“もっと撮りたくなる 写真の便利帳”より
「リズム」をモチーフに撮る
整然としたリズム、点と線で作るリズム、アクセントで際立つリズム
(2015/5/7 07:00)
風景の中にある 音楽に注目する
私の中では、写真と音楽は融合していて、引き離せません。写真を見ると音楽が聞こえてくるし、音楽を聴くと映像が見えます。
また私は、ひとりで写真を撮るときはいつも音楽を聴きます。そのときに聴きたい曲というのは、自分の体が欲している曲なのです。そして、聴いている曲によって撮れる写真も変わるので、その結果、「自分の体が欲している写真」が撮れるのではないかと思うのです。
そんな風に音楽から刺激を受けて写真を撮っていると、景色の中にリズムを感じることがあります。それは単に、耳から音が聞こえるという意味ではありません。
風景の中にリズムが「見えてくる」のです。目の前の風景にリズムが見えてきたら、これを写真として表現することを考えてみましょう。
リズムを意識して写真を見る
目の前の風景からリズムを見つけるのが難しいときは、まず、他の人の写真を見て、その中のリズムを感じてみよう。
写真の中のリズムが見えるようになれば、景色の中のリズムも、きっと見えてくるはずだ。写真展に出かければ、たくさんのリズムに出会えるだろう。
人はそれぞれ、ある一定のリズムを持っているらしい。みんなが同じリズムではないので、自分が心地よいリズムを見つけ出してみるのもいいだろう。
目のつけどころ:点と線を見つけてリズムを作る
リズムを見つけるには、被写体を点や線として見つめてみます。被写体をかたちとして捉えるのです。それらの連続した並びは、リズムを感じさせます。
そのため、同じオブジェクトが並ぶ場所や、線が多くある場所では、リズムを見つけやすくなります。
オブジェクトの並びを探す
リズムとは、連続するオブジェクトの並びが感じさせる音楽的なイメージだ。そのため上でも、「同じオブジェクトが並ぶ場所はリズムを見つけやすい」と述べた。
では、どのような場所に、同じようなオブジェクトが並んでいるのだろうか?
例えば、自然の中であれば、木立の並びや葉っぱの並びを簡単に見つけることができるだろう。また、街中であれば、手すりやライト、建物などの人工物が、たくさん並んでいる様子に注目してみる。
またオブジェクトが規則正しく並んでいなくても、視点の持ち方で、リズムの大小として捉えることもできる。
このようにリズムという視点を持って周囲を見渡せば、たくさんのリズムに溢れていることに気づくはずだ。
デザイン:見えたリズムを言葉にしてみる
「リズムを見つけて表現する」ということが、どういうことなのか、まだわかりにくい方も多いかもしれません。
そこでひとつの提案です。風景の中にある点や線を、あえて、言葉にしてみましょう。
例えば、目の前に、小さな点状のオブジェクトが等間隔に並んでいる場合を思い浮かべてみてください。オブジェクトが並ぶ様子に、「トン、トン、トン、トン」という言葉をあてはめることができるでしょう。
同じような並びでも、最後にひとつだけ大きなオブジェクトがあれば、「トン、トン、トン、ドン!」になります。点の代わりにラインが並んでいれば、「トーン、トーン、トーン、トーン」という言葉になるでしょう。音楽で例えるなら、点は4分音符で、ラインは全音付です。
このように、あえて言葉に置き換えることで、リズムを強く意識することができるのです。
「タンタンタン」「ダダダダダッ」「ポツポツポツ」といった擬音語が、日本語にはたくさんあります。ぜひリズム写真に活用してみましょう。
リズムを見つけて写真にする場合、気をつけてほしいことが2点あります。
まず、特定のオブジェクトの存在が強すぎると、リズムが見えなくなってしまうので注意しましょう。オブジェクトが明るすぎたり大きすぎたりするような場合や、人間や看板のように意味性が強すぎる場合などが、これに相当します。リズム表現のポイントは、同じオブジェクトの連続する並びにあります。特定のオブジェクトが目立ちすぎないように気をつけましょう。
次に、物理的にオブジェクトをさえぎるものが写真に入ると、リズムが壊れてしまいます。肝心の音符が見えなくては、リズムを奏でることはできません。できるだけ邪魔なものは排除するようにしましょう。
これらのことに気をつけて写真をデザインすれば、きっと、心地よいリズムを奏でる写真になるはずです。
豆知識:リズムを共通項に組写真を作る
組写真は、何か共通項を決めて、複数の写真を組み合わせる表現。「家族」といったテーマを設ける方法もあるし、色を共通項にする方法もある。
その共通項のひとつにリズムがある。共通のリズムによってつながる写真は、おもしろい組写真だ。ただし、リズムを揃えすぎると、わざとらしいものになるので要注意だ。
豆知識:適度な強弱でリズムは際立つ
リズムは同じオブジェクトの連続、繰り返しで成り立つと述べた。しかし、ただ連続しているだけでは単調なだけで、リズムに「表情」が生まれない。表情のあるリズムには、適度な強弱がある。それにより、リズムに変化が生まれ、連続や繰り返しも認識されやすくなる。単調さとアクセントのバランスが重要なのだ。リズム写真でも、ぜひ強弱やアクセントを意識してみてほしい。
この連載は、MdN刊「もっと撮りたくなる 写真の便利帳」(谷口泉 著/ナイスク 編)から抜粋・再構成しています。
カメラの使い方は理解しても、写真そのものが上手くなったと実感できなかったり、よい写真とは何かわからなくなった方々に向け、写真を楽しむためのテーマとして「モチーフ」を集めた1冊です。撮影のヒントやアイデア、具体的な機材情報も盛り込まれています。