デジタルカメラマガジン

冬の絶景はどう撮る? WBやフレーミングの工夫を伝授

デジタルカメラマガジン12月号特集より

デジタルカメラマガジン2015年12月号は11月20日発売。価格は税別1,000円

発売中の最新刊「デジタルカメラマガジン2015年12月号」の特集1は、「冬の絶景写真 日本ベストセレクション100」です。36人の写真家が全国100カ所の絶景における撮影テクニックを計48ページにわたってわかりやすく紹介。撮影スポットや被写体のガイドとしても活用できます。ここではその中から3カ所を紹介します。

特集1では、摩周湖、知床半島、美瑛、天橋立といった大自然から、神戸ハーバーランド、札幌雪祭り、鹿苑寺(金閣寺)、宇部港などの人工物まで、冬の絶景100カ所を網羅しました!

湯川渓谷[ゆかわけいこく、長野県]

(写真・文:萩原史郎)

圧倒的スケールの氷柱の世界
南牧村の国道141号線から「灯明の湯」方向へ入り、湯川沿いを進む。広い空き地に駐車し徒歩約30分で眼下に氷柱群が見える。渓谷へ下る道へ入ると、上流方向と下流方向の2カ所に大氷柱がある。気温が高い日は氷柱が落ちるので、厳重注意だ
オリンパスE-5/ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD/15mm(30mm相当)/絞り優先AE(F16、1/4秒、-0.3EV)/ISO 100/WB:太陽光
長野県南牧村/1月中旬/14時/標準レンズ

第一感としては、氷柱の美しい部分だけを切り取って表現したくなる。しかし、足元には清らかな水が静かに流れている。水底が浅く水鏡のようになるため、氷柱をきれいに映している。それと組み合わせない手はない。

そこで、氷柱の水の世界を余すところなく描くため、標準ズームのワイド側を選択。その上で氷柱と水を1:1に等分したシンメトリーの構図を作り、水鏡を最大限に生かした。

また、奥行きを出すため、少し斜めのアングルを選んだ。清冽(せいれつ)な美しさを表現することを明確にするため、余分な要素は極力排除した。

白系統以外の色を排除する

撮影現場には氷柱や水、森といった要素があるが、氷柱と水の清冽な美しさを明確にするため、要素を引き算して氷柱と水に絞る。森まで見せると、奥行きのあるスケール感が生まれるが、白系統以外の色の要素が入り、清冽な美しさが損なわれてしまう。
【色が増えると意図が散漫に】一般的にスケールが大きく見えるこちらの構図を作りたくなるが、氷柱と水の風景の美しさに焦点を絞った場合は狙いと外れる

青味が出る太陽光に設定する

氷という被写体の性質上、青味がかっている方が冷たさを感じやすいので、WBは太陽光にする。カメラ任せのオートWBは見ためどおりの色になるが、冷たさの印象が弱まる。氷や雪という冬の被写体は、白を白として表現すれば良いというわけではない。
【氷の冷たさが伝わらない】氷や雪の正しい色はこちらの色が近いが、伝えたいイメージはどういった色かということを考慮してWBを決定しよう

米塚[こめづか、熊本県]

(写真・文:GOTO AKI)

日本を代表する美しいスコリア丘
九州自動車道熊本ICから阿蘇火山博物館駐車場まで車で約60分。杵島岳山頂までは徒歩約50分。滑りやすいのでトレッキングシューズを用意する。防寒対策も忘れずに
キヤノンEOS 5D Mark III/EF70-200mm F4L IS USM/93mm/絞り優先AE(F5.6、1/2,000秒、-1.0EV)/ISO 400/WB:太陽光
熊本県阿蘇市/1月下旬/15時30分/望遠レンズ

観光地阿蘇の米塚を杵島岳(きしまだけ)山頂から撮影。山肌と米塚だけを焦点距離93mmで切り取り、米塚の円形と山肌のラインでシンプルに構成して抽象的なイメージを狙った。光は冬の夕方の斜光で米塚が立体的に見える時間帯に斜俯瞰で撮影。足元をぼかして距離感を表現した。

同一のトーンで画面をまとめる

日が傾きかけた夕景の美しさを強めるため、焦点距離やアングルを変えて画面内の色彩をアンバーなトーンでまとめる。奥の農地や阿蘇外輪山を入れてしまうと、夕景の美しさだけでなく、米塚を主役とした抽象的なイメージも弱まってしまう。
【要素が多いと主役が弱まる】メインカットより広い75mmで撮影すると、街やバスなど具体的な被写体が写り込み、米塚の面白さが半減する

新栄丘展望公園[しんえいのおかてんぼうこうえん、北海道]

(写真・文:入江進)

陰影を生かして立体感を演出
美瑛駅より富良野方向に線路の西側の道を南下すること約4kmで新栄の丘展望公園に着く。道は圧雪路であるため、冬用タイヤであれば何ら問題はない
キヤノンEOS-1Ds Mark III/EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM/263mm/マニュアル露出(F11、1/200秒)/ISO 200/WB:太陽光
北海道上川郡美瑛町/2月下旬/8時30分/望遠レンズ

日中の美瑛の丘では、光がフラットに入り平面的になりがちだ。そのため雪原の白のトーンを出すのは難しい。しかし、雲の流れが早く、雲間から注ぐ光がある場合は、真っ白な雪原の舞台にスポットの光を与えてくれる。この自然の演出によって風景がドラマチックに変化する。

光と影でコントラストを作り出す

光が奥の方まで入ってしまい、全体がややフラットな印象で、アクセントに欠ける写真になった。真っ白な雪原においてコントラストは重要な要素であるため、雲の動きなどを観察しながらそのときが来るまで粘り、シャッターチャンスを逃さぬように心がけたい。
【自然光の陰影がメリハリを生む】影が弱いとコントラストも同様に低下する。自然光の陰影を見定めることで作品に臨場感を与えることができる

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このほかにも、本誌には旬の情報が盛りだくさんです。

目次
特集2は、大村祐里子氏による「絶対に失敗しない コスプレ撮影」
巻頭特別企画は、「写真家・HARUKIが伊予“2泊3日”の旅で撮るキヤノンPowerShot G5 X」
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ジッツオの新型三脚レビューでは、ブランドマネージャー鈴木健二郎氏のインタビューも

(デジカメWatch編集部)