デジカメドレスアップ主義:乱視OKのファインダーカスタマイズ

EOS 5D Mark II + Hektor 125mm F2.5
Reported by澤村徹

  • ボディ:キヤノンEOS 5D Mark II
  • レンズ:ライツ ヘクトール125mm F2.5
  • 中間リング:ライツOUBIO
  • マウントアダプター:近代インターナショナルVISO-EOS
  • 視度補正アイピース:オプトオオノ アジャスティグマ
  • マグニファイア:KPS 2MC
  • アイカップ:ニコンDK-19
  • アイピース:ニコンF5アイピース
※この記事を読んで行なった行為によって生じた損害はデジカメWatch編集部、澤村徹および、メーカー、購入店もその責を負いません。また、デジカメWatch編集部および澤村徹は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 眼鏡使用者にとって、裸眼でファインダーをのぞくのは憧れの撮影スタイルだ。メガネをかけているとファインダーの四隅がケラレて、構図の確認が難しい。そればかりか、乱視があるとファインダー像がブレて見え、ストレスがたまる一方だ。近視に関してはファインダーの視度補正で対処できるが、乱視の補正はできない。こうしたファインダーとメガネにまつわる諸問題は、長らく対処法がなかったわけだが、ついに即効性のあるアイテムが登場した。それがオプトオオノのアジャスティグマである。

 アジャスティグマは、乱視対応の視度補正アイピースだ。これはありそうでなかったアイディア商品である。乱視は特定方向のものがブレて見える現象で、ブレる方向は人によって様々だ。そのため汎用的な視度補正レンズでは適切な補正が難しい。仮に撮影者に合った乱視用レンズをファインダーに組み込んだところで、縦位置と横位置で乱視の軸が変わってしまうので、撮影に支障をきたす。アジャスティグマはこうした諸問題を解決した乱視対応の視度補正アイピースである。

 本製品は二層構造になっていて、乱視用レンズが90度刻みで回転する。縦位置と横位置で乱視用レンズの方向を変えることができ、常に適切な乱視補正が可能だ。この回転構造は90度ごとにクリック感があり、スピーディーに向きを変更できる。さながらカメラのための乱視用メガネといったところだ。

 購入方法については同社ホームページに詳しく記載されているが、基本的にオーダーメイドの製品となる。メガネの処方箋もしくはメガネ作成データをオプトオオノに送ると、適合した度数のレンズとアイピース本体が届く。乱視の軸方向に合わせてカメラに組み込むのだが、ユーザー自身でセットアップする方法と、オプトオオノや販売店でセットアップしてもらう方法がある。この組み込み作業を実際に見せてもらったところ、精密ドライバーを用いる非常に細かい作業だった。自力セットアップはかなり難易度が高いので、オプトオオノか販売店でセットアップしてもらった方が確実だろう。

アジャスティグマは標準仕様で5万円、オーダー仕様で6万5,000円だ。ブラスト仕上げで高級感がある接眼部の指標を90度回転すると、乱視軸が縦位置撮影に最適化される。これが本製品の真骨頂だ
パッケージには組み込みで使用する工具が付属している。ただし、自力セットアップはかなりの難作業だフィルムシート状の乱視軸確認表が付属する。窓などに貼り付け、効き目や乱視軸の確認に使用する

 さて、アジャスティグマはニコン用に設計されており、ニコン製一眼レフに直接装着できる。ニコン以外のカメラにはそのままでは装着できないが、ひと工夫することで取り付け可能だ。ここではキヤノンのデジタル一眼レフを例に、アジャスティグマを取り付け方法を解説しよう。

 まず、KPSのマグニファイアを用意し、これをEOSに取り付けよう。このマグニファイアは接眼レンズがスクリュー式になっており、緩めるとベースから接眼レンズだけが取り外せる。実はこのスクリュー口径がニコンのアイピースと同サイズになっており、アジャスティグマがねじ込めるのだ。また、アジャスティグマの接眼部分にもニコンと同サイズのねじ切りがあり、ここにニコン製のアイカップが装着できる。ファインダーをのぞいたときに外光の影響が少なく、撮影に集中しやすいファインダー環境の完成だ。

アジャスティグマはニコン機の丸窓向けに設計されている。写真はニコンF3に装着したところだ(画像提供:オプトオオノ)EOS 5D Mark IIにKPSの2MCを装着し、接眼部分を取り外したところ
KPS 2MCのベースに、アジャスティグマをねじ込む。スクリュー口径が同じなので、支障なく取り付けられるアジャスティグマにニコン純正アイカップを装着してみた。これも口径が同じなので、無加工で装着できる

 肝心のアジャスティグマの使用感はどうだろう。筆者の効き目は右目で、軽度の乱視がある。軽度とはいえファインダー像が微妙にブレるため、普段は裸眼で一眼レフのファインダーをのぞくことはない。今回はビゾフレックスの中望遠レンズを取り付け、裸眼で撮影してみた。

 まず驚いたのが、ファインダーがきわめてクリアに見える点だ。四隅まで見えるのは当然として、ファインダー下段のパラメーターが精細に読み取れる。撮影時もピントの山を的確につかむことができ、合焦の歩留まりが向上した。

 これまで光学ファインダーで撮影する際は、F4〜F5.6あたりまで絞ることが多かった。メガネのレンズをここ数年作り直していないこともあり、合焦しているように見えてもアテにならない。被写界深度を深めにとり、保険をかけた撮影が身についている。アジャスティグマ経由では、ファインダー像が先鋭に見えるため、積極的に開放近辺で撮ることができた。

 その一方で、運用面でちょっとした問題点がある。アジャスティグマは裸眼でファインダーをのぞくため、メガネを外さなくてはならない。しかしながら、被写体を探すときはメガネが必須となるため、通常はメガネをかけ、カメラを構えるときにメガネを外す必要が生じる。慣れの部分もあると思うが、普段使いのメガネをどうするかという問題は避けて通れないだろう。

 現在はライブビューで拡大表示ができ、誰もがシビアなピント合わせを克服できるようになった。そうはいっても、クリアな光学ファインダーで撮影する快感は、ライブビューの利便性に引けを取らない。乱視で光学ファインダーを諦めていた人たちにとって、アジャスティグマは希望の光といえるだろう。

ビゾフレックス用レンズなら、EOS 5Dシリーズで往年のライカテイストをフルサイズで楽しめる中間リングのOUBIOは、レンズと別売りになっていることが多い。購入時にはリングの有無を確認しよう
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
EOS 5D Mark II / Hektor 125mm F2.5 / 5,616×3,744 / 1/2,500秒 / F2.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 125mmEOS 5D Mark II / Hektor 125mm F2.5 / 5,616×3,744 / 1/2,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 125mm
EOS 5D Mark II / Hektor 125mm F2.5 / 5,616×3,744 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 125mmEOS 5D Mark II / Hektor 125mm F2.5 / 5,616×3,744 / 1/400秒 / F5.6 / -0.67EV / ISO100 / WB:オート / 125mm
EOS 5D Mark II / Hektor 125mm F2.5 / 5,616×3,744 / 1/1,600秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 125mmEOS 5D Mark II / Hektor 125mm F2.5 / 5,616×3,744 / 1/1250秒 / F2.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 125mm


(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2012/5/18 00:00