富士フイルム、「FinePix REAL 3D」の発表会を開催

~柴咲コウさんも登場

 富士フイルムは22日、新型デジタルカメラ「FinePix REAL 3D W1」など新製品の発表会を東京ミッドタウン(東京・六本木)の富士フイルムスクウェアで開催した。会場には、イメージキャラクターを務める女優の柴咲コウさんが応援に駆けつけた。

FinePix REAL 3D W1発表会場の様子

 発表したのは、既報の通り裸眼で立体的な画像を撮影できるコンパクトデジタルカメラFinePix REAL 3D W1、立体画像の表示に対応したフォトビューワー「FinePix REAL 3D V1」および立体画像のプリントからなる「FinePix REAL 3Dシステム」と、コンパクトデジタルカメラ「FinePix F70EXR」、「FinePix J30」、「A220」。各記事の詳細は記事末の関連ページを参照されたい。ここでは、FinePix REAL 3Dを中心にお伝えする。

3Dデジタルカメラは各方面から注目

富士フイルム代表取締役兼CEO古森重隆氏

 発表会の冒頭、富士フイルム代表取締役兼CEO古森重隆氏が「これまで超高感度撮影、ワイドダイナミックレンジ、顔検出などフィルムメーカーらしい新機軸の機能を搭載したカメラを提供してきた。今回は、世界で初めてとなる立体画像を撮れるデジタルカメラを発表する」と挨拶した。

 「FinePix REAL 3D W1は、フォトキナ2008で開発発表して以来、新しい技術の提案として各方面から高い評価を受けている。3Dは、ユーザーに新しい体験をもたらす画期的な商品。当社には、独自の新技術で貢献するという理念がある。デジタルカメラで世界をリードしていく役割があるし、3Dはやっていけると考えて商品化を決断した」と自信を見せた。

 経営については、「リーマンショック以降の金融危機で経営環境が悪化している。デジタルカメラ市況も厳しい状態が続いているが、2009年秋から樋口(同電子映像事業部の樋口武氏)を事業部長とする新体制にして改革を進めている」と説明。独自技術による差別化製品の開発を進めるとともに、徹底したコスト削減を進めているという、「新体制後の成果は着々と出ている。強い経営体質にしていきたい」(古森氏)。また、「写真文化の普及拡大のために、デジタルカメラ事業を重視している。デジタルカメラに新たなイノベーションを起こすことで、写真文化に寄与していきたい」と締めくくった。


“2009年は3D元年”家庭への普及目指す

富士フイルム電子映像事業部の樋口武事業部長

 続いて、樋口事業部長が新製品の概要を説明。FinePix REAL 3Dは、「自分で撮った立体写真を立体でプリントできる。さらに、ビューワーでも見ることができるのは世界初。いい画質、いい色になった。カメラ、ビューワー、プリントの3点セットで提案したい」と意気込んだ。樋口氏は、「デジタルカメラは、人間の目のメカニズムにどんどん近づいている。目で見たままが写真になることを目指している」との開発理念を挙げた。

 FinePix REAL 3D W1の世界での販売台数については、「どれだけ売れるのか未知数だが、今後1年間で10万台を1つの目標にしている」(樋口氏)とのこと。実勢価格は6万円前後だが、開発当初は8~10万円程度を想定していたという。「普及を図るために5万円とも考えたが、膨大な開発費がかかっているため最終的に6万円前後に決めた。研究開発費を考えると、年間30万台は販売したいところ。ただ、今後作り込みが進めば、さらなるコストダウンは可能だろう」(樋口氏)。


FinePix REAL 3D W1スライドカバーを閉じたところ
カメラ、フォトビューワー、プリントをセットで訴求2009年を3D元年と位置づけ、関連製品と連携しながら普及を図る

 富士フイルムでは、2009年を3D元年と位置づけ、3Dカメラのデファクトスタンダード化を推し進めたいとしている。また、家庭のテレビでも3Dを楽しめるように、AV各社との技術提携も視野に入れるという。

 今回は、参考展示として日本ビクターの3Dディスプレイを用いたデモを実施。FinePix REAL 3D W1で撮影した画像をもとに、立体表示していた。立体視をするためには、偏光眼鏡を必要とするサイドバイサイド方式だが、ちらつきの少ない画像を見ることができた。

 展示に試用したディスプレイは、3D映画制作用スタジオのモニターなど業務用として展開している製品で、北米と欧州で既に発売済。ディスプレイは1ラインごとに左右の画像を並べており、2枚の画像をサイドバイサイド方式に並べ替えるため、現状ではPCでの並べ替え処理を必要としている。

日本ビクター製薄型ディスプレイでの3Dデモを実施偏光眼鏡を使用することで、立体視が可能

 デジタル一眼レフカメラ「FinePix S5 Pro」(2007年1月発売)の後継モデルは? との質問には、「現段階では、すぐにデジタル一眼レフカメラを商品化することは考えていない。ネオ一眼(高倍率レンズ一体型デジタルカメラ)に、デジタル一眼レフカメラの機能を持たせることは可能と考えている。今は、ネオ一眼に力を入れたい」(樋口氏)と話した。なお、米富士フイルムが現地22日に発表した高倍率機「FinePix S200EXR」は会場には無かった。

 樋口氏によると現在、生産におけるサプライチェーンのリードタイムは従来の約半分にまで短縮しつつあるという。大幅なコスト削減による“売れる値段の魅力ある製品”を矢継ぎ早に出していくとした。また、「デジタルカメラ事業はまずまず元気なので、安心して欲しい」(樋口氏)とも付け加えた。

今後は、特に市場拡大が見込まれる新興国向けの製品開発にも力を入れる方針を示した。新興国では現在デジタルカメラの普及率が10%以下となっており、各国、各地域別に好まれるデザインや仕様で展開していくとのこと。

究極のデジタルカメラの1つ

富士フイルム電子映像事業部の三ツ木秀之副事業部長

 新製品の紹介は、同電子映像事業部の三ツ木秀之副事業部長が行なった。三ツ木氏は、「FinePix REAL 3Dは『2Dの壁を越える商品』。目で見たままを追求してきた富士フイルムが提案するデジタルカメラの究極の姿の1つ」と紹介。

 三ツ木氏は、5年後には3D対応デジタルカメラが、ワールドワイドで10%程度のシェアを占めるとの予測を明らかにした。今後家庭内の3Dインフラも急速に進むのではないかとしている。今後登場する、各3D対応機器との連携も図りたいとのこと。


3D撮影のデモを実施。写真ではわからないが、実物は奥行のある立体視が肉眼でできる上部
レンズを2つ搭載するため、バッテリーと記録メディアは中央に装填する再生画面なども立体的に見えるGUIを採用
レンズユニット(片側)。同社の屈曲光学系を使用した既存のコンパクトデジタルカメラの光学系ををほぼそのまま利用しているという撮像素子
ダイキャスト性のフレームを採用した同背面から
メイン基板液晶パネル
立体映像を再生できるビューワー「FinePix REAL 3D V1」本体下のタッチバーで画像送りが可能
様々な表示に対応する
3Dプリントも展示。レンチキュラーシートを貼り合わせることで立体視が可能となる3Dプリントの仕組み
レンチキュラーシートの原理。レンチキュラーシートは、レンズを多数集めたシートで、目の視差を利用して左右の目に別々の画像を届ける

柴咲コウさんも絶賛した3D

 会場では、製品のテレビCMやカタログに登場する柴咲コウさんが登壇。柴咲さんが出演する新作CMも公開した。

FinePix REAL 3D W1を持つ柴崎コウさん柴咲さん(左)には富士フイルムからFinePix REAL 3D W1がプレゼントされた。右は古森社長
FinePix REAL 3D W1を手にする柴咲さん。「実際に撮影してみてもおもしろいですし、個人が所有してプリントもできるのは凄いことだと思います」来場者に配布した柴崎コウさんを被写体にした3Dのサンプルプリント。「飛び出てますねー。私が(笑)」
3Dのサンプルプリント

 柴咲さんは、「(FinePix F70EXRの)新CMではミニーちゃんと競演できたのがうれしかったです。夜景や花火などもキレイに撮れました。ストロボもいらないくらいです」と絶賛。また、「FinePix REAL 3D W1を試しながら、写真撮る前から3Dなんですね」と驚いた様子だった。柴咲さんはステージから報道陣を撮影し、「みんな立体に見えます。凄いですね」と感激していた。

ディズニーリゾートで撮影した新CMも公開した
発表会の会場は東京ミッドタウンの富士フイルムスクウェア。


(本誌:武石修)

2009/7/22 20:46