OM-D E-M1 Mark IIで写す「0.0555555556秒の奇跡」

鳥たちが繋いでくれる出会い…野鳥写真家・菅原貴徳さんインタビュー

群青の海を背に、長い尾を踊らせるアカオネッタイチョウ。静音連写Lによる18コマ/秒のAF/AE追従連写を活用して、躍動する一瞬の姿を捉えた。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当)/ 絞り優先AE(F4.5、1/2,500秒、±0EV) / ISO 250 / WB:晴天

様々な撮影ジャンルの若手写真家を紹介するこの連載。今回は、野鳥専門誌などでご活躍の菅原貴徳さんが登場します。自分の思う鳥の姿を写真に残すため、世界中を飛び回っている写真家です。

優秀な動体補足性能を誇ることで有名なOM-D E-M1 Mark IIですが、野鳥という動く被写体を撮る菅原さんにとって、OM-D E-M1 Mark IIはどのようなカメラなのでしょうか。(編集部)

菅原貴徳
すがわら たかのり:平成2年、東京都生まれ。東京海洋大学、ノルウェー北極圏への留学、名古屋大学大学院を経て、フリーの写真家に。図鑑や専門誌などに写真やエッセイを寄稿している。

※タイトルの「0.0555555556秒」とは、E-M1 Mark IIの特徴の一つである秒18コマのコマ間速度。E-M1 Mark IIの性能を現すキーワードの一つとして選びました。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II

現在、どのような写真のお仕事をされていますか。

野鳥専門誌やカメラ誌への寄稿、野鳥図鑑や広告へ写真提供をしています。特に、撮影紀行や機材レビューなど、文章を伴うものが多いです。

鳥たちは季節の変化にとても敏感なので、なるべく多くの時間をフィールドでの撮影に費やしたいと思っています。そのため、執筆は旅先やフィールドでの鳥待ちの合間に、ということがよくあります。

朝の岬に降り立つコアホウドリ。朝日でほのかに赤く染まった空を取り入れるべく、バリアングルモニターの利点を生かしてローアングルでの撮影を試みた。自由な視点移動で野鳥の生息環境を伝えられる。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 150mm(300mm相当) / 絞り優先AE(F2.8、1/50秒、+0.3EV) / ISO 400 / WB:晴天

写真の仕事をされるようになったきっかけは?

仕事としての写真を始めた時期は明確ではないのですが、大学在学中の2013年に、専門誌で作品が掲載されたのが最初です。

2012年からは1年間、交換留学生としてノルウェーの北極圏に暮らし、海洋生物学を学ぶ機会がありました。せっかく北極圏の自然を見つめる機会を得たので、帰国後に出版社に持ち込むことを目標に撮影に取り組んでみようと考えました。それをきっかけとして徐々にお仕事をいただくようになり、この4月よりフリーランスで本格的な写真家活動を開始したところです。

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

幼稚園に通っていた頃、親から与えられ、夢中になった昆虫図鑑の著者が海野和男氏でした。それ以来、自然・生き物への興味を持ち続けた結果として今があるので、最も影響を受けた方のひとりと言えるのではないかと思います。

また、野鳥専門誌「BIRDER」は中学生の頃から毎月欠かさず購読していて、戸塚学氏、中野耕志氏、中村利和氏をはじめとする写真家の方々の作品を眺めては、自分に取り込める部分はないかと探っていました。

じゃれあうシロアジサシの夫婦を、木陰からそっと撮影した。こんなときは静音シャッター機能の出番。電子シャッターにより音を鳴らすことなく撮影できるので、安らぎの表情をそのまま捉えることができた。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(840mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/20秒、±0EV) / ISO 500 / WB:オート

その影響は自分の作品のどんなところに現れていると思いますか?

BIRDERを読み始めた頃は、ちょうどフィルムからデジタルへの移行期で、掲載作品はフィルムで撮影されたものがほとんどでした。今よりも機材の制限が多い中、工夫や時間を重ねて撮影された写真は、やはり1枚1枚にこめられた思いの大きさが違うと感じます。デジタル時代にあっても、その便利さに頼りすぎず、1回1回のシャッターの質を高めたいと思いながら撮影に取り組むように心がけています。

被写体としての鳥の魅力について。

それぞれが持つ形や色彩の多様さに惹かれます。また、鳥たちは世界各地、人里離れた山奥から街中まで暮らしていますから、鳥たちを探すうち、思いがけず美しい風景に出会ったり、人との交流があったりということがよく起こります。鳥たちが繋いでくれる出会いも、僕にとっては重要な要素です。

空気の薄い亜高山帯の森を歩き回って、さえずりの主であるアカハワイミツスイを探す。フィールドを駆けながらの撮影では、軽量・コンパクトな機材を選択することで、体力的負担が大いに軽減される。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(840mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/125秒、+1.7EV) / ISO 250 / WB:晴天

作品において、特に重視していることは何でしょう。

作品を撮らせてもらうにあたって、野鳥の生活を脅かさないことを最低限の礼儀と考えています。そのためには、まず鳥たちの生態や気持ちを知ることがなにより大切。そのような気遣いが、鳥の表情や、作品全体に安心感として現れてくると思っています。

ご自分の撮影・目指す作品性と、E-M1 Mark IIとの相性について。

非常にいいですね。秒18コマの連写に目が奪われがちですが、静音でシャッターを切れるのも、このカメラの魅力。音に敏感な鳥たちも気づかないほどの静かさで、警戒心を与えずに済むのはありがたいです。

また、PROレンズとの組み合わせでは、フィールドワークにおける制限を取っ払ってくれる感覚があります。優れた防塵防滴性で突然の雨も怖くありませんし、システム一式を持ってもコンパクト・軽量なので長時間に及ぶ探索でも疲労感が軽減されています。手ぶれ補正のおかげで三脚が不要なのもいいですね。とても信頼感のあるシステムです。

夕日が染めた空に浮かぶコアホウドリのシルエット。タイムラグが最短0.005秒に短縮された高精細EVFで被写体を捉え続けられる。明暗差の大きい難しい条件だったが、低輝度時のAF性能も申し分ない。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / 絞り優先AE(F4、1/3,200秒、±0EV) / ISO 250 / WB:晴天

E-M1 Mark IIの連写性能やEVFには満足していますか?

満足しています。AF・AEが正確なので、素早く動き回る鳥もストレスなく撮影できますし、画面の他の要素に気を配る余裕を与えてくれます。EVFの表示も鮮やかで、ファインダーの中で舞う鳥の姿に見とれることもしばしばです。

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

鳥だけでなく、鳥たちが暮らす環境を写し込んだ作品を撮り続けていきたいです。これまでに24の国を訪れてきましたが、まだまだ新しい国を訪れてみたいと思いますし、季節を変えてまた訪れたい場所もあります。もちろん、国内での撮影も続けていきます!

森の中で出会ったハワイヒタキ。足元はふかふかの土、1/25秒の低速シャッターという悪条件だが、強力な手ぶれ補正のおかげでこの通り。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(840mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/25秒、+1.3EV) / ISO 250 / WB:晴天

写真展の開催や写真集の発売など、告知があればどうぞ。

4月20日に写真を担当した書籍「鳴き声から調べる野鳥図鑑-おぼえておきたい85種」(文一総合出版)が出ました。「図鑑」と銘打っていますが、風景を大きく取り入れた作品を載せるなど、自分の色を出した本になっていますので、ご興味のある方はぜひお手に取ってみてください!

頭上を横切るアカオネッタイチョウも、取り回しのいい機材のおかげで楽々追うことができる。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / 絞り優先AE(F4.0、1/4,000秒、±0EV) / ISO 250 / WB:晴天

発売中のデジタルカメラマガジン2017年5月号に、菅原さんが執筆したE-M1 Mark IIの撮影テクニックが掲載されています。こちらもあわせてどうぞ。

デジカメ Watch編集部