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「GR」の発表会に森山大道氏が登場

“ストリートスナップに最も適したカメラ”

 ペンタックスリコーイメージングは17日、同日発表したリコーブランドのコンパクトデジタルカメラ「GR」の製品発表会を都内で開催した。ここではその模様をお伝えする。詳細はペンタックスリコー、APS-C世界最小の28mmコンパクト「GR」を参照されたい。

GR。

 冒頭、同社代表取締役社長の赤羽昇氏は、「世界のどの地域でも特にコンパクトデジタルカメラの販売台数が減っており、スマートフォンの影響で特に安価なモデルが大きく影響を受けている」とした。しかし、一眼レフ、ミラーレス、ハイエンドコンパクトカメラは世界共通で伸びているという。その理由を「スマートフォンによって写真を撮る人が急速に増え、その中で一定の比率で“よりよい写真を撮りたい”、“より高性能なカメラを使いたい”というニーズがあるため」と説明。ハイエンドコンパクトは今後大きく伸びると述べた。

GRを手にするペンタックスリコーイメージング代表取締役社長の赤羽昇氏。
コンパクトデジタルカメラの販売台数は世界的に減少傾向にある。
同社のラインナップ。「小さいセンサーのところに固まっているのは、携帯性を重視したモデルが得意だからだ」(赤羽氏)。

 赤羽氏は新製品について「『GR DIGITAL V』を想像されるかもしれないが、GRシリーズの集大成、総決算として『GR』と名付けた。待望のリコーブランドカメラで、GRはグレートカメラだ。高級機に必要な、高機能、デザイン、使いやすさの3つを備えている」と紹介した。“集大成”については、「これまでの技術の集大成という意味。次があれば、またそこまでの集大成になるので、これで終わりという意味では無い」(赤羽氏)とした。

「GR DIGITAL V」(左)ではなく、「GR」(右)とした。

「APS-Cサイズセンサーの28mm相当レンズ機でナンバーワン画質」

 続いて同社マーケティング統括部 副統括部長の野口智弘氏が製品概要を説明した。「発売後も機能拡張ファームウェアをリリースしたりカスタマイズサービスなども含めてGRである。新モデルもこうした考え方を継承し、強化する」とした。また、GRについて「APS-Cサイズセンサーで28mm相当のレンズを搭載した機種としては、総合的な画質は1番のカメラができた」(野口氏)と話した。

 野口氏によれば、GRシリーズユーザーの携帯頻度と撮影枚数は他機種ユーザーを圧倒しているという。GRシリーズというと“スナップカメラ”とのイメージもあるが、「スナップ専用ではなく、広くいろいろな撮影に使われている」(野口氏)とのこと。

ペンタックスリコーイメージング マーケティング統括部 副統括部長の野口智弘氏。
GRの大きな特徴
GRシリーズの基本思想を継承した。
ターゲットも従来から変わっていない。
スナップ撮影にとどまらない活用を提案する。

 GR最大の特徴を「ずば抜けたレンズ性能を銀塩GRサイズのボディに収めたこと」(野口氏)とする。従来機種に比べて像の流れや色収差も抑え、画面周辺部まで均質な画質を実現したとしている。レンズで歪曲を抑え込んでおり、ボディ側での補正は行なっていない。

GR史上最高性能だとするレンズを搭載。
レンズ機構。
通常時のMTF(左)とマクロ領域時のMFT(右)。従来機よりも放射方向と接線方向のカーブが揃っている。
GXR用レンズユニットに比べて大幅に小型化している。
像の流れなども少ないという。
歪曲も抑えたとしている。
ゴーストやフレアも低減した。
絞り羽根は9枚で円形に近い。

 また、レンズ構成を見直すことで従来に比べてマクロ時の画質も改善した。従来はレトロフォーカス構成だったが、今回は非レトロフォーカスタイプとした。非レトロフォーカスタイプは、レトロフォーカスタイプに比べて、同じレンズのサイズであればマクロ時の性能は良くなるという。

 GRでは新たにNDフィルターを絞り開放から挿入できるようになった。従来はある程度絞り込んだところからしか適用できなかったが、今回開放絞りのサイズをカバーできるNDフィルターユニットを搭載できたことで実現した。絞りは9枚羽根で、「より円形に近い」(同社)としている。

 センサーにおいては、レンズ周辺部に行くほど斜めになる入射光に対応できるようマイクロレンズを最適化した。これによりレンズからの光線の許容度が増し、レンズおよびボディの小型化に寄与している。

マイクロレンズを最適化したセンサーを採用。

 前モデルにあったパッシブAFセンサーは、コントラストAFで十分な速度が実現できたこととボディ小型化のため省略した。また手ブレ補正機構の搭載も見送っているが、小型化と消費電力低減のためだとしている。

 画像処理エンジンも新型の「GR ENGINE V」になり低ノイズ化を図った。センサー自体のS/Nも向上させており、高い先鋭度を残したままノイズを低減させたとしている。画像処理エンジンの開発では、拠点が離れているリコーブランド担当とペンタックスブランド担当でお互いレビューするなどして進めたという。

画像処理エンジンも新しくし、高感度画質の改善などを図っている。

 また、GRではローパスフィルターレスセンサーを採用しているが、画像処理によって色モアレ低減を行なっている。「完全には消せないが、独自開発した処理で効果的に低減している」(同社)。

色モアレは画像処理で低減する。
新ダイナミックレンジ補正では、輪郭が従来より自然に処理できるようになった。また、マルチパターンAWBはエリアが細かくなり色のずれが少ない。

 センサーサイズをAPS-Cサイズにしたことと1/1.7型系列のカメラの今後については、「総合的な画質と携帯性を常に考えており、センサーサイズで決めているわけではない。組み合わせを正統的に進化させて、GR DIGITAL IVの後継機として開発した」(野口氏)とした。

 AF速度もGR DIGITAL IVの0.3秒から0.2秒に短縮した(CIPA規格規準)。駆動モーターやAF処理を見直したほか、AF時のセンサー読み出し速度を従来の30fpsから90fpsに引き上げたことで高速化を実現した。なお、ライブビュー時のフレームレートはGRが60fps、前モデルが22fpsとなっている。

銀塩のGR1と同サイズを実現した。
レスポンスの高速化も図っている。
35mm判換算で35mm相当の画角になるクロップモードを搭載。約1,000万画素で撮影できる。「2焦点カメラのようにつかってもらえる機能」(同社)
インターバル合成もより高画質で記録できるようになったという。
新エフェクト「レトロ」と「ハイキー」を搭載した。
フルHD動画にもエフェクトを適用可能。
フォーカスアシスト機能なども搭載した。
カメラ内RAW現像にも対応。
各カスタマイズ機能もより充実させた。
Eye-Fiを利用したスマートフォン連携機能を新搭載している。
本体横の絞りプレビューボタンで転送画面を呼び出せるのが特徴。
専用ボタンでEye-Fiの転送画面が呼び出せるカメラは初めてだという。
選択して転送したところ。1枚のほか、カメラのサムネイルから20枚までを選択して転送できる。

 野口氏は、「APS-C機で世界最小だが、GRはそうした表面的な数字競争で勝った負けたではなく、きちんとものを作るという考えでやっている。細部のこだわりを伝えていきたい」と述べた。

 なお、ペンタックスとリコーというブランドの使い分けについては、「従来からの『レンズ交換式はペンタックスで、高級コンパクトはリコーで』という考え方に変わりは無い。将来的にはそうなっていくと考えている」(野口氏)とした。なお「GXR」の今後の展開につては、「何も決まっていない」(野口氏)と答えるにとどまった。

各カスタマイズサービスも予定しているという。
カスタマイズの参考展示。
キャンペーンでもらえるアイテム。
トークライブも実施する。
カメラをモチーフに取り入れた腕時計も限定発売する
リコーは1962年に時計を発売。現在はグループのリコーエレメックスが手がけている。
GRモデル。ケースはチタン製。バンドは鹿革で「腕に良くフィットする」(同社)という。
Kモデル。ケースとバンドはステンレス製。よく見ると秒針の後ろがKのロゴになっている。
LEDライト機能も付いており、点滅させることもできる。

「暗がりでもスカッと撮れる」と森山大道氏

 発表会にはゲストとして写真家の森山大道氏が登場した。メーカーのイベントには初めて参加したという森山氏は、すでにGRの試作機を使用中。同氏は、「シャッターレスポンスが速くて良い。暗がりがスカッと撮れるのがずいぶん違う。僕のように都市をスナップするものにはうれしい」と話した。

登壇した森山大道氏(右)。

 森山氏は銀塩GRの初代からずっとGRシリーズを買って使っているという。「GRを使う一番のモーメントは、パッと手に馴染むのが体感できるところ。ファーストインプレッションのようなものでパッとくるものがある。もう50年以上ストリートスナップを撮っているが、色々使った中でGRシリーズがストリートスナップに最も適している」とした。

歴代のGRシリーズおよび、GRレンズとGRレンズ採用カメラユニット。

 森山氏は2014年1月に沖縄で大きな写真展を開催するとのことだが、5月からはその作品のために本格的にGRで沖縄を撮影するという。「小形軽量の使いやすさを沖縄のストリートでめいっぱい活かしたいと思っている」(森山氏)と期待を膨らませていた。

「この沖縄の写真展が、GRで私が撮影した大きなプリントを見てもらえる最初の機会になる」と森山氏。

(本誌:武石修)