写真展レポート

岡嶋和幸写真展「房総ランド 江戸川篇」レポート

人工物が一切写っていない江戸川が舞台

(c)2023 Kazuyuki Okajima

当サイトの連載「あとで買う」の著者、岡嶋和幸氏の写真展「房総ランド 江戸川篇」を開催している。会場はJam Photo Gallery。期間は12月17日(日)まで。

第一弾の「房総ランド」では、千葉県の外房地区を舞台にした写真展を実施。南国植物の「ユッカラン」など、メキシコなどで生えていた植物が根付く房総地区で、日本のイメージとかけ離れた写真が撮れる外来種に関心を持ったという。

房総ランド 南国植物の「ユッカラン」

そんな中、昨今では、シカ科の特定外来生物「キョン」が大繁殖し、社会問題化。房総地区にあったレジャー施設「行川アイランド」から脱走したキョンが、その端緒ではないかといわれている。

東京や埼玉に近い柏市周辺でも目撃されているということから、千葉県全体が「房総ランド」化しているのではないかという点から今回の「房総ランド 江戸川篇」というタイトルがつけられた。

舞台となる江戸川で、作者は東京ディスニーランドがある旧江戸川河口から利根川と分流する関宿分基点までを徒歩で移動して撮影したという。

カメラはローライフレックス 2.8F。用紙にはイルフォードの「マルチグレード アート300」で大四切(11×14インチ)を使用している。用紙はハーネミューレとのコラボ製品。黄色みがかったベース紙にキラキラとした光沢感が楽しめる。仕上がりが作品とマッチしており、好んで使用しているという。ただ、使い方が難しい用紙のひとつでもあるそうだ。

作品はすべてキョンがいそうな雰囲気を狙った。人工物を写さないというのもこだわりのひとつで、写真を見ただけでは何処で撮影したか分からない。空き缶や川の泡なども写らないようにと徹底している。

今回の撮影でキョンを見つけることはできなかったそうだが、鳴き声が聞こえてきそうな雰囲気を感じられたという。「キョンが現れるのも時間の問題では」と語る。

江戸川流域といえば堤防や高層ビルを背景に想像しがちだが、岡嶋氏の世界には我々が想像するような華やかなシーンはなく、何処となく海外のような雰囲気すら感じられる。そんな江戸川の姿を見に行ってみてはいかがだろうか。

会場

Jam Photo Gallery
東京都目黒区目黒2-8-7 鈴木ビル2階 B号室

開催期間

2023年12月5日(火)~12月17日(日)

開催時間

12時00分~19時00分(日曜日は17時00分まで)

作者プロフィール

岡嶋和幸
1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。世界を旅して詩情豊かな作品を発表するほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「ディングル」「風と土」のほか著書多数。

本誌:佐藤拓