デジカメアイテム丼

撮影の優秀なコンパニオン、双眼鏡のための便利アイテムを紹介

think ergo「ビノキュラー 超速スライドストラップ」

写真を撮るということは、何らかの被写体に対する興味であり、そこには被写体に関しての理解や観察が必要だ。

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筆者は様々な被写体の写真を撮り、作品を作る。時に星空であったり、海であったり、人物であったり、料理であったりと長い活動の中でその被写体は様々だ。多くの場合、その被写体を理解する基本は観察である。その中で、双眼鏡は筆者にとって手放すことのできない大切な道具だ。

人物や料理の撮影で双眼鏡を使うことはないだろう。

しかし、被写体が風景であったり、星空であったりした場合、その有用性は多くの人が知るところであるし、見ることそのものが楽しみともなる。それは、すなわちバードウォッチングやスターウォッチングであるが、それらの趣味と捉える必要もなく写真を撮る対象をしっかりと見ることで、野山に写真を撮りに行った時間がより深く充実するのだ。

だから、筆者は周りの写真好きには必ず双眼鏡を買うことをお勧めしている。大きなものは不要だ。レンズの直径が30~40mm、倍率は8倍以下が筆者のおすすめだ。ただし、ディスカウントショップで見かけるようなものではなく、カメラメーカーが作っている造りの良い双眼鏡を手に入れて欲しい。

カメラと双眼鏡を併用するときの問題

さて、双眼鏡に対して、そんな特別な思いのある筆者ではあるがフィールドに双眼鏡を持ち出すにあたり、ある1つの問題を抱えている。写真を撮りに行くのだから当然、カメラと双眼鏡を持って行く。それら2つを首から下げてみる。すると途端に首がしまったり、花を撮ろうとしゃがんだ折に、首に残った双眼鏡がぶらついて邪魔になったりと、ネックストラップが手を添えずに何か物体を運ぶことに、とても向いていないことに気づく。

そんな折に出会ったのがthink ergoの双眼鏡ストラップおよびハーネスだ。1本のストラップに2つのバックルで双眼鏡を吊るす「ビノキュラー 超速スライドストラップ(シングル)」と、2本のハーネスに2つのバックルで双眼鏡を吊るす「ビノキュラー 超速スライドストラップ(ダブル)」の2種類だ。

どちらもストラップから双眼鏡までの距離が短く、体から離れないのでブラブラと邪魔になることがない。これで、撮影時にイライラすることもないし、何より疲れない。山歩きするにもオススメだ。

2つのラインナップ

ビノキュラー 超速スライドストラップ(シングル)

ストラップを斜めがけにし、そこに2つのバックルで双眼鏡を吊るす。バックルの位置はストラップ上にあるストッパーで決めることができるので、ぶらつかずすぐに使える位置にできて便利だ。これを斜めがけした上に普通のネックストラップでカメラを提げても絡まず気にならない。

ビノキュラー 超速スライドストラップ(ダブル)

両脇前を通る2本のハーネスに双眼鏡を吊るす。同じく吊るし位置はストッパーで決めることができる。長時間の双眼鏡使用に向いている。じっくり撮影するならこれ。

2つの使い分けはまず双眼鏡の大きさだ。レンズの大きさが30mm程度で小ぶりな双眼鏡ならシングルタイプ、それより大ぶりな双眼鏡ならダブルタイプを選ぶといい。

また、撮影スタイルによる使い分けもありだ。場所を変えながら散策するように写真を撮るならシングルタイプ、1カ所にじっと腰を据えて撮影するならダブルタイプがいい。

シングルタイプの使い方

ストラップは斜めがけにして、双眼鏡はバックル2つで吊るす。

ストラップにストッパーが付いているので、上方で動きが少なくなるようにすれば、ぶらつかず、すぐに楽に使える。

ストラップのパッドは十分な厚みを持っており、双眼鏡を1日下げていても全く疲れない。シングルタイプは500g以下の小ぶりな双眼鏡がオススメだ。

ダブルタイプの使い方

500gを超える、もしくは大ぶりな双眼鏡はダブルタイプがおすすめだ。重さは両肩に分散され、密着度も高まるので重い双眼鏡でも疲れない。

吊り位置の調整が大事だ。ダブルタイプにも胸の前にストッパーがあり、吊り位置を調整できる。双眼鏡の大きさによって、最適な位置は変わる。胸の前で動きやすく、かつ双眼鏡がぶらつかない位置を探そう。

チェスト位置はゴム入りとなっており、伸縮する。位置調整を短めにしても、双眼鏡を覗くのに差し支えない。前に伸ばしてから目の前に持っていけばいいのだ。

便利だとわかっている道具も使いにくかったり、使うことに手間がかかるものは自然と使わなくなってしまう。ましてや私たちの目的は写真撮影であって、観察ではない。だから双眼鏡が便利で有用なものであることを知っていても、いつしか遠ざかってしまう。

しかし、観察することが良い写真に結びつくこともまた真実だ。そのジレンマを解決するのがたった1本のストラップであることをこの製品を使うとすぐに実感するだろう。使いやすさがその製品の本質とは少し違ったところにあることも、あるものなのだ。

あえて言おう。間違ってるけど便利な使い方

シングルタイプであっても、バックル2つを使って双眼鏡を吊るすのが正しい使い方である。しかし、あえて間違った使い方をしてみた。バックル1個ずつで双眼鏡を2台吊るしてみた。

※メーカー推奨の使い方ではありません。自己責任でお試しください。

双眼鏡は倍率と口径の関係で細かく使用用途が分かれている。マニアックな話ではあるが、スペックを変えた双眼鏡を複数台持っていくこともあるのだ。

今度は2つのバックルを利用して、双眼鏡とカメラを吊るしてみた。これは最も便利だった。野山を散策しながらの風景スナップならこの使い方。しかし、これもメーカー推奨ではないので、くれぐれも自己責任でお願いしたい。

双眼鏡は時間を楽しむ道具

双眼鏡をカメラバックに入れて欲しい。カメラと一緒に持って出かけて欲しい。美しい天の川を視野いっぱいに楽しもう、いつもと違う鳥を探そう。ちょっと離れた花をじっくり観察しよう、遠い水平線をぼんやりとながめよう。

ただただシャッターを押していた慌ただしい時間が、ゆったりと外界に接する芳醇な時間へと変わることを実感できるはずだ。被写体をよく見るということは同じ時間をより豊かに過ごす方法なのである。

写真を撮ることに夢中になっていると、実は周りの風景を見ていない、ということも多い。双眼鏡で観察するという行為は、その習慣をリセットし、自分が時間を割いてまで行った撮影場所で過ごす時間を、1つ違ったものにしてくれるのだ。

制作協力:テクテク株式会社

茂手木秀行

茂手木秀行(もてぎひでゆき):1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、マガジンハウス入社。24年間フォトグラファーとして雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」を経て2010年フリーランス。2017年1月14日より新宿、コニカミノルタプラザにて個展「星天航路」を開催。