バンガード「Auctus Plus」

ユニークなエレベーター操作のハイエンド三脚

 今回紹介する「Auctus Plus」は、バンガードブランドの三脚のうち、最上位のプロ向けシリーズ。バンガードの三脚で最も豪華な装備を誇る。

 試用したのは、カーボンパイプ3段タイプの「323CT」。伸高1,450mm、脚径32mm、縮長710mm、重量3.55kgという堂々の大型三脚だ。脚とエレベーターを最大に伸ばすと、高さは1,800mmにもなる。これに雲台が加わるので、かなり大柄な人でもアイレベルでの撮影は楽勝だ。

Auctus Plus 323CTと雲台SBH-300の使用例

 直販サイト「バンガードワールド」での販売価格は6万3,800円。雲台は付属しないので、今回は自由雲台の「SBH-300」(直販価格1万2,800円)を組み合わせてみた。

 外観はバンガード三脚製品で共通のイメージ。オレンジのアクセントを取り入れた特徴的な見た目は、「Alta Pro」や「Nivelo」といった売れ筋の製品と同じテイスト。ただしハイエンドモデルだけに、全体的な造りは当然それらをしのぐ。例えばカーボン三脚なのに、脚を伸ばすと内部で空気の抵抗を感じるほどの高い工作精度。屋外で脚の隙間に砂や土が入りにくいのはうれしい。ナットロックの操作性も良く、マグネシウム合金の本体も肉厚でがっちりした印象。大型三脚らしい頼もしさが各所に現れていて好感を持った。

脚とエレベーターを最大まで伸ばした状態脚を伸ばしきったところ
脚を最も縮めた状態

 では、他の三脚ではあまり見られない特徴的な装備を見て行こう。

 まず目立つのが、脚の先に取り付けられたスノーシューだ。スノーシューは雪の中で撮影する際、脚先が雪にもぐりこまないようにするためのアイテム。一般的には別売だが、Auctus Plusでは標準装備となっている。取り外すことも可能で、その場合はゴム素材の石突になり、さらにそのゴム脚を外すとスパイクになる。スパイクになる回転式の石突は、絞め方が緩いと、移動中にいつのまにかスパイクになってひやりとすることがあるが、本製品にはそうした心配もない。もっとも、外したゴム脚をなくさないようにするのに気を使いそうだが。

 脚先が沈みがちな砂地など、スノーシューは雪中以外でも役に立つ。またスノーシュー自体がラバー素材なので、設置面を傷を付けたくないときにも利用できそうだ。なおスノーシューと石突との装着部はしっかりしており、正しく取り付ければ簡単には外れない。

スノーシューを標準装備。脚を畳むときは内側に折り畳めるスノーシューを外すとゴム脚の石突が現れる
さらにゴム脚を外すとスパイクに

 もうひとつ目をひくのがギア式のエレベーター。一般的な中小型三脚ではあまり見られない装備の代表格で、細かい上下操作が必要となるシーンで役立つ。

 面白いのは、ギア式エレベーターの操作を2種類から選べる点だ。微調整したい場合は円形のダイヤルを使い、素早く上下動させたい場合は、引き出し式のクランクレバーを利用する。たいていの三脚はクランクレバーだけであり、ダイヤルで操作するタイプは珍しい。さらにセンターコラムには、フリクションコントロールを搭載。固めにしておけば、重い機材がいきなり下がる事故を防げる。フリクションコントロールとダイヤル操作に組み合わせで、微妙な上下操作に対応できる点こそ、この製品の強みの一つだ。

ギア式エレベーターの操作はダイヤルで可能。フリクションコントロールと合わせることで、カメラの高さを微調整できる素早く上下動させたいときは、クランクレバーを引き出す。一般的なギア式エレベーターと同様の操作になる

 カメラネジは1/4インチ、または3/8インチから選択可能。カメラ台からネジを取り出し、反転させるとネジ径が変わる仕組みだが、これだけなら他の製品でも良く見かける。Auctus Plusがユニークなのは、工具無しでネジの取り出しと締め付けができる点だろう。ネジ径が異なる雲台を頻繁に使い回すケースはほとんどないと思うが、面白い試みといえる。

カメラネジを1/4インチにしたところこちらは3/8インチ
周囲のディスクを回すとカメラネジを取り出せる特別な工具なしでカメラネジを変換できる

 そのほか、3本の脚のすべてにラバーフォームグリップを装備。開脚機構、水準器、ウェイトフックなども搭載してるなど、ハイエンドモデルだけに装備に不満はない。あえて挙げれば重量だが、ギア式エレベーターを備えた大型三脚だと考えると仕方がない。

開脚は3段階。写真は最も低くした状態縮長は710mm。重量3.35kgなので、徒歩で気軽に持ち歩くタイプの製品ではなさそうだ

 もう少し小柄な製品が必要なら、カーボンパイプ3段で全高1,360mmの「283CT」(7万9,800円)も選べる。また、カーボンではなくアルミパイプ仕様の「324AT」、「323AT」、「284AT」、「283AT」もラインナップ。屋内での使用がメインなら、価格の安いアルミパイプ仕様も良い選択だろう。各製品の主な仕様と直販価格は次の通りだ。詳しくはメーカーサイトを確認していただきたい。


型番脚パイプ素材縮長伸高最伸高脚径段数耐荷重重量直販価格
323CTカーボン710mm1,450mm1,800mm32mm318kg3.55kg63,800円
283CT680mm1,360mm1,700mm28mm14kg3.08kg55,800円
324ATアルミ635mm1,470mm1,700mm32mm418kg3.88kg44,800円
323AT710mm1,450mm1,800mm32mm318kg3.92kg40,800円
284AT625mm1,445mm1,600mm28mm414kg3.34kg40,800円
283AT680mm1,360mm1,700mm28mm314kg3.32kg36,800円

 ちなみに、一緒に使ってみた雲台のSBH-300もゴージャスで気に入った。クイックシュー式の自由雲台で、ボールの大きさと滑らかな操作感が印象的。スペアシューは縦長で、望遠レンズの三脚座でも使いやすい。

SBH-300。Auctus Plus 323CTにふさわしい大型の自由雲台だ
フリクションコントロール専用のノブを装備スペアシューも巨大。三脚座との相性は良い

 大型三脚は、中小型三脚にない高さと耐荷重が魅力。また重い機材の上下操作は、ギア式エレベーターに勝るものはない。加えてこの製品なら、ダイヤルによる微調整も行なえる。大口径望遠レンズなど重量級の機材を扱う撮影を行なうなら、検討に値するだろう。



本誌:折本幸治

2011/8/5 12:12