デジカメアイテム丼

きめ細やかな機能の数々 センターポールを引き出せるスタイリッシュな三脚

VANGUARD Alta Pro 2+ 263AP

株式会社ガードフォースジャパンが5月に発売した三脚の新製品「Alta Pro 2+」は、VANGUARD製三脚の上位グレード「Alta Pro」の後継モデルだ。

センターポールを引き出して横倒しにできる機構を備え、洒落たデザインでありながら、設置面の形状にとらわれず自在に設置できる利便性も併せ持つ。雲台の有無や段数(4段)、カーボン素材などのバリエーションがあり、目的に応じて選択できる。今回はその中の一つ、3段アルミ三脚の「Alta Pro 2+ 263AP」をフィールドに持ち出したので、使用感をご報告しょう。

不整地をものともしない堅牢性

Alta Pro 2+ 263APは伸長757mm、伸高1,450mm、最伸高は1752mm。耐荷重は5.0kgで質量は2.5kgほど。六角形のセンターポールは本機のスタイルを特徴付けており、洗練されたスタイリッシュなデザインが目を引く。

全天候型TPUグリップが2脚に装備されていて、雨天はもちろん厳寒期での持ち運びでも手がかじかむことなく持ち運びができるだろう。各脚の開脚角度は20度、40度、60度、80度で固定できるため、設置面に応じてきめ細かく高さを調整できる。ゴツゴツとした岩や石の多い渓流といった起伏のある撮影地で三脚を設置する際に重宝する。

ところで、安定性の高い設置をするためには、三脚がきちんと水平になっていることが重要だ。本機には三脚本体と雲台にそれぞれ水準器が搭載されているので、三脚の設置状態も容易に把握できるなど、メーカーの心配りがうれしい。

各部可動部分
閉じた状態
六角形のセンターポールが特徴的だ

独自形状のゴム足と、ローアングル対応の三脚機構

脚のロックはナット式

回転式ロック機構の場合、フリーにするとどこまでも回転できてしまう場合がある。その点、Alta Pro 2+ 263APは、およそ1/5回転程度でロック、フリーと切り替えられるため、スピーディに三脚の伸縮を行なえる。

よそではあまり見ない形状のゴム足

あらゆる設置面に対応するユニークな形状のゴム足。今回は渓流へ持ち出して岩の上や砂利道、渓流の中などで撮影を行なっているが、横滑りをすることなく設置面への食い付きも良好だ。

風景撮影では橋の上から俯瞰撮影するようなシーンも多い。しかし一般的な三脚だとうまく設置できないことが多い。仮にできても無理矢理な設置となるため、安定性に欠けてしまう。本機ではセンターポールを引き出して横方向に倒すこともできるので、真上から俯瞰したいシーンにおいても無理なく設置でき、安定性を高められる。もちろんローアングル撮影も可能で、足元の小さな被写体のマクロ撮影でも威力を発揮してくれる。

センターポールを引き出して……
横に倒すと俯瞰に対応
ローポジションにもできる

クイックシューはアルカスイス互換。太めのグリップを採用する2ハンドルタイプで、1つのハンドルは左右方向の傾きを、もう1つのハンドルは前後の傾きと左右へのパンニングを調整できる。また、チルトレバー脇にあるノブを回転させて切り替えればパンニング方向のみフリーにすることも可能で、鉄道などの流し撮りにも利用できるだろう。

雲台部分

太めのグリップは握りやすく、締め付けや緩める際に力を入れやすい。また、ハンドルは2段階に伸長できるので、使用の際には伸ばし、運搬する際には縮められる。フレキシブルアームなどを取り付けられる3/8インチカメラねじ差し込み口がある。アクセサリーなどを使用する際に便利だ。

まとめ:必要にして十分な強度 ロックの操作性も良し

本機は、ハイアングルからローアングルまで地形を問わず自由自在に設置できる三脚だ。また、伸長178cmの筆者がふつうに立った状態で脚を最長に伸ばすと、雲台の位置が程よい高さとなる。

道路面などの平地なら素早く三脚を設置できる。また、ロックの締め付けや開脚角度の調整など、カチリカチリと決まるのも心地よい。ただ、設置の自由度が高いがゆえに、ロックするためのノブやレバーが多い。三脚設置後にすべてのロックが確実に締まっているかしっかり確認したほうが良いだろう。

また、フルサイズ一眼レフカメラに大口径標準ズームや広角ズームの組み合わせなら、必要にして十分な強度がある。三脚を設置する地形を問わず容易に三脚を設置できることは大きなメリット。素早く撮影体制に入れるため、シャッターチャンスにも強いといえるだろう。

一方、重めの望遠系レンズを装着した場合は若干心もとないかもしれない。フルサイズの多画素モデルで望遠系のレンズを使用するシーンのみならず、中判デジタルカメラクラスの使用を考えると、もう一回り大きくても良いと思う。

また、雲台のクイックシューリリースレバーの位置が、水準器を手前にしたときに右側となる。カメラの底面の近くとなるため回転しにくいため、位置や角度の改善を望みたい。

さらに、デフォルトで装着されているクイックシューの形状が長方形となっていた。そのため、ローアングル撮影でセンターポールを横倒しにするシーンなどカメラの取付け角度を変える際にいちいちクイックシューの向きを変える必要があった。カメラを雲台に装着する向きを問わない、正方形のクイックシューを希望したいところだ。

Alta Pro 2+ギャラリー

水の中に立ち込んで撮影したカット。緩やかな流れとはいえ、華奢な三脚ではぶれてしまいかねないシーンだが、Alta Pro 2+ 263APは2.5kgほどの重量があるのでこのくらいではびくともしない。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/30mm/絞り優先AE(F11、1.5秒、±0EV)/ISO 100/WB:太陽光

岩の間に三脚を設置するとき、自由に開脚できるか否かで設置の難易度が大きく変わる。各脚がそれぞれ0〜80°まで、きめ細かく開脚できるので、安定感を高めたまま容易に三脚を設置できた。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR/116mm/絞り優先AE(F16、1/1.6秒、-0.7EV)/ISO 100/WB:太陽光

急斜度の斜面での撮影だ。地面は樹の根や石によって凹凸があったものの、Alta Pro 2+ 263APの独自の形状をもつゴム足がしっかりと大地を掴み、横滑りすることなく撮影することができた。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR/16mm/絞り優先AE(F11、1/2.5秒、+0.7EV)/ISO 100/WB:太陽光

橋の上からの撮影だ。橋の上からの俯瞰撮影は魅力的な被写体も多いが、三脚の設置に苦労することも多々ある。その点、可倒センターポールを利用すると容易に三脚を設置することが可能だ。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR/102mm/絞り優先AE(F11、1/13秒、±0EV)/ISO 100/WB:太陽光

萩原俊哉

(はぎはらとしや)1964年山梨県甲府市生まれ。浅間山北麓の広大な風景に魅せられ、2008年に本格的に嬬恋村に移住。カメラグランプリ選考委員 ニコンカレッジ講師 日本風景写真家協会(JSPA)会員
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