旅とカメラ、旅とレンズ
富士フイルム「X half」で思い起こす、ハーフサイズカメラの自由度と創造性
2025年6月30日 07:00
撮影業務のため、初夏に北海道へ出張に行ってきました。主な目的地は北海道の美瑛・小樽です。
出張の合間に撮影を楽しんだのが、富士フイルムの新しいデジタルカメラ「X half」。フィルム時代のハーフサイズカメラ(ざっくり言えば、35mm判フィルムの1コマを2分割して撮れるカメラ)をモチーフにしています。
「X half」が持つ気楽さと柔軟性の高さに助けられ、結果として非常に楽しく旅の記録を進めることができました。その様子をお届けします。
本機の概要やサイズ感、使い方などは、こちらの動画でご確認ください。
フィルムシミュレーションも良いけれど……
「X half」に初めて触れたのは出張の直前で、実際のところ、カメラの操作がほとんど分からないまま北海道へ持ち込みました。しかし、このカメラはフィルム時代のハーフサイズカメラをモチーフにしているため、難しいことは考えず、気軽にシャッターを切ってスナップを楽しむことができました 。
富士フイルムのデジタルカメラといえば、かつてのフィルムや確立された写真表現をデジタルで再現した「フィルムシミュレーション」が特徴です 。筆者は普段から富士フイルムのXシリーズを愛用しているため、初めは慣れ親しんだ「フィルムシミュレーション」を切り替えながら撮影を楽しんでいました 。
例えば、フィルムシミュレーションを、同社の名モノクロフィルムをイメージした「ACROS」にして撮ってみます。
また、コントラストが柔らかく、優しい描写のリバーサルフィルムをイメージした「ASTIA/ソフト」などを試していました。
しかし、撮影しながらカメラを触っているうちに、富士フイルムが「フィルム由来の撮影フィルター」と位置づける、「アドバンストフィルター」の存在にすぐに気づきました 。
「トイカメラ」「ミニチュア」「ポップカラー」など、19種類ものフィルターが用意されていますが、要はこれらのなかから撮影するときの気分に合わせて選べば良いのだなと。フィルター選択もタッチパネルで簡単にできることもあって、「ああ!そうか!X halfはフィルターで遊ぶカメラなんだな!」と気づいたものです。
「トイカメラ」、「ミニチュア」、「ポップカラー」など19種類ものフィルターが用意されており、要は撮影時の気分に合わせてこれらから選ぶかたちに落ち着きました。タッチパネルで簡単に選択できることもあり、「なるほど、これはフィルターで遊ぶカメラなのだな」と腑に落ちました 。
「アドバンストフィルター」が面白い!
というわけで、試しにアドバンストフィルターの「ダイナミックトーン」で撮影した小樽運河がこちらの写真です。有名な運河沿いの建物群に、歴史の重みを感じさせるような重厚感を加えられたように思います 。
運河沿いの倉庫群を記念に撮影していた際、ふと「フレーム切り替えレバー」を使えば2コマの写真を1組に収められる機能を思い出し、早速試してみました。
これは、ハーフサイズカメラで撮影した2コマを1枚の印画紙にプリントした往年の手法を再現した機能のようですが、旅の思い出を表現する方法としても、なかなか楽しめるものでした 。
小樽にある「手宮線跡地」での1枚です。廃線跡が遊歩道として整備され、周辺の環境も相まって趣のある場所です。ここではアドバンストフィルターの「ライトリーク」を使って撮影してみました。
いわゆる光線漏れを再現したもので、カメラのモルト(遮光材)が劣化したり、フィルムを巻き上げる前に裏蓋を開けてしまったりした際の失敗をイメージしたものです。フィルムカメラでは多くの人が経験したことであり、個人的にも懐かしさを引き立ててくれるように感じました 。
同じく「手宮線跡地」で、ポートレート風の記念写真を撮らせてもらいました。小樽では晴天に恵まれたものの、少しコントラストが強すぎたため、アドバンストフィルターの「ソフトフォーカス」を使用しています 。
ハーフサイズカメラをイメージした「X half」は縦位置が基本のため、こうしたポートレート写真はむしろ撮りやすく感じます。スマートフォンでの撮影に慣れている方も、同様に感じられるのではないでしょうか。
趣のあるランプシェードを撮影してみました 。アドバンストフィルターは「期限切れフィルム(緑)」を選択。
フィルムメーカーである富士フイルムが、あえて期限切れフィルムを模したフィルターを用意するとは、と少し驚きましたが、これもフィルムを知り尽くした同社ならではの遊び心なのでしょう 。懐かしさを演出するという意味では、これもまた一興です。
スナップ中に見かけた花の様子が印象的だったので撮ってみました 。アドバンストフィルターの「ポップカラー」を試したところ、思いがけずサイバーな色調に(笑)。
ところで、お気づきの方も多いと思いますが、掲載した画像にはすべてフィルムカメラのような「日付」が入っています 。筆者はこの日付表示に懐かしさを感じたのであえて表示させましたが、もちろん設定で非表示にすることも可能です 。
場所は変わり、こちらは美瑛町の駅周辺で撮影した写真です。美瑛駅周辺は再開発(?)で新しい街並みに生まれ変わっていますが……よく探すと、フォトジェニックでノスタルジックな光景も随所に残っており、嬉しい発見がありました。
ここはアドバンストフィルターを使わず、個人的に好みのフィルムシミュレーション「ノスタルジックネガ」を選び、さらに温かみのある色合いを強調するため、ホワイトバランスを8500Kに設定して撮影しました 。
まとめ
スペックや操作方法をほとんど知らないまま北海道に持ち出した「X half」でしたが、意外にも操作性は直感的で「こんな雰囲気で撮りたい」という想いに応えてくれました。旅の間、楽しく過ごすことができたのは「X half」のおかげでもあります。
「X half」は往年のハーフサイズカメラを基に開発されていますが、当時の規格に厳密に準拠しているわけではありません 。しかし、フィルムメーカーならではの解釈が良い意味で随所に盛り込まれており、本物のハーフサイズカメラよりも気軽かつ本格的な体験ができます 。
高騰と品薄が続くフィルムを使わずに、雰囲気のある写真を気軽に楽しめるのが「X half」です 。価値観は人それぞれですが、実際に使ってみて、今の時代において非常に価値のある1台だと感じました 。