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キヤノンがスマホ用マルチアングル配信アプリを公開した理由
PCなしで複数カメラの映像を配信 将来的にはキヤノン製カメラにも対応
2025年1月21日 10:30
キヤノンは1月20日、ライブ配信用のiOSアプリ「Live Switcher Mobile」(以下、LSM)をリリースした。iOS 16/17/18およびiPadOS 16/17/18に対応する。Android版のリリースも検討するとしている。
最大3台までのiPhoneやiPadを使って、マルチアングルでのライブ配信を行うアプリ。基本利用は無料で、機能を向上させた月額2,500円の有料版も用意する。
マルチアングル配信の需要に対応
ライブ配信市場がコロナ禍後も拡大を続けており、同社でも大きな市場だと認識しているという。ライブ配信はカメラ(スマートフォン)1台を使った「1カメ」が多いが、配信者からはカメラを複数台使ってのアングルの切り換えや、配信者を子画面で映すピクチャーインピクチャーへの需要が多く、今回簡単にマルチアングルを実現できるアプリを提供することにしたという。
マルチアングルの例としては、商品紹介動画で商品のアップ、全身、手元といった複数のアングルで撮影したいという需要があるという。また、「色々なアングルがあった方が視聴数が多い」との配信者の声もあるそうだ。
マルチアングル配信はこれまで、カメラやスイッチャー、PCといった機材が必要で、コスト面やシステムを組むスキルの面で個人ではハードルが高かった。今回、アプリのインストールだけでマルチアングル配信を実現できるため、すでにライブ配信を行っている人や、これからライブ配信をしようと考えているユーザーがターゲットになるという。
アングルの自動切り替え機能も搭載
LSMアプリを配信に使いたい全ての端末にインストールして、同一のWi-Fiに接続して使用する。配信用のメイン端末以外は、カメラとして使用する。アプリのガイドに従って接続を行うとメイン端末で全ての端末の映像スイッチングができる。
ピクチャーインピクチャーは、主画面に対して子画面を1つまで挿入できる。また、好きなテキストを打ち込んでテロップとして表示することもできる。
スイッチングは8/12/16/20秒を指定して、自動でローテーションすることも可能。ハンズフリーでの自動カメラ切り換えが実現する。
有料版ではフォトアプリから画像を読み込んで、重ねることもできる。アプリには写真やテキストなど50の素材を読み込め、そのうち2つを画面に出せる。後から選択した素材が最前面に常時映されるレイヤー構成を持っている。
YouTubeとFacebookではコメントの表示も可能となっている。YouTubeのスーパーチャット表示は一部非対応となる。また、これら以外のプラットフォームでもライブ配信は可能だがコメント表示機能は利用できない。
端末のキャプチャーをミラーリングして配信もできるため、ゲーム実況配信にも使える。ゲーム配信はこれまでPCが一般的だったそうだが、配信者のピクチャーインピクチャーを入れての配信が簡単に行える。
音声のミキシングも可能で、ゲーム端末の音とプレーヤーの話し声を配信可能だ。
LSMには録画機能も搭載されている。
有料版の機能は?
有料版では広告が非表示になるほか、ピクチャーインピクチャーのサイズと位置の変更が可能になる。また先にも記したとおり端末のフォトアプリにある写真などのオーバーレイができるようになる。
加えて、画面に表示されているアプリの名称とロゴの非表示に対応する。画面が見えづらいといった問題が解消する。さらに、解像度のHDとFHDの切り換えができるようになる。
有料版のサブスクリプションは年間にすると3万円とアプリとしては高額になるが、同様の機能を持つアプリも少ないとのことで、スイッチャーといった機材を揃える場合の金額を参考にした価格設定という。ただ、無料版でもほとんどの機能が使えるため、まずはそちらを使ってほしいとのことだ。
将来は同社製カメラとの連携も
今回はカメラがスマートフォンということで、カメラメーカーの同社が出すアプリとしては疑問もあったが、今後は同社製カメラとの連携を進めるアップデートを行う方向性を明らかにしている。
例えば3台のカメラのうち1台をミラーレスカメラにしてもらうことで、被写界深度の浅いスマートフォンとは違った見え方の映像を配信するといったケースを考えているそうだ。
なお、LSMはRTMPプロトコルに対応した外部カメラ(主にネットワークカメラ)にも対応しているが、他社製品は動作保証外になる。