イベントレポート

エプサイト企画展「プリント解体新書」レポート

写真セレクトから額装、会場レイアウトまでのノウハウを伝える

東京・新宿のエプサイトにて、企画展示「プリント解体新書 写真力を高めるプリントの秘密」が6月22日(金)〜7月19日(木)まで行われる。開館時間は10時30分〜18時(日曜休館。最終日は14時まで)。入場無料。

プリントで作品を仕上げていくという視点から、写真家やエプサイトがこれまでに取り組んできた経験やノウハウを伝える趣旨。「写真はプリントで楽しみたい」「いつかは自分の写真展を開いてみたい」「フォトコンテストに挑戦してみたい」といったニーズに向ける。

エプサイトは、まだインクジェットプリントが写真として受け入れられるか半信半疑だったという1998年にオープン。写真ギャラリーとしてインクジェットプリントの作品をプロやアマチュアに見てもらい、その意見を製品に反映していこうと考えた。 ギャラリースペース以外にセミナールームやレンタルラボを設けているのも、インクジェットプリントをユーザーに体感してもらうことを目指してのことだったという。

現在までに行われた326回の展示を準備段階から見てきた経験とノウハウが、今回の「プリント解体新書」には盛り込まれている。本来であれば通常通り公募展や写真作品の企画展が行えるところ、エプサイト20周年記念の挑戦として企画したという。

展示の概要

写真家の岡嶋和幸さんが2012年エプサイトで行った展示を振り返り、写真のセレクト、用紙選びやレタッチなどの作品作りを通じて、写真が上手くなるノウハウを伝える。

インデックスプリントを切ってセレクトやレイアウトを行うのが岡嶋さんのやり方。フィルム時代にベタ焼きを切っていた延長線上で、パソコン作業より快適で迷いも少なく、何より楽しめるという。

会期中の7月14日14時からは、岡嶋和幸さんのワークショップ「プリントで挑戦!はじめてのフォトコンテストー応募作品をつくってみようー」が開催される。事前予約制で、記事末のリンクから定員10名で申し込みを受け付けている(受付は6月24日まで)。

須田誠さん。キューバを撮った作品を展示している。

また会場内では、作品を仕上げるまでの過程として、須田誠さんの作品が展示プリントに至るまでを紹介している。プリントワークにおいて、作家の意図をどう反映するかの面白さを伝える。

エプサイト担当者のアドバイスとして、レタッチで作品を仕上げる際は「まずはストレートなプリントにイメージを書き込んで形にする」ことが大事だと説明された。これを事前にやっておくだけで、いわゆる"やりすぎ"のレタッチを避けられるという。

ストレートプリントにイメージを書き込む。

ほかにも、レタッチではなく紙のセレクトで作品が変わる部分を伝えるべく、様々な紙の見本を用意していた。触った質感、彩度を出すには黒が締まる用紙を選ぶとよい……といった具合だ。

様々な紙の風合いや、白/黒の出方を見比べられる。

額装に関しては「どのように飾ればメッセージが伝わるかが重要」として、フレームマンの協力で額装のノウハウを伝える。

額には「明るい雰囲気の場所にはシャンパンゴールドの額が馴染む」、「景気がいいと白い額が人気」、「作品の周りにスリットを空けるのが最近の流行り」など、いろいろとトレンドがあるそうだ。

額とマットのサンプルを用意し、額装で変わる楽しさを体感できるようにした。マットは「間」を演出し、マットが大きいと格調高い……という印象を実感できる。
額縁を使う以外にも、さまざまな展示方法があるという例。

額装の次は、いよいよ展示。エプサイト20年で行われた様々な写真展のレイアウト過程を紹介している。会場のミニチュアを作ってイメージした例が展示されていたり、これまでに行われた展示の会場写真がファイリングされ、一覧できるようになっていた。同じ空間でもどれほど様々な展示ができるか、見ていて楽しい。

ミニチュアを作ってレイアウトを検討した展示もあった。
これまでの展示風景を一覧できるファイルも置かれている。

本誌:鈴木誠