デジカメアイテム丼

均一な光が特徴の「Savage LED撮影ボックス」

2組のLEDと銀反射面が被写体に光を回す 組立式で調光も可能

2000年代半ば、デジタルカメラの流行とともに、いわゆる「撮影ボックス」が数多くアクセサリーメーカーから発売された。

手軽に静物撮影が楽しめるアイテムとして様々な形態の製品が登場したが、現在でも巨大通販サイトを見ると数多くの撮影ボックスが売られており、製品の1カテゴリーとして人気を博していることがわかる。

そのような状況の中、株式会社テイクが扱うサベージ(Savage)ブランドから、撮影ボックスがリリースされた。サベージは撮影用バック紙などでプロの世界ではよく知られた存在だが、それゆえに一般ユーザー向けの撮影ボックスについては、おおいに気になるところだ。早速、その全容を見てみることにしよう。

主だった部品としては骨組みとなるポール、LEDパネル、反射材など。

サベージ製撮影ボックスの特徴は、専用LEDパネルを2本用いていることだ。これまでにもLEDを光源とするものは存在したが、多くは既製のLEDライトとスタンドを組み上げたもので、しかも撮影ボックスの外側から照射するため、ボックス内部で光を回すのが難しいことが多かった。

本製品では60個のLEDを搭載したLEDパネルをボックス内上部に2本配置している。このおかげで均一で明るい光がトップから得られ、被写体に対し光が十分回り込むようになっている。これは撮影ボックス内部に、前面部も含めて反射材を使用している効果によるものだ。「柔らかい光で被写体を包み込む」。そう例えてよい光質である。

LEDパネル用の調光器。2つあるLEDパネルそれぞれを調光できる。

反射材の内面側の様子。

反射材は組み上がった骨組みを包むようにして装着する。ジッパーで閉じれば撮影ボックスの組み立ては完了。

ちなみに、前面部と上部には面ファスナーによる開閉式の窓があり、撮影の際はその窓からレンズを差し込むようにして撮影する。そのため、ステンレス製の調理ボウルのように、カメラや撮影者などが表面に映り込みやすい被写体の撮影にも適しているだろう。

上部にある覗き窓から見た内部の様子。撮影できる被写体の大きさは横幅、高さとも40cmほどが限界といってよいだろう。

LEDの色温度は公称値で約5,500K。ホワイトバランスの調整は不要と考えてよいだろう。また、厳密に計測したわけではないが、演色性も高いので撮影した画像はいわゆる“撮って出し”でも問題なく使えそうである。

2つのLEDライトはそれぞれ個別に調光することも可能で、片方のみ点灯させ陰影を付けるなど、被写体に当たる光をカスマイズすることもできる。もちろん、白熱電球のような火傷するほどの高温になることはなく(多少の熱は持つ)、安全に扱うことが可能だ。

LEDパネルの光量は強く、高感度域まで上げなくても比較的速いシャッターが切れるのも利点だ。ちょっと感度を上げれば手持ちでも無理なく撮影が楽しめる。とはいえ、三脚を使った方が感度を上げなくても絞り込めるし、じっくり被写体と対峙できるので、より良い結果が得られるのは間違いない。もちろん定常光なので、影の現れ方などを確認しながらアングルを決めることも容易だ。

気になるのは組み立ての手間だが、慣れてしまえば5分ほどで済ませられる。ポールとジョイントを使い正方形に組み立て、そこにLEDパネルを装着。

反射材をかぶせた後、背景色を内部に置けば完了だ。一度組み立てを経験すれば、2回目からは誰でも説明書なしで組み立てられるはずだ。

なお、気をつけなければならないのは、意外にも細かな部品があることだ。LEDパネルの取り付けネジなどは小さいので、保管する際は紛失しないよう注意が必要だろう。

また、反射材は収納のときに変な位置で折り曲げてしまうと跡がつきやすく、それが内部の反射に影響を及ぼすことがあるので、折りたたむ際は気を付けたほうが良い。

背景色は黒、白、緑、ベビーブルーの4色を用意しているが、緑とベビーブルーは色かぶりをするため、そのことを理解した上で使いたい。素材はプラステイック。

撮影ボックスは外形寸法が59.69cm角の「PC23 LEDシューティングライトボックス」と、39.37cm角の「PC15 LEDシューティングライトボックス」の二つを用意している。今回レビューしたのは前者であるが、縦、横、奥行きとも30cm程度のものなら、難なく撮影できるように感じられた。

収納バッグが付属しているのもこの撮影ボックスの良いところだ。スタジオ関係者にはおなじみの、ヒョウの絵柄の入ったマークが描かれており、ほかの撮影ボックスのものとは一味異なる趣きだ。

希望小売価格は、PC23が4万3,200円、PC15が3万2,400円(いずれも税込)とやや値は張るが、得られる結果を考えると値ごろ感はあると述べていい。ネットオークションへの出品物やフュギュア、模型・ジオラマなど様々な用途に活用できるだろう。手軽に簡単に、しかも精度の高い物撮影を望むなら検討してみてほしいアイテムである。

作例

白の背景色で撮影。個人的には陰影を敢えて付けたくなるほど、光がよく回っていることがわかる。

ホワイトバランスはオート。このカットではちょっと青かぶりしている。画像は他の作例も含めJPEGの撮って出しだが、若干コントラストを上げるとさらに良好な結果になりそうだ。

画面右側のLEDパネルを消灯して撮影。特別なセットアップはしていないが、手軽な物撮影と考えると文句ないレベルといえる。

画面左側のLEDパネルを消灯している。LEDパネルと被写体の間にはディフューザーを配置しているが、レンズに映った光源を見ると、その芯が見えてしまうのは致し方ないところ。もう1枚ディフューザーを付けるとよさそうだ。

トイドローンの全長は約40cm。これくらいが撮影できるサイズの限界だろう。ベビーブルーの背景色だが、色かぶりは少ない。

ビンは難しい被写体のひとつだが、これだけ撮れていれば文句をはないだろう。右下のケラれは覗き窓の縁によるもの。

光が柔らかいので、このような撮影も得意だ。LEDパネルは色の偏りのようなものはなく、演色性も実用的と思えるレベルである。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。