イベントレポート

中西敏貴さんに学ぶ「プリントを1,000倍楽しむ! with Canon PIXUS XK80 セミナー・体験会」

講師の中西敏貴さん。

11月19日、大阪・梅田駅近くのイベントスペースにて「プリントを1,000倍楽しむ! with Canon PIXUS XK80 セミナー・体験会」が開催された。

講師を務めるのは、北海道・美瑛町を拠点として活動しており、光を強く意識した印象的な風景写真で知られる中西敏貴さん。

参加者1人につき1台のPIXUS XK80が用意される

セミナーは、作品をつくっていくうえでのプリントの大切さ、また、色鮮やかでドラマチックな作品プリントに仕上げるための中西さんならではのノウハウなどが披露され、それを踏まえて実際にプリントを楽しんでもらう、という流れで進められた。

参加者それぞれに1台ずつプリンターが用意されるので、存分にプリントを楽しめるというのが本セミナーの醍醐味である。そうは言っても初めてプリントに挑戦する人の場合、何をどうすれば良いのか分からず、戸惑ってしまうのが普通。だからこそ、まずはじめにプロの写真家からプリントの心構えや方向性を説明してもらおうというわけだ。

当日会場に用意されたプリンターはキヤノンの「PIXUS XK80」。

PIXUS XK80はこの9月に発売されたばかりのA4プリントが可能なインクジェットプリンター。新開発の「プレミアム6色ハイブリッドインク」を搭載しており、高い写真画質をもちながら、L判写真1枚で約12.6円という大幅な低ランニングコストを実現しているのが特徴だ。PIXUSシリーズのプリンターだけに、プリント速度は速く、そして静かである。

また、PCと接続してプリントするだけでなく、スマートフォンとの連携機能が強化されているので、スマートフォン内の画像はもちろん、SNS上から直接かつ簡単にプリントしたりなどといったことも可能だ。当然、複合機なので写真や文書をスキャンでき、スキャンしたデータを直接クラウド上にアップロードすることもできる。

予備のインクやプリント用紙もたくさん準備されていた。

中西流撮影術を学ぶ

セミナー開始にあたり、中西さんから参加者の方々へ質問が投げかけられた。質問は「皆さんプリントはしたことがありますか?」と「JPEGだけでなくRAWでも撮影していますか?」の2つ。

「私はプリントこそが作品の最終形だと考えていますので、それを実現するために撮影の際は必ずRAWで記録するようにしています」と中西さん。今回のセミナーでは、作品づくりのための、撮影・RAW現像・プリントのワークフローが説明されるわけだが、上質なプリントのためにはRAW現像が必須であるし、RAW現像をするためには、撮影時にRAWで記録しておく必要があるということだ。

ちなみに中西さんは、作品制作を含めて毎日、何らかのかたちでプリントを実践しているという。「普段から頻繁にプリントを繰り返すことで、リアルな作品として自分の写真をチェックしています」。

そんな中西さんが撮影の時に、特に意識しているのが「光の明暗差」「主役と脇役」「光の向き」「色で撮る」「形で撮る」の5点だという。

「光の明暗差」というのは、文字通りにハイライトとシャドウの露出差のこと。主題となる被写体が明るい光に照らされ、シャドウの黒とそれに続くミッドトーンの中に浮き上がっている印象的な状態を思い描いてみてほしい。

「主役と脇役」というのは、主役となる主要被写体と、脇役となるそれ以外の構成要素を、上手く配置して構図を作りましょう、という話。風景写真家である中西さんの場合、主役を引き立たせるための場所選びや撮影時間の重要性、時には脇役の登場を待ちタイミングを見計らうこともあるといったポイントが説明された。

「光の向き」というのは、主に逆光であるか順光であるかということ。逆光であれば被写体の形をドラマチックに表現でき、順光であれば被写体の色を忠実に表現できる。中西さんは自らを「自分は80%の写真を逆光で撮る逆光写真家です」と称するが、それでも被写体によっては順光で撮る必要性があることが作例をもって丁寧に説明された。

「色で撮る」というのは、時として画面を構成する色の調子や並びを重視して写真を撮ることも作品の幅を広げる意味で大切になるという話。例えば、画面全体を青一色で表現するために、残照の静かな海をあえてWBオートでなくデイライトで撮影する、といった独自の撮影法が紹介された。

「形で撮る」というのは、画面内の被写体をどのように配置すれば最も効果的かを意識しながら撮るということ。例えば、逆光に浮かび上がるマルチ(おもに雑草防除のために畝を覆うビニールシート)を、波のように折り重なることで美しい造形となるような構図の作り方が説明された。

中西流RAW現像法を学ぶ

つづいて撮影したRAWデータを作品といえる段階にするためのRAW現像術が披露された。

ここで重要なのが、先の撮影時の注意点を含めて「プリントを前提とした撮影・RAW現像を心がける」ということである。撮影にしても、RAW現像にしても、それらは最終形となる“プリント”を意識したワークフローの一環でなければならないということである。

ちなみに、こうしたワークフローを実現するために、中西さんがキヤノンのデジタルカメラで設定しているピクチャースタイルは「ディテール重視」だそうだ。風景写真というと、それを連想させるピクチャースタイル「風景」を選択しがちであるが、中西さんが理想とするプリントのためには、あえてコントラストやシャープネスの高い「風景」を避け、線が細く階調性もリアルな「ディテール重視」が最適とのこと。

続けて具体的なRAW現像の話に。中西さんが実践しているRAW現像のワークフローは「1.Digital Photo Professional(DPP:キヤノン純正のRAW現像ソフト)」でRAW現像をし、「2.Adobe Photoshop」で微調整を行って、「3.最終形であるプリント」へともっていく、というもの。

以上のワークフローについて、実際にDPPを使った丁寧な実演が催されたのであるが、ここで、会場に「ほほーっ!」という雰囲気が沸き上がったのが、最初のRAW現像処理の段階では「100%まで仕上げない」ということであった。

RAW現像ソフトでの現像時はある程度(中西さんの場合は80%程度)に抑えて保存しておき、その後の仕上げは、画像処理ソフトのPhotoshopのプラグイン機能である「Camera RAWフィルター」に任せるのである。

写真プリントは、同じデータであってもプリント用紙の違いによってコントラストや発色などが大きく変わる。そこで20%程度の“余裕”を残しておくことで、仕上げの段階でプリント用紙ごとに合わせた微調整が可能となる。

もし、最初の現像時にPCモニター上で100%に仕上げてしまうと、プリント用紙ごとの特性で、意図した表現ができなかった場合、最初のRAW現像からやり直さなければならなくなってしまう。ところが中西さんの方法であれば、最終調整までにいつでも80%の仕上がり状態に戻れるというわけだ。

今回のプリントセミナーでは、すでにRAW現像やプリントを経験しているという参加者が多かったが、この独自の中西流ワークフローは全員が目から鱗を落としていたようすだった。

「中西さんの作品」をプリントしてみる

さて、ここからは実際にPIXUS XK80を使ってプリントを楽しむ時間である。「PIXUS XK80の『発色のよさ』『鮮やかな仕上がり』『使い勝手の良さ』をしっかり体験してください」と中西さん。

プリント体験では、まずこれまで解説されてきた、撮影・RAW現像の話をよりよく理解してもらう意味もあって、あらかじめ調整が完了している中西さんの画像データをプリントすることとなった。

初めてのプリント体験がプロ写真家のつくった画像データの出力であるのだから、参加者にとっては嬉しいサプライズとなったに違いない。ちなみに、プリントした中西さんの作品は持ち帰りOKである。

PIXUS XK80はPCに接続して普通にプリントすることもできるのであるが、SDカードをプリンター本体に挿してダイレクトプリントを行うこともできる。というわけで、参加者はさっそく中西さんの画像データがインストールされたSDカードをPIXUS XK80に挿入していった。

モニターで気に入った写真を選び、指示に従って設定するだけでプリントが始まる。タッチで簡単に操作できるので、取扱説明書など見なくても簡単にプリントが可能だ。

写真家・中西敏貴のファンが多く参加していただけに、その作品を自身の手でプリントできて感慨深そうだった。

自身の作品をプリントする

中西さんの作品でプリントワークフローを体感したら、いよいよ自身の画像データをプリントする番である。PIXUS XK80に自身の画像データが入ったSDカードを挿入する。

と、ここで中西さんからプリント用紙について解説が。プリント用紙はキヤノン純正の「光沢 プロ[プラチナグレード]」のほかにも「微粒面光沢 ラスター」を選ぶこともできることが説明された。

参加者は事前に用意されたインデックスプリントの中から思い思いの画像を選んでプリントを開始する。中西さんの作品をプリントした時と同じく、PIXUS XK80のモニターをタッチ操作することで簡単かつ直感的にプリントできる。ここまでくればもう手慣れたもの。

PIXUS XK80は画質が高いだけでなく、プリント速度がとても速い。参加者の方々もストレスなく簡単にプリントできる性能に喜び、さまざまなプリントを試していた。

全員総立ちになってプリントに臨むという白熱したシーンも。

会場が大阪ということもあったのだろうか。真剣ながらも笑顔が絶えないプリント体験会となった。講師の中西さんも実は大阪の出身。

まさに「プリントを1,000倍楽しむ!」である。

作品プリントの講評と額装

時間いっぱいまでA4サイズでのプリントを楽しんでもらったところで、今度は2Lサイズでのプリントを行い、その中から自分で3枚の写真を選んだところで、中西さんによる講評会が始まった。

「講評とはいっても、どのプリントが部屋に飾るのに向いているかを皆で選ぶ会です。基本はプリントを楽しむことなので安心してください」と中西さん。その言葉通り、内容はみんなで机を囲み、中西さんからアドバイスや感想をもらうという、和気あいあいとしたものだった。

講評を終えお気に入りの1枚を選んだ参加者には、フォトスタンドがプレゼントされた。

これは、「写真はプリントして作品となる」という中西さんの考えを体験してもらうために企画されたプレゼント。セミナーでプリントして選んだ大切な1枚をぜひ自宅に飾ってもらいたいという願いだ。

最後に伝えられた「写真はプリントしてこそ作品に昇華されるのだと思っています。プリントをすれば、撮影やRAW現像の方向性も自然と分かってくるはずです。ですから、PIXUS XK80のような楽しくて優れたプリンターを使って、遠慮なくプリントするところから初めてもらえれば嬉しいです」という中西さんの言葉で、今回のセミナーは幕となったのだった。

参加者の声

中路博文さん

中西さんの作品が大好きで、写真集『Design』も購入しました。その作品感動して、自分もこんな作品をプリントしてみたいと思い参加しました。今日聞いた中西さんのお話はとても勉強になりましたので、来てとてもよかったと思います。インクジェットプリンターはザラザラとしていた昔の印象をもっていましたけれど、PIXUS XK80はとても綺麗にプリントできたので驚きました。本当に優秀なプリンターだということが分かりましたし、これなら家でプリントしても大丈夫だと実感できました。

坂本麻美さん

写真部に入っていて、そこで写真展をするためにA3プリンターを買ったのですが、この時プリントの楽しさにハマり、もっといろいろ知りたいと思い、今日は複合機のセミナーだと知っていて参加しました。家にあるプリンターと比べて、PIXUS XK80は速くて静かで、それに綺麗だったのでちょっとショックです。娘にコピーを頼まれた時、家のプリンターではできなくて困ったこともあり、これは2台持ちになってもいいかと真剣に考えています。

花房英子さん

中西さんの綺麗な美瑛の写真が好きで、大阪で中西さんのセミナーがある時は、なるべく参加するようにしています。本当のことを言うと、今日はProシリーズのセミナーかなと思っていたのですけど、PIXUS XK80のプリントはすごく綺麗なのに、速くて静かにでてきたことに驚きました。家にも複合機はありますけれど、綺麗さも静かさもまったく違います。これでランニングコストも安いというのですから、仕事でよくプリントする写真や文章のプリントのためにもいいなと思いました。

堀内朱美さん

自宅にもプリンターがあるのですが、なかなか上手くプリントできず、原因が自分にあるのか、プリンターにあるのか分からずに悩んでいました。今日、中西さんのお話を聞いて正しい撮影の方法やRAW現像も分かりましたし、キヤノンのプリンターや用紙だと綺麗にプリントできるということも体験できましたので、スッキリしました。思い通りのプリントをするためには撮影から現像、プリンター性能まで、一貫していることが大切なのですね。

土肥克暉さん

普段からデジカメ Watchの記事を見ていて、そこで今日のセミナーがあることを知ったのと、CP+で中西さんの現像の話を聞いていたこともあって、これは是非参加したいと思っていました。いままではモニターの表示だけを頼りに画像調整をしていましたが、それだとどうしても何をどうすればいいのか分からなくなっていたところ、今日のセミナーで詳しくワークフローを聞けたのでよかったです。PIXUS XK80のようなプリンターを手に入れて、フォトコンテストなどにも挑戦してみたいと思います。

古田佑一さん

飛行機が好きで旭川空港へ撮影に行ってみたいと思っていました、旭川空港といえば美瑛が近く、美瑛といえば僕の中では中西さんですので、ぜひ本人にお会いしてお話を聞いてみたいと思い、参加しました。光で撮る、形で撮るといったお話は本当に素晴らしく、自分が何をどう撮るべきかが分かったような気がします。

わりとプリント経験はある方だと思うのですが、SDカードから直接でも思った通り綺麗にプリントしてくれるので楽しかったです。これはカメラの設定やRAW現像も頑張らなければと。あと、PIXUS XK80はコンパクトで場所をとらないのでいいですね。これなら自宅でどんどんプリントできそうです。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。