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カメラレンズの超薄型化にも期待…CEATEC 2024で「メタレンズ」が展示
2024年10月16日 11:36
千葉・幕張メッセで開幕したCEATEC 2024の会場、ネクスティ エレクトロニクスのブース内で、オプトルがメタレンズを出展していた。
メタレンズはキヤノンやSamsungなども取り組む新たな光学技術で、レンズの大幅な薄型化が期待できる。
ただ、技術的には課題もあり、カメラレンズとして利用できるようになるのは当面先になるとの話だった。
メタレンズは、平面に柱状のレンズを並べることで、一般的なレンズのような効果を得られる仕組み。オプトルのブースでは、説明員いわく「国内最大級」という30mm角のメタレンズを展示。この中には厚み2μmのレンズの柱が60億本あり、これを1mm厚のガラス上に並べている。可視光線(360~400nm)の光を集光できるようになっているという。
説明員によれば、メガネのレンズだと、例えば焦点距離100mmのもので5mm程度の厚みになるとのことで、圧倒的な薄さになる。こうした薄型化がメタレンズの最大のメリットだ。
このクラスになると、例えば2μm角で25本の柱が並んでおり、光の波長よりも小さいので光学顕微鏡だと柱が見えないそうだ。
説明員によると、この柱の高さや配置によって「光の波面の解を描いている」のであり、例えば「3枚のレンズを使った時の波面」をそのままメタレンズ上に描くことで、3枚のレンズを再現できるのだという。
解像度に関しては通常のレンズと同等だとしており、収差も補正されている。通常であれば複数の非球面レンズなどを組み合わせてレンズ収差などを補正するが、これも1枚のメタレンズで対応できるため、レンズユニット全体の薄型化も可能だという。
ただ、原理的には回折現象を用いているため、色のにじみが発生する。回折光学による物理現象であることから、このにじみをどのように対処するかが課題となる。
こうしたことから、ブースの担当者が「最も相性がいい」としているのはLiDARだということで、すでに設計も行っているという。
とはいえ、カメラのレンズとしての可能性もあり、いかに色収差を解消するか、そのために光の利用効率の低下をどのように回避するか、といった問題があるという。カメラでは後段のデジタル処理を活用する方法もあるそうだ。
カメラレンズ向けでは、メタレンズに加えて複数のガラスを活用することで、色収差を抑えつつ、これまでのガラス枚数を減らしてレンズの薄型化・小型化が図れるのではないか、というのが担当者の見込みだ。どこまで減らせるかによってメタレンズのメリットが生かせるかどうかが決まるようだ。特に非球面レンズは減らせるのではないか、という。
コスト面で言えば、現状はスマートフォンのカメラのような小型レンズの価格はだいぶ安くなっているが、メタレンズは1枚のウエハーから切り出すため、小型レンズを数多く切り出す場合はコストを低廉化できる。
現状、同社のウエハーは120mm程度とのことで、大口径の大型レンズクラスになると1ウエハーで1枚のレンズしか取れずに高額になる、ということはあるようだ。そうしたコスト面を無視すれば、交換レンズクラスの大型サイズでの利用も可能だという。
LiDARやカメラレンズ以外では、AR/VRグラス向けの展開も考えられるという。光利用効率を変えることで「通常は透明なガラスが、特定の光だけは曲げる」という状況になり、それを網膜に向けることで眼前に映像が表示できる。
通常のメガネに対しても、メタレンズは波面を変えることで1枚のレンズ内で焦点距離を変えられるため、薄型のレンズで見る角度によって遠近両用にできるといった用途もあるそうだ。
同社としてはすでに量産体制を確立しており、このCEATECでの発表以降、市場への展開を図っていきたい考えだ。今後はさらに薄型化を図るとともに、カメラレンズなど幅広い用途への応用を目指して進めていく意向としている。