ニュース

ソニーのCMOSイメージセンサー、過去6年間で約1.5兆円の設備投資

ビジネスの軸足を“クリエイション”に

ソニーグループ株式会社本社

ソニーグループ株式会社は5月23日(木)、2024年度経営方針説明会を開催。同社が供給する半導体(CMOSイメージセンサー)についても言及があり、代表執行役会長CEOの吉田憲一郎氏は、過去6年間で約1.5兆円の設備投資を実施したと発表した。

ビジネスの軸足を“クリエイション”に

ソニーグループのPurpose(存在意義)は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というもの。吉田氏によると、近年はゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画など人の心を動かすエンタテインメント事業に力を入れており、それらの事業がグループの売上高の約6割を占めるまでになってきたという。

ソニーグループ株式会社代表執行役会長CEO・吉田憲一郎氏

そうしたエンタテインメント事業への注力に加え、同社が取り組んできたのが「コンテンツ」「プロダクツ&サービス」「半導体(CMOSイメージセンサー)」の3つのビジネスレイヤーにおける“クリエイションシフト”。ビジネスの軸足をクリエイション側にシフトしてきた。

例えば「コンテンツ」に関しては、2018年のEMI Music Publishingの買収を起点に、6年間で約1.5兆円を投資してコンテンツクリエイションを強化してきた。2021年にはアニメに特化したDTC(Direct-to-Consumer)サービス「Crunchyroll」を買収。日本のアニメを世界に届けることで、アニメクリエイターコミュニティへの貢献を目指してきた。

「プロダクツ&サービス」の領域では、同社がクリエイターとともにエンタテインメントを創造することに注力。2023年度は、この領域における営業利益の8割以上がクリエイションに関わるビジネス(イメージング、スポーツ、バーチャルプロダクション、プロオーディオ等)から創出されたという。

そして「半導体(CMOSイメージセンサー)」。これはクリエイターをはじめ、世界中のスマートフォンユーザーに至るまで多くの人々のクリエイションを支えるものであるとして、同社は過去6年間で約1.5兆円の設備投資をしてきた。また、同社が新たなエンタテインメント空間と位置付けている「モビリティ」の安全への貢献など、その使途を発展させていく考えだという。

キーワードは「リアルタイム」

「クリエイティビティは人に宿る。人は今という時間を生きている」(吉田氏)

吉田氏は、CMOSイメージセンサーやゲームエンジンといったデバイスを、「リアルタイム」に活用するクリエイションテクノロジーに注力していると説明した。

その代表例として紹介されたのが、今年1月に発売したミラーレスカメラ「α9 III」。全画素を同時に読み出すことで、高速に動く被写体でも歪みなく撮影できることを特徴としたグローバルシャッター方式を採用しており、瞬間を捉えるテクノロジーとしてまさに「究極のリアルタイム技術を体現」したモデルであると表現した。

会場に展示されていた「α9 III」
「α9 III」のCMOSイメージセンサー(左)とAIプロセッシングユニット(右)

また5G対応ポータブルデータトランスミッター「PDT-FP1」は、撮影現場からのリアルタイムでの素材転送により、迅速な報道、制作を可能にしている。同社のリアルタイム技術が、とくにスポーツの分野において、その感動を世界に届けることに貢献しているのだという。

さらに同社が重要視しているのが、画像の「真正性(Authenticity)」だ。撮影者およびクリエイターが、現実世界をありのままに捉える意義は大きいのだと吉田氏。カメラで撮影したものが、本当に実物の被写体であるのか。こうした画像の真正性の検証に、CMOSイメージセンサーが生かされているのだそうだ。

クリエイションの領域で重要な役割を果たすようになってきたのが、ゲームエンジンであると吉田氏は続ける。近年はゲームエンジンが映像コンテンツのクリエイション技術として進化しており、例えばソニーが出資しているEpic GamesのUnreal Engineは、バーチャルプロダクションや3Dコンテンツ制作など、様々なクリエイションのプロセスに活用されているという。

「クリエイティビティは人に宿ります。我々は、今後もテクノロジーを通じて、人々のクリエイティビティに貢献していきます」(吉田氏)

過去6年間、クリエイションを強化する取り組みを行ってきたソニーグループ。今この瞬間、というリアルタイムを今後も大切にしていきたいと、吉田氏は意気込みを語った。

本誌:宮本義朗