デジカメドレスアップ主義:装着不能レンズに光明が射す

リコー GXR MOUNT A12 + Jupiter-12 35mm F2.8
Reported by澤村徹

  • ボディ:リコー GXR MOUNT A12
  • レンズ:ジュピター12 35mm F2.8
  • マウントアダプター:フォクトレンダー LMリング(ヘリアー50mm F2付属品)
  • ファインダー:ツァイスイコン 440
  • ストラップ:ユリシーズ クラシコピッコロ
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 リコーのGXR MOUNT A12が好調だ。デジタルカメラ初のオールドレンズ向けボディ(カメラユニット)だけあって、多くのオールドレンズファンに好意的に受け入れられている。ライカMレンズが直接装着できるうえに、マイクロレンズレイアウトをチューニングしているため、広角オールドレンズで撮影しても色かぶりが少ない。また、周辺画質の補正機能を搭載しており、ユーザー自ら色かぶりや周辺光量落ちを調整することが可能だ。オールドレンズファンにとっては、まさにドリームボディといえるだろう。

 このようにGXR MOUNT A12はオールドレンズにとって理想的なボディだが、実はもうひとつ大きなアドバンテージがある。後玉がせり出したレンズや対称型構成のレンズなど、これまでデジタルで再利用が難しかったオールドレンズにGXR MOUNT A12は対応しているのだ。スーパーアンギュロン、ルサール、ジュピター12といったレンズたちは、後玉が大きくせり出しているため、既存のレンズ交換式デジタルカメラでは内部干渉の恐れがあった。また、機種によっては装着こそできるものの、後玉が測光部を隠してしまい、露出測定が不正確になるというケースも見受けられる。GXR MOUNT A12は後発の利をいかしてマウントの内部構造に工夫をこらし、有名ながらデジタル撮影が難しかったレンズに対応しているのだ。

 今回はロシア製のジュピター12 35mm F2.8を装着してみた。後玉が大きくせり出し、ボディを選ぶ代表格のようなレンズだ。このレンズはライカL互換マウントを採用しているので、LMリングを装着した上でGXR MOUNT A12付属のチェッカーを付けてみた。後玉がチェッカーの枠内に収まり、装着可能レンズであることがわかる。オールドレンズファンであれば、「あのレンズが使えるのか」と感慨深いはずだ。

ジュピターの35mmで撮れる。これだけで感無量、という人も少なくないはずだ35mm判換算52.5mm相当なので、ターレットファインダーは50mmにセットしている
前面に絞りリングがある。前玉はマクロレンズのように奥まった場所に収まっている後玉が極端にせり出しているが、チェッカーで調べると、れっきとした装着可能レンズだ

 ドレスアップ面はツァイスイコンのターレットファインダーを取り付けてみた。ガトリング砲を彷彿とさせるインパクトのある顔つきだが、外付けファインダーとしては大柄で、扱いの難しいアイテムのひとつだ。GXR MOUNT A12はミラーレス機としてはいくぶん大きめなので、ターレットファインダーを付けても違和感がない。GXRの無骨なたたずまいとも好相性だ。

 ストラップはユリシーズのクラシコピッコロを選んでみた。GXRはストラップの取り付け部が狭いため、装着可能なストラップが限られてくる。特にフルレザータイプのストラップは、GXR対応をうたった製品を選んだ方が確実だ。ユリシーズのクラシコピッコロは先端が細く、さらに装着補助用のテグスを使ってGXRに取り付ける。GXRに装着できるフルレザーストラップとして、実に貴重な選択肢だ。また、本製品は金属パーツを使っていないので、カメラ本体やレンズを傷つける心配が少ない。実用性にこだわったフルレザーストラップである。

ツァイスイコン440は、25/35/50/85/135mmがひとつにまとまっている背面のダイヤルでパララックス補正が可能だ。中古価格は2万円前後が目安となる
ユリシーズのクラシコピッコロはGXR向けの製品だ。価格は5,985円カラバリは全5色で、それぞれベジタブルタンニンなめしのイタリアンレザーを使っている
ストラップ先端に極小の穴が空いており、ここに付属のテグスを通してGXRに取り付ける

 ジュピター12 35mm F2.8はロシア製で、戦前のビオゴン35mm F2.8をデッドコピーしたレンズといわれている。ゾナーコピーならぬビオゴンコピーというわけだ。マテリアルや加工精度こそ異なるものの、特に手を加えずにコピーしているため、安価で写りのよいレンズとして定評がある。開放からシャープで発色がよく、ボケ味も滑らかで破綻がない。凄みのような描写は感じられないものの、1万円前後で入手できることもあり、そのコストパフォーマンスは抜群だ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
GXR MOUNT A12 / Jupiter-12 35mm F2.8 / 4,288×2,848 / 1/1,700秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mmGXR MOUNT A12 / Jupiter-12 35mm F2.8 / 4,288×2,848 / 1/1,700秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm
GXR MOUNT A12 / Jupiter-12 35mm F2.8 / 4,288×2,848 / 1/4,000秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mmGXR MOUNT A12 / Jupiter-12 35mm F2.8 / 4,288×2,848 / 1/3,500秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm
GXR MOUNT A12 / Jupiter-12 35mm F2.8 / 4,288×2,848 / 1/310秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mmGXR MOUNT A12 / Jupiter-12 35mm F2.8 / 4,288×2,848 / 1/4,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm

 GXR MOUNT A12はオールドレンズが似合う無骨なボディだが、ドレスアップに関してはかなりハードルの高い機種だ。まず、向かって右側にシャッターを内蔵しているため、ボディがいくぶんせり出している。この独特のボディ形状が災いしてか、GXR MOUNT A12に対応したサードパーティ製レザーケースはごくわずかだ。また、ストラップの取り付け部が狭いので、手持ちのストラップが必ずしも装着できるとは限らない。このように何かと制約の多いボディだが、オールドレンズ専用機として息の長いモデルになるはずだ。ロングセラーを見越して、カメラアクセサリーメーカーが対応製品をリリースしてくれるとありがたい。



(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2011/11/22 00:00