ソニー「HVL-F20AM」

~バウンス対応の小型ストロボ

HVL-F20AM

 キヤノンの「270EX」に続いて、ソニーからもバウンス可能な小型クリップオンストロボ「HVL-F20AM」が登場した。本体の厚さは24mmと薄型設計で、ポケットにすっぽり収まる大きさだ。カメラに装着していても、非使用には前方に倒すことでコンパクトに持ち運べるなど独自の工夫を盛り込んでいる。αシリーズで使用でき、価格は1万3,650円だ。

 HVL-F20AMの特徴である「バウンス撮影」についておさらいしておこう。バウンス撮影は、ストロボを被写体に直接当てるのではなく、上方に向けて発光させ天井などで反射させた光で撮影するテクニックだ。直射に比べて光が柔らかくなるため、強い影やテカリなどが軽減されることから、人物撮影などではよく使われる手法だ。

 これまで、バウンス機能を搭載したクリップオンストロボはソニーであれば中、上位クラスの「HVL-F58AM」(6万3,000円)や「HVL-F42AM」(3万4,650円)に限られており、価格も比較的高価なことから気軽にバウンスが行なえる純正ストロボの登場が望まれていた。


 HVL-F20AMは、ガイドナンバー20(50mm、ISO100・m)と発光量そのものは上位機種に比べて多くないが、内蔵ストロボでは光量不足のシーンで威力を発揮する。また、35mm判換算で50mm以上の焦点距離で撮影する場合、テレポジションにすることでガイドナンバーが20になる。このとき、ISO100、F4であれば5m程度まで光が届く。なお、広角側は35mm判換算で27mm相当までカバーできる。

 対応するカメラはすべてのソニー製αシリーズ。一部のコニカミノルタおよびミノルタ製ボディでも使用可能だ。

 さてHVL-F20AMのバウンス機構だが、本体横のスライドスイッチを移動させると発光部が内部で回転して上を向く仕組みだ。バウンスの角度は上方75度で固定となる。中間位置では固定できないが、光量の多くないストロボとあって、バウンス時は被写体に近い距離で使用するため問題ないと思う。

側面のスライドスイッチでバウンスに設定できるバウンス発光にしたところ。発光部が上方に向く

 このストロボのユニークな点が、使用しないときに前に倒して収納できることだ。この動作がストロボの電源と連動しているため、本体を引き起こすとすぐに使用できるのが使いやすい。使い終わったら倒せば電源が切れるため、電池を無駄に消耗してしまうことも防げる。なお、ストロボの電源が入っていても、カメラの電源をOFFにすればストロボの電源も自動で切れる(α100以外のソニー製デジタル一眼レフカメラ)。

ストロボを倒すと自動的に電源が切れる仕組みストロボの表示は、2つのLEDのみとシンプル。緑が電源ランプ。オレンジがチャージ完了ランプ
発光部横の回転レバーを回すことでテレポジションにできる電源は単4電池×2本
電池込みで120gと軽量だ収納ポーチが付属する

 HVL-F20AMは純正ストロボなので当然TTL式のADI調光およびP-TTL調光に対応している。また、「α100」以外のソニー製デジタル一眼レフカメラでは、色温度情報からホワイトバランスを自動補正する。シューの形式はソニーの独自形式だ。電源は単4電池×2本で、アルカリ乾電池とニッケル水素充電池が使用可能となっている。

【作例】HVL-F20AMの直射時(左)とバウンス時(右)。バウンスした方が光が良く廻り、強い影が軽減されている(リンク先は長辺800ピクセルにリサイズしています。使用カメラ:α900)
【作例】HVL-F20AMの直射時(左)とバウンス時(右)。直射時には後の壁に強い影ができているが、バウンスでは消えており好ましい。バウンスの方が肌のテカリも少なく自然だ(リンク先は長辺800ピクセルにリサイズしています。使用カメラ:α900)

ワイヤレスコントロール機能

 本機の活用方法として、内蔵ストロボ非搭載デジタル一眼レフカメラでワイヤレス発光のためのコントローラーにする方法がある。今のところ、内蔵ストロボを持たない「α900」での使い方となる。

 この方式で使用する場合、ワイヤレス発光できるストロボ(オフカメラストロボ)は、HVL-F58AM/F42AM/F56AM/F36AMだ。なお、HVL-F20AM自体はオフカメラストロボとしては使用できない。

今回オフカメラストロボに使用したHVL-F58AMワイヤレス発光させるには、カメラのストロボモードを[ワイヤレス]にしておく
【作例】カメラと離れた位置からストロボを発光させることで、おもしろい陰影の写真が撮れる。コントローラーに使用したHVL-F20AMの発光はほとんど影響していないようだ(リンク先は長辺800ピクセルにリサイズしています。使用カメラ:α900)
上の作例を撮影したセッティング。HVL-F58AMを被写体となるカメラのほぼ真横から発光させている

 使い方はさほど難しくはない。カメラのストロボモードを[ワイヤレス]に設定し、オフカメラストロボを[ワイヤレスリモートモード]にしてチャンネルを設定すればよい。

・α900に装着したところ(使用状態)

・α900に装着したところ(収納状態)

 HVL-F20AMをトリガーにすることで、オフカメラストロボが複数台あれば多灯発光も可能だ。α900とHVL-F58AMなどをお持ちの向きは、HVL-F20AMを追加して試してみるのもいいだろう。いつもと違った写真が撮れること受け合いだ。

 HVL-F20AMは、バッテリー込みの重量が実測120gと軽量だ。大きさも、62×24×94.5mmと薄型のコンパクトデジタルカメラ並。内蔵ストロボの有無に関わらず、カメラと一緒に持ち歩いていれば思わぬところで活躍するかもしれない。また、ネットオークションの出品用ブツ撮りに使えば好印象になるだろう。α900の内蔵ストロボ代わりにもお勧めしたい。

【訂正】記事初出時、HVL-F20AMについて、「ガイドナンバー14(50mm、ISO100・m)」と記載しておりましたが、正しくは「ガイドナンバー20(50mm、ISO100・m)」となります。




(本誌:武石修)

2009/10/14 00:00