デジタルカメラマガジン
水中と陸上の両方を写し込んだ写真はどう撮る?
デジタルカメラマガジン9月号特集「美しい写真が撮りたい」より
Reported by デジカメWatch編集部(2015/8/20 07:00)
本日発売「デジタルカメラマガジン2015年9月号」の特集1は、「イラストでよくわかる!! 一度は撮ってみたい写真の撮り方『美しい写真が撮りたい』」です。各ジャンルの第一人者が24人が美しい写真の撮り方を解説。ここではその一部を紹介します。
水中と陸上、2つの景色を魚眼レンズで同時に写し込む(山下峰冬×海)
半分水中、半分陸上を写す半水面という手法を用いた。まずは(1)浅瀬の明るい砂地で被写体を探すのが先決。これで上下の露出差を少なくできる。次に、レンズ部分を半分水面下に沈めてファインダーをのぞき、背景にまで気を配り構図を追い込んでいく。
十分に(2)サンゴに近づいて遠近感を出す。そのためには、サンゴと水面の距離が近いことが必須条件なので、水深がほどよく下がる時間帯を選ぶと良い。続いて、夏雲を大きく取り入れて季節感と空の高さを出すとともに、サンゴとの対比のおもしろさを狙った。
さらに両者を画面のほぼ中央ラインでそろえて、上下2つの世界に関係性をもたせた。同じライン上に魚を配置できれば、その存在感をおおいに強められると考えた。(3)水面の動きによって露出が変化しないようマニュアル露出で固定する。
手前の被写体を強調させるために、今回はF6.3を選択して背景の描写を少し柔らかくした。目の前のサンゴにピントを合わせておき、魚のタイミングを見計らいシャッターを切る。ストロボは使用せず、やや硬めの影を生かして、被写体にコクのある独特な印象をもたせた。
写真・文山下峰冬(やましたみねふゆ):1979年愛知県生まれ。インテリア・グラフィックデザインなどを経験後、2011年に写真家として独立。作品は企業カレンダーなどに多数採用されている。
モンテネグロの空と海岸をPLフィルターで鮮やかに彩る(TATSURO×リゾート風景)
クロアチアの古都ドヴロヴニクからアルバニアの首都ティラナに向かう長距離バス内から見えた風景。その途中、モンテネグロのブドバァ近郊で写した1枚だ。窓越しからそのまま撮ると窓ガラスに車内の人や椅子が乱反射してしまう。
そこで(1)PLフィルターの出番だ。フィルターの二重の枠の前側を回転させながら、最もクリアに見える個所を探そう。アドリア海は水面の中まで透き通って見えるほど美しい海だが、手前の水面が透けているのはPLフィルターの反射除去の効果もあるだろう。
また、(2)移動中のバスは当然揺れるため、シャッター速度を速めに設定する。この写真では焦点距離35mmと比較的ぶれにくい広角気味ではあるが、余裕をみて1/320秒まで上げ、そのぶんISO感度を上げて調整している。
バスは緩やかな蛇行路を絶えず移動し続けることから、撮りはじめはサイド光だったが秒刻みで順光になったり斜光になったり、(3)絶えず太陽の位置が変わる。それに合わせて反射除去具合と色彩のコントラスト具合をこまめに確認したい。構図を考えつつ、ひたすらファインダー1内で反射の除去具合を確認しながら連写する。
写真・文TATSURO(たつろう):1981年生まれ。大阪芸術大学在学中から広告撮影に携わる。撮影スタジオ勤務を経て、24歳で目黒区に写真事務所を設立。主に雑誌、広告などで著名人の撮影を行う。今年、撮影スタジオを設立。9/29から新宿ニコンサロンにてアフリカ大陸を旅した写真展を開催。
専用のセットを自作してインクの造形美をとらえる(牧岡孝明×マクロ)
下のイラストにあるように、(1)水槽は真下からでも光を当てられるように改造したものだ。市販の水槽の底に穴をあけ、そこに透明のアクリル板を接着剤でしっかりと固定し、水が漏れないようにする。カメラ側の面以外を黒い画用紙で囲んで完成だ。
次に、同じ高さの台を2つ用意し、その台の下からライトで光を当てる。あまり近づけすぎると熱でプラスチックが変形する危険があるので注意しよう。セットが完成すればいよいよ撮影となるが、カメラの設定で(2)一番重要なのはシャッター速度で、これが遅いとインクの形状を美しく写し止めることができない。最低でも1/125秒は必要となる。
一方、ガラスを通した撮影となるので映り込みに注意したい。レンズを水槽にくっつけるぐらい近づければ良いのだが、そうするとピントが外れやすくなるので、PLフィルターで反射を防止したほうが得策だ。
(3)影位置が決まったら割り箸などを水槽に入れて、それを目印にMFで置きピンしよう撮。水が入った水槽に流し込まれたインクにタイミングを合わせるのは難しく、撮影するたびに水を入れ替える必要がある。作業は大変だが根気よく挑戦してほしい。
写真・文 牧岡孝明(まさおかたかあき):1991年新潟県生まれ。アカデミックなものしか作れない自分に嫌気がさし、そのまま転がるように写真の世界へ。2014年長岡造形大学造形学部視覚デザイン学科卒業
複数枚の写真をステッチして表現できる橋脚群のリズム感(大山 顕×ジャンクション)
高架道路の立体交差は下から見上げたときの光景がいちばんダイナミックでカッコ良いと思う。つまり、実際に現場に行ってみないとどのように撮れるのかがわからない。そのため、とにかく全国のジャンクションの下道を歩き回っている。
私の場合、どちらかというとジャンクションの構造全体を記録したいと思って写真を撮っているので、風景を切り取るという意識はほとんどない。ここから見ると素敵だなと感じるポジションで見える範囲をぐるりと撮ってしまう。
写真の久御山ジャンクションは周りに何もない場所で、橋脚の間に抜ける夜空が印象的。カメラを左右180度以上振って撮影した数十枚をステッチしている。(1)構図やアングルは、その場に立ってぐるりと見回してカッコ良く見える場所で決める。ただ、朝夕など刻々と空の色が変わる時間帯は合成時に色が合わなくなるので難易度が高い。
撮影時は50mmの単焦点レンズを使用し、絞りはF8を目安に決めている。(2)正確に合成できるようにパノラマステッチ用の雲台を使うのがポイントだ。(3)およそ50~80枚程度撮影したらステッチソフト「PTGui」で合成する。
写真・文大山 顕(おおやま けん):1972年千葉県生まれ。フォトグラファー/ライター。写真集に『工場萌え』『団地の見究』(ともに東京書籍)、『ジャンクション』(メディアファクトリー)など。
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本特集では、撮影の手順を3つのステップで紹介。撮影現場を再現したイラストでわかりやすく示したほか、や撮影に必要なアクセサリーについても解説しています。