イベントレポート

アイ・オー・データ機器主催の「スペシャル夜景撮影会」レポート

定番3カ所を巡る本気の撮影イベント 講評会もしっかり実施

株式会社アイ・オー・データ機器は4月15日、都市の夜景写真を撮影するツアー「スペシャル夜景撮影会」を実施した。

2017年4月15日(土)・16日(日)にベルサール秋葉原で開催していた「I-O DATAフェア 2017」の関連イベントとして実施したバスツアー。講師には"夜景写真家"として知られる川北茂貴さんを迎え、簡単な事前説明と、撮影地での個別指導が行なわれた。参加者は、事前抽選に当選した15名。今回は長時間露光の必要な夜景を撮影する主旨ということで、参加にあたっては三脚の持参が必須だった。

この日訪れた撮影スポットは、「富士見橋」、「有明ジャンクション」、「川崎千鳥町」の3カ所。参加者は写真撮影自体の初心者からベテランまで幅広く、中にはモータースポーツや星景写真を撮影しているという参加者もいた。

撮影会の講師をつとめた川北茂貴さん

夜景はRAWで撮ろう

撮影ツアーに先立ち、I-O DATAフェア会場にて、川北さんによる撮り方説明が行なわれた。一般的な都市夜景から工場撮影まで、具体的なカメラ設定や注意点に触れつつ解説している。

都市夜景の基本的な撮り方は、カメラを三脚に据えてF値を絞り、長時間露光を行なうスタイル。川北さんの場合は絞りをF8〜F11、5〜30秒程度のシャッタースピードで撮影することが多いという。

「夜景撮影時における長時間露光では、自動車や船などの灯りが光跡となって写真に写ります。この光跡を構図に入れると夜景らしさが出るので、積極的に取り入れてみましょう」

「ビルを撮りに行くタイミングはできれば休日よりも平日に撮るのがおすすめ。ビルの窓に灯る光が多く、写真に華が出るからです」

ツアー出発前、I-O DATAフェアの壇上で夜景写真の基礎について話した。
シーンごとの設定についても言及
基本とはひと味違うテクニックも紹介

「高層ビルの展望室など窓が開かない場所では、窓ガラスに自分や周囲の状況が映り込んでしまいます。これを防止するため、私の場合は黒い布の四隅に吸盤を付けたグッズを用意しています。こうした道具がない場合は、上着でレンズ周辺を覆ってみても、映り込みの防止に効果的です」

このとき留意すべきポイントは、必ずその場で画像のブレを確認することだという。

「ピントとブレばかりは後からどうすることもできないので、1枚撮影したら拡大表示をしてみて、必ず確認するようにしましょう。色味に関しては、RAWで撮っておけば後から画質の劣化なしに調整ができますので、基本的にはRAWで撮ることをおすすめします」

記憶色の再現でより印象的な夕景を残そう

最初に向かった豊洲の富士見橋では、夜景にはまだ早い時間帯ということもあって、夕景をメインに撮影した。西のビル群に沈む太陽が水面に投げかける光が強く映えて、とてもまぶしい。橋の下からは時々屋形船が通過する。川北さんによれば、富士見橋から見える景色は、夕景だけでなく夜景もきれいなおすすめスポットとのことだ。

富士見橋から夕景を撮るときのポイントは3つ。

  • 水面の反射の中に通過する船を入れる
  • ビルに当たる夕日の反射も構図に活かす
  • 日が沈んでからは、ビルのシルエットを印象的に撮る

「まだ明るいので手持ちでも十分撮れますが、構図をキッチリ押さえたい場合は三脚を使って下さい。レリーズがない場合は2秒のセルフタイマーを使う手もあります」

「カメラのホワイトバランスが『晴天』や『オート』に設定されていると、あっさりとした印象の色味になるかと思います。そうした場合は、『曇り』や『日陰』に設定すると、見た目の印象に近づけられるでしょう。もちろんRAW現像の段階で調整しても大丈夫です」

移動は貸切バス
最初の撮影地となった、富士見橋
参加者の撮影風景
その場で撮影テクニックのレクチャーも
ユーチューバーのジェットダイスケさんも参加していた。撮影会の模様はこちらで公開されている
富士見橋から撮ることのできる写真の例

人の目とカメラで「ちょうどいい明るさ」は違う

2番目の目的地、有明ジャンクションは、首都高速湾岸線を3方向に分岐する複雑な形状の巨大構造物だ。今回の撮影では湾岸線に隣接する湾岸道路から、レインボーブリッジ方面に繋がるジャンクションの裏側を撮影している。

夕景から夜景にさしかかる時間帯で、川北さんはここで気をつけるポイントとして、目とカメラが感じるダイナミックレンジに差があることに言及した。

「ここでは構図的に必ず空が入ると思いますが、被写体と空の明暗差に気をつけてください。自分の目で景色を見て、ちょうどいい夜景だと思っても、カメラ的にはまだ明るすぎるのです。被写体と空に明暗差がありすぎると、空が昼のように明るく写り、その一方で構造物がシルエットのように写ってしまいます。思ったような絵を撮れないときは、待つことも重要です」

「ジャンクションは巨大な道路構造物が大きく湾曲して、なかなか迫力のある被写体だと思います。遠景に東京タワーなどのランドマークを入れてみても面白いでしょう」

また、三脚を使って撮影するときについ失念しがちな注意点として、レンズやボディに内蔵している手ブレ補正を無効にするよう呼びかけている。

バスを降りて有明ジャンクションに到着
そろそろ三脚が必要になる頃合い
有明ジャンクションで撮れる写真の例。超広角レンズや魚眼レンズを使っても面白い表現ができるという

工場は見た目よりきれいに仕上げるのがポイント

今回最後の撮影地、川崎・千鳥町の工場地帯は、非日常的な雰囲気を持つ工場と、貨物列車用の線路がセットで撮影できる定番スポット。到着する頃にはすっかり空も暗くなり、稼働する工場の光が夜空に美しく映える時間帯となった。はとバス工場夜景ツアーのルートに組み込まれている場所ということもあり、写真撮影や見物に集まる人の出入りもそこそこあった。

川北さんはここでも、撮影ごとにプレビューを拡大し、必ずブレがないかを確認するよう呼びかけた。また、レンズは絞り込んで、長時間露光で鮮明に写すことも勧めている。

「見た通りに写す必要はありません。見た感じではなく、写真のプレビューを参考に、撮影設定を調整しましょう。むしろ、見た目よりもきれいに仕上げることを意識してください。部分的にハイライトが飛んでしまっても構いません。あまり気にするとほかの部分が黒つぶれしてしまいます」

「複雑な配管をクローズアップするのもいいですが、ちょっと引いて水蒸気や煙を入れてみると、構図が引き締まって良いと思います。ここなら、線路と工場の対比を意識するとよいでしょう」

千鳥町の撮影風景。暗いが人通りはそれなりにあった
参加者はそれぞれ工夫して構図やアングルを決めていた
千鳥町で撮れる写真の例。目で見るよりも明るく、かなり赤みを強くしている

見たままに撮ることだけが「夜景写真」ではない

撮影から1週間後の4月23日には、同じメンバーが参加する講評会が開かれた。参加者は撮影会当日に写した写真の中から、川北さんに評価してもらいたい写真を3点まで選び、現像やレタッチで作品に仕上げて、データを持ち寄り、簡単なプレゼンを行なう。

それぞれの写真は同じ時間帯、ほぼ同じ場所で撮影したはずだが、提出された写真にはそれぞれの視点がはっきりと残っており、メンバーそれぞれの手によって、まったく違う作品に仕上がっている。作品がスライドに映し出されると、会場からは時折、感嘆の声が上がることもあった。

川北さんは講評を行なう中で「夜景写真に正解はない」と話している。

「色味についてですが、夜景写真に関しては、これが正解、という色はありません。人それぞれの色があっていいと思います。現にみなさんも今回、写真を現像する中で、『この色もいいな』と迷ったタイミングもあったはずです。特に工場は、それ自体が日常的な被写体ではないので、時にはHDRをかけて遊んでみても楽しいですよ」

また作品を仕上げる際のレタッチについても言及しており「写真の修整はお化粧のようなもので、必要だと思うなら手を入れて構わない」との考えを述べている。これに関連して、デジタルカメラが搭載している新機能についても「せっかく新しいカメラを使っているのだから、どんどん使うべき」と話した。

講評会の様子

参加者の1人に、今回の撮影会に参加した感想を聞いてみた。

――今回の撮影会に参加したきっかけを教えてください。

会社の写真仲間から誘われて応募しました。一緒に応募したのですが、どうも私だけ当選してしまったようで(笑)

――写真はどのくらいの期間、撮られていますか?

独学なのですが、もう16、7年くらいです。普段は日中の風景を中心に撮っています。

――普段から撮影会には参加するのですか?

実は初めてなんです。いつもはずっと1人で撮ってました。

――今回、夜景撮影会に参加された感想をお聞かせください。

夜景の撮影スポットは女性1人で行くにはなかなかハードルが高いので、みんなで行けたのはすごくありがたかったです。実際に行ってみると、『ああ、ここ入れたんだ』と思うこともあって、新しい発見がありました。

――講評会についてはどうでしたか?

今までこういったイベントに参加したことはなかったので、他人の作品を見たり、先生からご指摘いただくという機会も新鮮で、納得感もあり、とても勉強になりました。

――今回はプロジェクターだけでなく、アイ・オー・データのディスプレイにも作品を映していました。見え方はいかがでしたか?

ディスプレイまでは距離もあったのですが、思いの外細かいところまで見やすかったので、すごいなと思いました。

――普段はどういった機材をお使いなのでしょうか。

ニコンのD750を使っています。撮影会ではタムロンの28-75mm F2.8と、望遠はニコンの70-300mm、ほかにシグマの24mmと50mmの4本を持っていきました。基本、使ってみたい機材はがんばって買います!

あと、今回は三脚を久しぶりに使ったのですが、使ってみると構図も決めやすいし、使いどころがわかって良かったですね。普段は荷物を増やしたくなくて使っていないんですけれども。

――ありがとうございました。

講評会の会場には、アイ・オー・データがラインナップしている写真編集用途向けのディスプレイと、ストレージの新製品を展示していた。ディスプレイはどちらも発売中だが、ストレージの発売時期や価格は、現時点で未定だという。

Adobe RGB90%の色域をカバーする液晶ディスプレイ「LCD-HC241XDB」(左)と「LCD-MF244EDSB」
SDカードを挿して直接データを取り込めるNAS「HLS-PG1」(参考展示)
PCなしで写真データをUSB HDDにバックアップする「WFS-SR03」(参考展示)

関根慎一