「HOLGA」(ホルガ)と言えば、LOMO(ロモ)と並んで世界中に愛好家がいるトイカメラの雄だ。そんなHOLGAの描写をデジタル一眼レフで楽しめる交換レンズがエーパワーから登場した。
HL-C(BC) | EOS 5D Mark IIに装着したところ |
実はこのレンズ、しばらく前から発売されていたのだが、6×6cm判のHOLGAレンズをそのまま使ったため35mmフルサイズ機やAPS-Cサイズ機では、HOLGA特有の“周辺光量落ち”が発生しなかった。一般に写真レンズの周辺光量落ちは嫌われるものだが、トイカメラは別。大胆な周辺落ちによる「トンネル効果」こそが、ユルイ描写とともに“写真の味”になっているためだ。
そこでこの度、「あまりHOLGAらしくない!」というユーザーの声に応える形で、周辺光量落ちを実現したタイプを新たに発売した。ラインナップは「HL-C(BC)」(キヤノン用)と「HL-N(BC)」(ニコン用)。価格はともに3,150円。
レンズも含めてプラスティック製なので軽く、レンズを付けているという感覚はないほどだ |
パンケーキレンズに近いサイズ感ともいえる |
従来製品と同じ光学系で、どうやって周辺光量落ちを実現したのか? 実は、「ブラック・コーナー・エフェクター」と呼ばれる穴の空いたディスクをレンズ後端に設置したのだ。これで、周囲の光が遮られる仕組みだ。
従来品も併売しており、外観はブラック・コーナー・エフェクターを除けば同一だ。ちなみに従来品の型番は“(BC)”が付かない「HL-C」(キヤノン用)と「HL-N」(ニコン用)。購入する際には注意したい。なお、ブラック・コーナー・エフェクターは525円で単体発売している。従来タイプのユーザーで周辺光量落ちを楽しみたい場合はこれを購入して取り付けることができる。
■周辺光量落ちがたっぷりと楽しめる
焦点距離は60mm。APS-Cサイズのセンサーでは90mm相当くらいで中望遠レンズになる。絞りはF8固定。ピントはマニュアルだ。今回は、35mmフルサイズセンサーのキヤノン「EOS 5D Mark II」で試用してみた。絞り優先モードでAE撮影ができた。
レンズ自体は大変チープな造りだが、これもまた味だろう。操作はピントを合わせるくらいだが、そもそも描写がユルイので、ファインダーで合わせるのはなかなか難しい。ライブビューなら比較的楽だが、そもそもこのレンズは目測で適当にピントを合わせて撮るのが作法なのだろう。ピントリングには4つのアイコンがあり、それぞれ近い方から0.7m、2m、6m、10mの距離を表している。
距離指標は4つのアイコンから成る |
それに、そもそもF8と暗い上にブラック・コーナー・エフェクターを付けるとそれよりさらに1段ほど暗くなる。実質F11にもなると、晴れた昼間でもファインダーは暗くて見にくい。フレーミングも厳密にせずに楽しむのが良さそうだ。当然感度は昼間でも相当にあげないと手持ち撮影は難しくなる。だが、今のデジタル一眼レフカメラはISO数千が実用的に使えるので問題ないと思う。
新製品と従来製品は表から見ても違いはない | HL-C(BC)のほうは、後部にブラック・コーナー・エフェクターを備えているのがわかる |
単体でも発売しているブラック・コーナー・エフェクター |
画質はコントラストが低くソフトフィルターを掛けたような描写だ。ブラック・コーナー・エフェクターの威力は凄まじく、かなりはっきりと光量が落ちる。APS-Cサイズのカメラだとちょうど良いくらいになるかも知れない。気になったのは、被写体が近距離の場合、ブラック・コーナー・エフェクターの形がうっすらと写ってしまうことだ。エーパワーからも告知されているが、35mmフルサイズ機で1mくらいの白い被写体だと目立ちやすいようだった。
なお、ホルガ用のコンバージョンレンズもそのまま使える。「HT-25」(テレコン)、「HW-05」(ワイコン)、「FEL-135」(魚眼)などをラインアップしており、HOLGAレンズに被せるだけでそのまま使える。マスターレンズがやや望遠なので、ワイコンや魚眼アダプターがおもしろかった。
今回試用したコンバージョンレンズ。左から「HT-25」(テレコン)、「HW-05」(ワイコン)、「FEL-135」(魚眼) |
HT-25(テレコン)を装着したところ | 同HW-05(ワイコン) |
同FEL-135(魚眼) |
HOLGAの描写を手軽にデジタルカメラで撮影できるのがおもしろい。ブラック・コーナー・エフェクターの効き具合は、銀塩のHOLGAカメラと全く同じというわけにはいかないようだが、それなりに近い描写が楽しめる。高性能なレンズに飽きた方は試してみると良いかも知れない。国内ではミラーレスカメラのシェアが高まっているので、マイクロフォーサーズやEマウント用の登場も待たれるところだ。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし補正なしの撮影画像をダウンロード後、長辺800ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置の画像は、非破壊で回転させています。
・HL-C
周辺光量が落ちない従来タイプ。周辺までほとんど均一な光量。ソフトな描写のレンズが欲しい向きにはこちらを選ぶ手もある
EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/30秒 / F8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm | EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm |
・HL-C(BC)
35mmフルサイズ機で使用したということもあるが、かなりはっきりした周辺光量落ちが発生した。
EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/320秒 / F8 / +1EV / ISO3200 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm | EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO3200 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm |
・HL-C(BC)+HT-25(テレコン)
EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/100秒 / F8 / +2EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm | EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/50秒 / F8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm |
・HL-C(BC)+HW-05(ワイコン)
EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/100秒 / F8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm | EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/200秒 / F8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm |
・HL-C(BC)+FEL-135(魚眼)
EOS 5D Mark II / 3,744×5,616 / 1/30秒 / F8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm | EOS 5D Mark II / 5,616×3,744 / 1/8秒 / F8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 60mm |
2011/5/30 00:00