イベントレポート

今だからこそ写真を贈ろう。エプソン×伊東屋コラボのワークショップに参加。フォトカードをコダワリの紙で手作り

エプソン販売株式会社と銀座に本店を置く文具専門店伊東屋(株式会社伊東屋)の2社がコラボレーションしたワークショップイベントが去る9月に開催されました。少し間があいてしまいましたが、イベントでの気づきや面白さを改めてお伝えしていければと思います。

今だからこそ写真を贈ろう

9月30日に緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が解除されて後、東京都をはじめ全国各地の新型コロナウィルス感染症の感染者数の低下が連日報じられています。が、これから第6波がくるとの分析も報じられるなど、まだまだ同感染症への警戒が続いています。

親しい人々との交流はもとより郷里へ帰ることも自粛が続いている昨今、今やWebを利用して画面越しに交流する方法は、ビジネス・パーソナルともに当たり前の日常になりました。そうした状況だからこそ家で過ごす時間を大切にし、また写真を普段会えない人や親しい人に贈ることが見直されるようにもなってきています。

今回、エプソン販売と伊東屋の一見すると無関係に思える両社がコラボレーションワークショップを開催した背景にも、こうした「人とのつながりを大切にしたい」という想いがあるのでしょう。まだまだ様々な活動を自粛しなければならない今だからこそ、「写真を贈りあう」という文化を両社は提案してくれています。

ワークショップの内容は?

ワークショップは内容別に2種類の講座が開かれました。1つ目は「写真を使ったペーパークラフトの世界:お部屋を彩るスクラップブッキングを作ろう!!~」と題して、伊東屋ペーパークラフト専門フロアPapiearium(パピエリウム)のオリジナルキットを用いてL判写真2枚が入るカードを手作りしようというものです。

2つ目の講座タイトルは「写真を使ったペーパークラフトの世界:大切な人へ手作りカードを送ろう!!」。こちらもL判写真が入るカードを手作りする内容ですが、少し手のこんだ工夫を盛り込んだギミックカード(仕掛けカード)をつくろう、という内容でした。

ワークショップで講師を務めた木村麻実さん(銀座 伊東屋 本店 パピエリウム)

両講座は昨今の状況を鑑みてオンライン形式で開講されました。アーカイブも配信されるなど、繰り返し見てアイデアやテクニックを学ぶことができる構成となっていたこともポイントです。

開催当日の配信では講師をつとめた伊東屋 Papieariumの木村麻実さんが作業手順を丁寧に解説しながら、作業時のポイントや使用する道具の特徴、伊東屋ならではの紙へのこだわりポイントを披露。特にアシッドフリーペーパーを使用するなど、長期にわたって楽しんだり保管できる紙を使用する利点も語られました。

伊東屋 Papieariumとは

銀座 伊東屋 G.Itoya8階にある売場スペース。世界各国の紙を取り揃えているほか、今回のようなワークショップイベントも定期的に開催している。また、YouTubeの公式チャンネルでも紙やスタンプなどのツール情報を紹介。手作りカードに関するガイドなども公開している。

実際に参加して作ってみました

ワークショップで使用する洋紙や特殊な道具はキットパッケージで参加者のもとに届けられました。両方のワークショップに参加してみましたが、ここではギミックカードの模様についてお伝えしていきたいと思います。

今回は木村さんが手にしているギミックカードをつくります

ワークショップはどちらも参加費が有料となっていましたが、パッケージを開けてみて思わず納得。使用する洋紙のほかにもペーパートリマーやエンボスペンなど、普段の生活では中々使用する機会が少ない、ちょっと特殊な道具が同梱されていました。道具類は一度揃えてしまえば、長く使えるものですから、ハウツーも含めて教えてもらえることを考えると、持ち帰ることができる内容が盛り沢山のワークショップだといえそうです。

キットにエプソンの写真用紙(光沢・L判)が同梱されているところもコラボならではのポイント。他にはテープ糊なども入っていました。道具は洋紙・用紙を含めてほぼ揃っていたこともあり、参加者側で用意が必要だったものといえば、ハサミやカッターくらい。まさに至れり尽せりな内容でした。

キットをひろげたところ。必要な道具が揃っています

キットの中でちょっと特殊な道具でもあるペーパートリマー。あまり馴染みのない道具ということもあり、まず使い方のレクチャーから講座はスタートしました。

楽しんで手を動かそう

進行は洋紙のカットと貼り合わせがメイン。要所では作業時の注意点や、ミスしてしまった時の回復の仕方なども丁寧にレクチャーしてくれた木村さん。工程の説明はとてもスムーズで、手元の作業スピードにあわせるかのようにゆったりと進んでいきました。焦って作業しなくても十分に追いつけるスピード感はありがたいなと実感させられます。

紙のカット時に手がブレてしまったりすることもあり、一瞬ドキリとしてしまうシーンがありましたが、それを先回りするかのように「大丈夫ですよ」と言われる安心感は、リアルのワークショップさながら。実は見えているのでは? なんて思わされるシーンもあり、そっちのほうがドキリとしてしまうような場面も(笑)。

そうこうする内に全ての素材が揃いました。あとは各パーツをつないでいく作業です。最近では手を動かす機会がぐっと減りましたが、紙の本をつくったりプラモデルをつくっていた時の感覚が蘇り、久しぶりに創作の楽しさを手から実感。撮影とは別の感覚は新しい刺激ももたらしてくれます。

形になってきた

切り出したパーツを貼り合わせていきます。1枚でも厚みのある洋紙を使用していることもありハリとコシが感じられます。フォトカードとしても十分な質感がありますが、これらを貼り合わせていくと、また印象が変わってきますし、強度面でもよりしっかりしたものになっていくことが実感できました。

「ギミックカード」の肝となっている表面の仕掛けを仕上げていきます。「ベロ」の役割を果たすパーツにパタパタ動くかわいらしいカードを貼っていきます。詳細な仕組みまで解説することはしませんが、やはり1枚の紙が立体物として仕上がっていく様子は、自身で手を動かしていても感動があります。

パタパタが完成したら、表紙部分の仕上げにかかります。立体シールや洋紙にあしらわれた柄をいかして装飾。グッと賑やかな仕上がりになりました。

筆者の手元のカードもほぼ完成。見ていると難しそうに見えるギミックですが、実際に手を動かしていくと、意外と簡単であることに気づきます。トランプの部分をプリントに変えても面白そうです。

このパタパタギミックを活用した応用例の紹介もありました。贈り物が増えるシーズンに突入しますので、こうしたアイデアカードを添えてみるのも楽しそうです。

中面はフォトフレームとメッセージカードに

中面も仕上げていきます。カードは右側がメッセージが記入できる無地の仕様に、左側にL判写真をセットできるようなフレームに仕上げていきます。フォトフレーム部分は、ここでも紙のパーツを使って写真1枚分が入る「ゲタ」をはかせます。単にフレーム枠を貼りつけるよりも、写真の出し入れがしやすくなる加工。こうしたアイデアひとつとっても学びがあります。

完成した中面がこちら。右側もフレームで仕上げて見開きで成立する写真の組み合わせを考えてみるのも面白いかもしれません。

L判でプリントした写真をセットしてみたところ。スムーズにひっかかりなくセットできました。プリント用紙に厚みがあるものを使いたい場合は、ゲタの厚みを調整することで対応できそうです

プリントも手軽にできる

昨今では多くのプリンターがスマートフォンからの操作に対応するようになってきており、パソコンやSDカードなどを用いることなくプリントが楽しめるようになってきています。

エプソンでもスマートフォンアプリを展開。写真のほか文書や地図をプリントしたり、スキャンやコピー操作も制御できる「Epson iPrint」やスマートフォンをプリンターのリモコンのように使うことができる「Epson Smart Panel」などがあります。数ステップでプリントができるため、スマートフォンにたくさんの写真がたまっているというユーザーも便利に使うことができそうです。

好みの写真をプリントしたらフレームにセット。メッセージ欄にプリントを貼ったりしても賑やかな中面になりそうです。

筆者の手元のカードも完成。ちょっと贅沢なグリーティングカードが少しの手間で完成することが実感できました。好きな洋紙・用紙はたくさんありますので、これらを用いたカードづくりが今後はかどりそうな予感です。

感想をいただきました

オンラインで作業を伴うワークショップを開催するという今回のイベント。進行はとてもスムーズでしたが、その舞台裏を考えると、相当の調整があったことだろうと想像されます。実際に講師をつとめた木村さんにワークショップ後の感想を聞いてみました。

――ワークショップを終えてみて、全体のご感想をお聞かせいただけますか?

これまでは銀座の店舗で受講者の方を前に、リアルでワークショップを担当していましたが、オンラインとなった今回も意外とリアルのワークショップと同じように進めることができました。オンラインならではのポイントとしては、チャットで反応があるというのも面白く、またありがたいものでした。一方通行になってしまいがちなので、そうした不安はありましたが、このような双方向性が感じられたところも楽しかったです。

――リアル店舗での違いというと?

今回はオンラインでの配信ということでしたので「作業手順などの工程をどのように伝えていくか」の準備が大変でした。直接参加者の方の手元が見えるわけではありませんでしたので、順番通りにやっていくと完成する工程を考えていきました。

――今回は材料や道具一式がセットになっていましたが、様々な紙での創意工夫に想像がひろがりました。

そうですね。今回の講座を通じて参加者の方には「こういう材料もある」ということを知っていただけたのではないかと思います。パピエリウムの実店舗の様子もお伝えさせていただきましたが、世界には国内も含めて様々な紙があります。そうした豊かな紙の世界についても、広めることができていたら嬉しいですね。

――今回はエプソンとのコラボレーションイベントでした。

普段は実店舗でワークショップを開催しているのですが、オンラインでの実施となると伊東屋だけでは厳しいものがありましたので、今回のコラボレーションはとてもありがたい取り組みとなりました。小売り業とメーカーとのコラボレーションという点も新鮮でしたし、店舗で実施しているワークショップに参加してくださってるお客様以外の方にも参加いただくことができました。

それにしても驚いたのはエプソンさんの配信技術です。とてもオリジナルのものとは思えないほどに完成されていて、実際の配信計画策定も、私自身とても勉強になりました。メーカーといっても、その仕事内容は製品をつくり販売しているだけでなく、様々な分野にわたっているということは、私自身新しい気づきでしたし、そうしたメーカーの皆さんと協力できたことが嬉しかったです。

――今後やってみたいことはありますか?

写真を趣味にしている方に「まだまだ伝えられることがあるのでは」と思っています。例えばアルバムのデザインでしたり、スクラップブッキングなどがあります。今回のワークショップでもデザインに関する質問もありましたので、そうした部分もフォローしながら手作りの楽しさや、写真を飾ることを提案していきたいです。

――伝え残していることはありますか?

今回のワークショップにご参加いただきました皆様にこの場を借りて改めてお礼を申しあげます。伊東屋のことをあまりご存じでない方もいらっしゃったかもしませんが、本当にたくさんの方にご参加頂くことが叶いました。「楽しかった」という声もお寄せ頂き、とても嬉しかったです。もし何か体験したいという声がございましたら、また皆様とご一緒できる時間を、ぜひつくっていきたいと思っています。

本誌:宮澤孝周