デジタルカメラマガジン

「河野英喜流ポートレート」ワークショップを見学

大口径レンズの意義とは? デジタルカメラマガジンDAY Spring 2016より

デジタルカメラマガジンDAY Spring 2016のトリを飾る「フォト★サロン〜デジタルカメラマガジンDAY 特別編〜」の様子

月刊誌デジタルカメラマガジンによるファンイベント「デジタルカメラマガジンDAY Spring 2016」が、4月22日・23日・24日の3日間、神戸のmeriken gallery & cafeで開催されました。

このイベントは毎年春と秋に行われているイベントで、ゲスト写真家による豪華なワークショップが人気。今回はポートレート作品で知られる河野英喜さんが、ワークショップの講師を務めました。その名も「Nikon D750でボケ味を楽しむ河野英喜流ポートレートテクニック<女性モデル撮影>」。

河野英喜さん

23日の当日朝、会場であるmeriken gallery & cafeに次々と集まる受講者のみなさん。モデル撮影会に参加するのは初めての方から、ベテランの方まで様々です。期待の高まる中、河野英喜さんのワークショップが始まりました。

お相手を務めたのは、弊社デジタルカメラマガジン編集長の福島晃(右)。

大口径レンズでしか撮れない世界

河野英喜さんは、1968年島根県出身。高校生の頃より独学で人物撮影に目覚め、当時はカメラ雑誌の月例コンテストの常連だったそうです。

その後、管楽器のフルートを作る企業に勤めるも写真の夢をあきらめきれず、プロとして独立。「JJ」「セブンティーン」「With」などのファッション誌の撮影から、タレント・女優の撮影へと進みます。カメラ雑誌での執筆も数多くこなし、当サイトでもニコン COOLPIX P900インプレッションの第3回を担当してもらいました。

ニコンD750の広告写真のひとつ。河野英喜さんが手がけました。

ポートレート撮影の機材選びで河野さんが強調したいのは、大口径単焦点レンズの魅力だそうです。曰く、

「焦点距離が固定されているので最も美しいボケを得ることができる」
「ボケ量が大きく、色の繋がりが美しい」
「ピントの深度が浅いが合焦部は極めてシャープ」
「ファインダー内の見え方が格段に明るく、ピントのピーク(山)がつかみやすい」
「明るいレンズほど、AFセンサーの精度も向上しやすい」

といったところ。確かに、標準ズームレンズや暗めの単焦点レンズしか使ったことがないと、こうした魅力に気づくことはないのかもしれません。

今回のワークショップでは、参加者に大口径単焦点レンズを体験してもらうため、4種類のレンズが用意されました。

AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

河野さんによると、AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gと同f/1.8Gは、「ナチュラルで大きなボケを得やすい、ポートレートの標準レンズ的な存在」とのこと。

AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gの評価は、「他のレンズにはない50mmよりひとまわり踏み込んだ画角と独特のボケ。特にボケは三次元的で奥行きがある」と評価。

一見、ポートレート向きではないように見えるマイクロレンズのAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED。河野さんは主に顔などのアップ撮影で使用するといいます。意外なセレクトですが、「シャープでクリアな描写は、表紙などで欠かせない存在。マクロとしても、中望遠としてもいける」とのことです。

レンズの説明の後は、カメラボディ側のD750の設定に移りました。

一連の河野流ポートレートの設定のうち、印象的だったのは、ピクチャーコントロール「ポートレート」の明瞭度について。階調を維持しながらもプラス側ではくっきりと、マイナス側ではふんわりした効果になるそうです。

神戸ハーバーランドで大口径レンズを体験

設定も無事終了。カフェで昼食をとった後は、いよいよ撮影に出発です。

その前に、満を持してモデルの相川結さんと永原知奈さんが登場しました。撮影前だというのに、参加者の皆さんの盛り上がりは最高潮に!

左から相川結さん、永原知奈さん。

撮影場所は、ワークショップ会場から徒歩10分ほどの神戸ハーバーランド。その中でも主に、煉瓦倉庫街を中心に撮影が進みました。

河野さんの指導のもと、モデルさんごとに相川組と永原組に分かれての撮影が続きます。座学で得たボケの大切さを意識しながらの撮影。天候にも恵まれ、若干曇り気味という、大口径レンズでボケを味わうには丁度良い空模様でした。

途中からは1人ずつモデルを独占しての撮影も。遠慮気味だった参加者も徐々にヒートアップしていきました。撮影を重ねるごとに、参加者同士も次第に打ち解けてきたようです。

ベストショットはモデルさん2名が選出

約2時間におよぶ撮影が終わった後は、メリケンギャラリーに戻って講評会です。

上手く撮れたと思う相川さん1点、永原さん1点の写真ををプリントして提出。それぞれについて、河野さんから指導が入りました。同じ場所で同じモデルを撮っているにも関わらず、参加者ごとにずいぶん違った写真になっていることに、皆さん驚いてました。

そして栄えある最優秀作品は河野さんから発表される……のではなく、モデルの相川さん、永原さんが1点ずつ選んでくれました。どんな作品が選ばれたのかは、デジタルカメラマガジン2016年6月号をごらんくださいませ。

多彩な内容のワークショップが開催

河野さんのワークショップが開かれた23日、デジタルカメラマガジンDAYの他のワークショップも行われていました。

木下アツオの紙とプリント講座(入門編)〜色々な紙でプリントを楽しもう!〜

モニターからプリンターまでのカラーマッチングをわかりやすく紹介していたのが、木下アツオさんのワークショップです。カラーマッチングにおける「何を本物の色をとするか」という難しい命題を、「データを信じる」「プロファイルを活用する」という切り口で解説。ピクトリコのさまざまな用紙でプリントし、その違いを比べるという趣向もありました。

森星象の一眼レフ・レンズワークパーフェクトレクチャー with Nikon D750&D5500〜レンズ全部貸し出します!てってい的にレンズを使いこなそう!〜

広角から望遠、マクロまで、多数のニッコールレンズが試せた森星象さんのワークショップ。午前中はレンズの仕組みやテクニックついての座学、午後は撮影実習が行われました。たくさんのレンズが試せるとあって、数多くの受講者が集まっていました。

えりこ先生のかんたんスイーツ撮影術 with Nikon 1 J5〜カフェでステキに撮影&楽しくティータイム♪〜

meriken gallery & cafeの人気講師、えりこ先生の講座「かんたんスイーツ撮影術 with Nikon 1 J5〜カフェでステキに撮影&楽しくティータイム♪〜」。えりこ先生は受講者に、Nikon 1 J5と標準ズームレンズを使った花の撮り方について説明。背景ボケの作り方をはじめ、逆光・斜光・順光といった光の選び方などについても解説がおよんでいました。

Nikon 1 J5については、「コンパクトデジカメのような大きさなので親しみやすい」「タッチパネルがスマートフォンみたいで使いやすかった」といった意見が受講者から寄せられていました。

トークイベントも盛況に終了

すべてのワークショップが終わった後、河野英喜さん、三田よしのりさん、弊社福島晃(デジタルカメラマガジン編集長)の3人による特別トークイベント「フォト★サロン〜デジタルカメラマガジンDAY 特別編〜」がメリケンカフェで開かれました。

河野さんのワークショップに参加された方も、そのまま多く来場いただいたようです。話は河野さんの撮影裏話から、写真の道に進んだきっかけなどにまでにおよび、終了時刻の夜7時30分まで、高いテンションのままトークが続きました。

左から河野英喜さん、弊社福島晃、三田よしのりさん。福島が手にしているのは、デジタルカメラマガジン編集部が制作した「写真の教科書」。

会場のmeriken gallery & cafeとは?

デジタルカメラマガジンが毎回行われるmeriken gallery & cafeは、ギャラリー、カフェ、書店が集約された、写真好きのためのスペースです。ワークショップも定期的に行われており、学んだ結果をギャラリーで発表するなど、多面的に写真に関係することができそうです。暗室やフィルムの販売もあります。

兵庫県神戸ギャラリー画廊展示写真教室/みなと町神戸のメリケン画廊

◇   ◇   ◇

というわけで、参加者は終日がっつり写真漬けとなったデジタルカメラマガジンDAY。河野さんワークショップ参加者が撮影した渾身の作品は、デジタルカメラマガジン2016年6月号に掲載されています。ぜひごらんください。

(デジカメWatch編集部/本誌:折本幸治)