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Vlogカメラの共有で生まれる市場……中高生の「PowerShot V10」マーケティングプラン、最終プレゼンが実施

東京・品川のキヤノンSタワーで7月22日、中高生によるビジネスコンテスト「キヤノン"PowerShot V10"プロジェクト」の最終プレゼンテーションが実施された。

6月発売のVlogカメラ「PowerShot V10」(以下V10)を用いた教育プログラム。プロジェクト参加校の生徒が、Z世代に向けたV10のマーケティングプランを発案し、プラン内容に合わせたイメージムービーを制作、プレゼンするという内容だ。

中高生が考える「Vlogカメラのマーケティングプラン」

スマートフォンが最初の撮影体験となっている多くのZ世代に向けて、Z世代自身が考える映像の体験価値を知ることで、近い将来における映像価値の提案に役立てるというのがキヤノンの開催意図になる。

イメージムービーの制作にはV10を使用。参加校の生徒は5月下旬から7月の最終プレゼンに向けて、約2カ月間にわたり準備を進めてきた。参加校は田園調布学園、富士見中学高等学校、逗子開成中学校・高等学校の3校。

最終プレゼンは、各チームが順番に会場前方の演台に立って自由に行なう形式。評価軸は「マーケティングプラン」と「動画」の2つ。前者については論理性・実現性・独創性の3項目、後者は映像表現力とストーリー構成力の2項目を評価する。

参加チームには評価に応じて3位までの順位がつけられ、1位にはV10を2台、2位にV10を1台、3位には単眼鏡型デジタルカメラの「PowerShot ZOOM」1台が贈られる。

審査員としては、キヤノン株式会社からイメージコミュニケーション事業本部長の小林嗣尚氏、同課長の早川香奈子氏、同課の大辻聡史氏、キヤノンマーケティングジャパン株式会社からカメラマーケティング部長の萩原武氏、同課長の阿部俊介氏、同課の島田正太氏、杉森友貴氏、ジェイアール東日本企画からクリエイティブディレクターの榎本聖之氏が参加した。

各参加チームとも、それぞれの視点から個性的な提案を行なっていた
6月の中間プレゼンのフィードバックから内容をブラッシュアップして最終プレゼンに臨む

PowerShot V10でなければできないことは何か

各チームとも最終プレゼンに先立ち6月に中間プレゼンをオンラインで実施しており、中間プレゼンのフィードバックからプレゼンの内容と発表手法を仕上げてきたという。

各チームのプレゼンは、一般に認知されているZ世代の特性をV10の機能や形態に絡めてマーケティングに結びつけたストレートなものから、授業への活用、推し活、ペットなど身近なトピックを軸に、アプリやサービスの企画を提案するものまでバラエティに富んだ内容となっていた。

いずれのチームも様々な視点からマーケティングプランを提案していたが、おおむね共通していたのは「V10でなければできないこと」と「スマートフォンカメラとの違い」に言及していたこと。中でも「個人情報を持たないカメラ」として、カメラ自体をグループや組織の単位でシェアして使う発想のプレゼンが複数あったのが印象的だった。

最終プレゼンにおいて1位になった富士見中学校高等学校第4(F4)チームのプレゼンでは、V10を交換日記のように使う「コミュカメ」を提案した。

毎日会って会話している友達が相手の交換日記であっても、紙媒体である交換日記の中にしかないコミュニケーションがあったことを発想の出発点とし、一つのコミュニティの中でV10を共有することで、交換日記の「書くコミュニケーション」と同様に「撮るコミュニケーション」の形で思い出を残すコンセプト。ここではデータを送受信するのではなく、友人と一緒に写真を見返しながら撮影時のエピソードを振り返る"Face to Face"の楽しさもあるとしている。

F4チームの発表。コミュニティ/グループ内でカメラを交換日記のように使う「コミュカメ」を提案した
ほかのチームでもカメラ自体を直接シェアして使う発想がみられた
1位を獲得した富士見中学高等学校F4チーム

F4チームの審査を担当した阿部氏は「オンラインのコミュニケーションが普及する中で、オフラインでの対話に価値を感じてくれたことはうれしいし、メーカーとしても今一度オフラインの価値に着目すべきことに気づかせてもらいました」と評価した。

早川氏は「オンラインで画像を共有するより、カメラを直接共有した方が楽じゃん、という発想が新鮮。プレゼンもしっかりメッセージが伝わってくるものに仕上がっていたので、マーケティングを意識してくださったことを感じました」と話した。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 カメラマーケティング部 課長の阿部俊介氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業部 課長の早川香奈子氏

同世代から見て「使ってみたい」と思えるような映像を

今回のプレゼンをもって、約2カ月間にわたって実施した本プログラムは終了した。1位を獲得したF4チームに、今回のプログラムに参加した感想を聞いた。

——動画を作るにあたってこだわったポイントはありますか?

「私達と同じくらいの世代の人が見て、自分もV10を使ってみたいと思えるような、楽しさが伝わる映像を目指しました。動画を撮るにあたっては、まずいろんな機能を試してみようと思って、カラーフィルターを使ってみたり、アングルを工夫してみたり。できるだけ編集やテロップも少なくして、ありのままの楽しさが伝わるようにしています」

——この2カ月間、V10を使ってみて、普段使っているスマートフォンと比べて印象に残ったところはありますか?

「初めてスマートフォン以外のカメラとしてV10を使って思ったことは、V10は『みんなで1つ』を共有できる温かいもの、ということでした。これに対してスマートフォンは『1人1つ』のとても個人的なものというイメージですね」

——今回の授業を通して、キヤノンという企業に対してどのようなイメージを持ちましたか?

「中間や最終のプレゼンで、発表の良いところを見つけて褒めていただけたところがうれしかったです。正直、厳しいご意見をいただくことも覚悟していたのですが、その逆に、こちらが気づいてほしいところに着目していただけてうれしいです」

1位のF4チームにはPowerShot V10が2台贈呈された
参加者と関係者の記念撮影
関根慎一