な三脚の本体とほぼ同じ。一般的な三脚の本体部分を変形させたバリエーションと見ることができる。フラット三脚シリーズの本体部分はマグネシウム合金製。本体部分を裏側から見ると、肉厚の一体構造になっているのがわかる。

本体部分はマグネシウム合金製裏から見ると本体は厚みのある一体形成になっている

 脚をフラットに折り畳むことができる三脚といえば、先般レビューした同じく中国のシルイ(SIRUI)の「S-Nシリーズ」がある。

 比べてみると、S-NシリーズはC2180Tにはないエレベーター機構を備えていることに気がつく。またS-Nシリーズが開脚によるローアングル撮影に対応しているのに対して、C2180Tは開脚はできない。収納時はセンターポールがあるぶんS-Nシリーズがパイプ4本を並べた格好になるが、C2180Tはパイプが3本とより省スペースだ。

 それと、開脚の容易さにも差がある。S-Nシリーズは、センターポールを軸に3本の脚を回転してセッティングしなければならないのでやや面倒だ。一方のC2180Tは脚パイプを持って開くだけなので、一般の三脚同様にすぐに展開できるのがよい。

【動画】展開の様子

 

 以上のように比べてみたが、やはり気になるのはエレベータが無い点とローポジション撮影ができない点だろう。C2180Tは全高1.34m。雲台にカメラをセッティングした状態だとファインダーまでの高さは約1.5m強になり、アイレベルに近い高さになる。エレベーターは便利な反面、伸ばすとカメラブレが起きやすくなる、そういう意味では、雲台を三脚に直接装着するC2180Tの方式は理に適っているともいえる。

脚をすべて伸ばした状態ではほぼアイレベルに近くなる。モデルの身長は約175cm

 今回試用したC2180Tは最大パイプ径29mm、最小パイプ径18.5mmの4段タイプ。8層巻のカーボンパイプを使用しているとのことで、脚を押してもたわみは少なかった。耐荷重は12kg、重量は1.06kg。このフラット三脚シリーズは、エントリー向けのレンズ交換式カメラ用から中・大判カメラ用までラインナップしているので、用途に合わせて選びたい。また、重さは増えるがアルミタイプの用意もあり、カーボンタイプに比べると半額以下となっている。

脚ロックは空転防止機構付きのロックナット。ナット部分は防塵設計を謳っている
EOS 5D Mark IIと70-200mm F2.8クラスのレンズでも問題なく使用できた

 エレベーター機構を持たない三脚は少数派だが、こうした製品の登場もあり今後増えてくるジャンルなのかも知れない。今回試しておもしろかったのは、ペンタックス「K-5」の構図微調整機能だ。これは手ブレ補正機構「SR」を利用して撮像素子の位置を動かし、構図を微調整できる機能。思いのほか動作範囲が大きいのでエレベーターの代わりに使えるのだ。とはいえ、前の柵などでどうしても高さが足りないといった場合は仕方がないので、オプション用意されている2段式のセンターポールを活用したい。

オプションの2段式センターポールを使用するとアイレベル以上の高さが得られる

 ローポジションに関しては、センターポールを逆にセットするといったこともできないので、諦めるしかなさそうだ。開脚に対応したモデルの今後の登場に期待したい。

付属の自由雲台はテンションコントロールノブ付き。アルカスタイル互換のクイックシューを備える付属のシュープレートは六角レンチのほかコインでも回せる溝が付いた
しっかりした造りのケースが付属するオプションのセンタポール用収納スペースもある



(本誌:武石修)

2011/6/15 00:00