デジタルカメラマガジン

「早朝」と「深夜」にドラマチックな写真を撮ろう!

デジタルカメラマガジン11月号特集より

本日発売「デジタルカメラマガジン2015年11月号」の特集1は、「早起きと夜更かしがドラマチックな写真表現の基本!!『早朝と深夜に撮る写真』」です。各ジャンルの写真家が、早朝と深夜ならではの写真の撮り方を解説します。

基礎テクニック「早朝らしい空間と被写体に迫る深夜」

(写真・文:大村祐里子)

構図の作り方で時間の雰囲気を表現する
【早朝は引きの構図】モノレールの車内から橋の上に朝日が出るタイミングを狙って撮影した。太陽に街全体がダイナミックに照らされる様子は、「はじまり」と「広がり」を感じさせる「引き」の構図で早朝らしさが強調できた。キヤノンEOS 5D Mark III/コシナZEISS Otus 1.4/55/55mm/マニュアル露出(F8、1/1,600秒)/ISO 400/WB:5,100K
【深夜は寄りの構図】静寂を演出するため、被写体に寄ってシンプルな画面構成にした。背景を黒一色にすると深夜っぽさが増すが、さみしくなりすぎないよう、ネオンを差し色にした。キヤノンEOS 5D Mark III/コシナカールツァイスMakro-Planar T*2/50/50mm/マニュアル露出(F2、1/40秒)/ISO 800/WB:2,600K

人間はたいてい早朝に起きて、それぞれの活動をはじめる。したがって「朝」と聞くと、人は「はじまり」や「広がり」といったイメージを持つ。このイメージを写真で表現すれば、よりダイレクトに時間のイメージが伝わる。「はじまり」や「広がり」は、引きの構図でダイナミックに表現をした方が伝わる。

一方、深夜は人間が眠ったり、静かに過ごすことの多い時間帯である。したがって「夜」と聞くと、人は「静寂」のイメージを持つ。そういったイメージは、被写体に迫る「寄り」の構図で表現をした方が伝わりやすい。なぜなら、一般的に引きの構図は画面の中の情報量が多くなりすぎて、にぎやかさが出てしまうからだ。そういった意味では背景の整理もポイントとなる。

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続いて、早朝と深夜における撮影の応用を見ていこう。

早朝6時30分「光で刻々と変わる表情に着目して一面の霜に覆われた絶景をとらえる」

(写真・文:金子美智子)

キヤノンEOS 5D Mark III/EF24-105mm F4L IS USM/47mm/絞り優先AE(F16、1/20秒、+0.3EV)/ISO 400/WB:太陽光

小田代が原のカラマツが黄色く色づいたので、日の出前から撮影に臨んだ。「小田代が原の貴婦人」と呼ばれるダケカンバのを画面の真ん中にして、霜で真っ白になっている湿原と金屏風のように貴婦人の後ろに立つ黄色く色づいたカラマツ。そこに斜光が差し込み、光り輝く様子を広い構図でとらえている。

時間を追うごとに刻々と被写体の表情が変わっていくため、2時間以上は粘って撮影を行いたい。小田代が原は広角でも望遠でも切り取れるので、持参するレンズは幅広い焦点域でそろえておこう。

また、撮影では絞り優先AEを使用し、レンズ描写を生かして画面内の被写体をシャープに描写するため、ここではF16まで絞り込んでいる。ただ、それを超えると回折現象で描写が甘くなるので絞り過ぎないようにする。

3 STEPフォトテクニック

深夜0時「街路を広角で俯かんして都会に訪れる夜の静けさを伝える」

(写真・文:鶴巻育子)

キヤノンEOS M3/EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM/13mm(21mm相当)/絞り優先AE(F10、1/6秒、-0.3EV)/ISO 6400/WB:太陽光

明るい時間帯は人々で賑わう街。それが深夜になるとまったく違う顔を見せる。その雰囲気を表現したかった。そのためには、レストランや飲み屋などの店も閉まり、人々が寝静まったころの深夜の0時過ぎから明るくなる前の3時ごろの時間帯に狙う。

とにかく、街に動きがないことを伝えるのが目的のため、長時間露光で車のライトの軌跡を入れることもここでは避けたい。そしてハイアングルで撮影できる場所を探す。日中、人や車が行き交う道路を画面に多く取り入れ、それを深夜に撮って見る人に昼間とのギャップを感じでもらうわけだ。レンズは望遠で切り取ってしまうよりも広角を使う。家の窓を写すことで人々が眠っていると想像させ、街灯に照らされているひっそり静まりかえった道路がより際立つ。

3 STEPフォトテクニック

深夜2時30分「星の軌跡を画面に取り入れて絶景をより一層の異世界にする」

(写真・文:米田誠)

ニコンD800E/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED/24mm/マニュアル露出(F2.8、30秒)/ISO 800/WB:3,350K/99枚を比較明合成

写真の場所は説明の必要もないほど撮り尽くされた場所の1つであろう、茨城県の神磯である。海から突き出た岩場に鎮座する鳥居が、とても印象的だ。ここで撮影される写真の多くは日の出を狙ったものだが、今回は早く現地に入って真夜中の情景をとらえようと考えた。

当日は星がたくさん輝いていており、この異質な世界感をより印象的に切り取るため、数十分という時間単位で星をとらえて時の流れを演出している。

その際、シャッターを開けっ放しにする伝統的な撮影方法では、デジタルカメラの場合、空が明るくなりすぎてしまったり、イメージセンサーが長時間作動することによる熱の影響で、ノイズまみれになってしまうため、複数枚の写真を使った「比較明合成」という手法で仕上げている。

3 STEPフォトテクニック

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本特集では、早朝と深夜の撮影について基礎テクニックと応用編に分けて解説。応用編では、撮影方法を3ステップでわかりやすく解説しています。

(デジカメWatch編集部)