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パナソニックの新拠点「LUMIX BASE TOKYO」内覧レポート

東京・青山に5月30日オープン クリエイターの“基地“、共創の“素地“に

山根洋介氏(パナソニック株式会社 イメージングビジネス ユニット長)。施設入り口にて

パナソニックのカメラ製品に関する発信拠点「LUMIX BASE TOKYO」が東京・青山で5月30日(日)に装いも新たにオープンする。オープンに先立ち新拠点のコンセプトや、南青山の地で発信していく理由を聞く機会を得たので、施設の模様とともにお伝えしていきたい。

クリエイターと共につくりあげていく場所にしたい

「クリエイターがメーカーのショールームで体験したいこととは何か」。これが新しいショールームの出発点となっている。メーカーショールームが担う役割といえば、最新の製品に常に触れることや、質問や疑問に的確に答えてもらえる、というところにあるだろう。だが、LUMIX BASE TOKYOではこれにとどまらない価値や体験を提供していく施設となることを目指している。

LUMIX事業の顔役たる山根洋介氏(パナソニック株式会社 イメージングビジネス ユニット長)は、今、カメラの世界は静止画だけでなく動画にも拡がってきているとして、老若男女、多くの人が撮影を楽しむ時代になってきていると指摘。そうしたひろがりを支えていくという点からも、新拠点を、新たな映像文化をいっしょにつくっていく場にしていきたいのだと説明した。

では、どのような人々を施設利用者として想定しているのだろうか。そうした疑問に対して、同施設では主な施設利用者像を「写真や映像で“表現”する人」としているのだという。

静止画を撮る人も、動画を撮る人も、それぞれが皆クリエイターだと考えているのだと、概要を説明してくれたスタッフは続ける。また、そうした利用者が同社が定義するLUMIXブランドのクリエイター像でもあるのだという。では、LUMIXユーザーでなければならないのか、というとそれは全く関係ないことだと考えているのだと担当者は強調する。

根幹にあるのは、あくまでもカメラはクリエイターが自身の表現したい気持ちにマッチしたものを選ぶべきだという思想だ。説明を担当してくれたスタッフは、その上でLUMIXを知ってもらえれば、と続ける。

メーカーショールームながら、自社製品を前面に押すのではなく、静止画や動画を撮るクリエイター全体に対して大きく間口を開くということが、LUMIX BASE TOKYOの根幹にある考え方となっているのだ。

なぜ青山なのか

ところで、なぜ新拠点を南青山に構えることになったのだろうか。その背景について、新拠点のマネージャーを務める坂本維賢氏(前LUMIX GINZA TOKYO・館長)は、渋谷から青山周辺には動画制作に携わるプロダクションが多く集まっていることが背景にあると説明。プロダクションが多く集まることから、自然とクリエイターも集まってきていることが、同地を移転先とした背景にあるのだと続ける。こうしたユーザーにとって利用しやすい場所とすることを、まず企図しているわけだ。

新拠点外観

また、LUMIX GINZA TOKYOでは施設スペースの都合から提供できていなかった、体験スペースの拡充も移転リニューアルの背景だったのだと明かす。LUMIX GINZA TOKYOでは、1階がショールームとしての役割を担い、2階を展示スペースとしていたが、新拠点のLUMIX BASE TOKYOではワンフロアに製品体験スペースを大きくとり、また什器等も移動可能とするなどして、フロア全体を幅広く利用していける場としてデザインしている。

このワンフロアの中に、ショールーム機能のほか、スタジオ、ギャラリー、ストア、サポート機能が集まっているのだ。

天井には一直線に伸びる照明が設置されている。この意匠は、35mm判フルサイズLUMIX Sシリーズのレンズで、マウント側上面にあしらわれている白いラインになぞらえたもの。このレンズにあしらわれている白線は「光」を表すLUMIXにあわせて「光軸」を示したデザインなのだそうだ

機材はあえて“ワンランク上”に

施設内に置かれている機材は実に多彩だ。LUMIXシリーズはもちろんだが、同拠点が掲げるクリエイター視点のショールームという考え方に賛同してくれた各社から機材提供を受けて、メーカーをまたいで様々な機材の組み合わせから、トータルで撮影や機材試用ができるようになっている。

ざっと見回しただけでも、ディスプレイはEIZO、マイクはRODEや、ゼンハイザーのものが並ぶ。ストロボではプロフォトからの協力も得ているのだそうだ。またジンバルはDJI、Edelkroneのスライダーなど、映像制作でおおよそ必要となるであろう機材が一堂に会している。

これら機材はすべてが体験可能であることはもちろんだが、そのセレクトにも、ひとつのコダワリがある。いずれの機材も、およそ10人ほどのスタッフを抱えているプロダクションを想定した規模感で取り揃えているのだというのだ。そのためクリエイターにとっても、ひとつの憧れともいえる環境とすることを狙いとしているのだという。個人レベルでは全てを取り揃えて試すことは難しい、各社フラッグシップクラスの製品を、自身の使い勝手に合うかどうか、といった目線から試せることが、大きなポイントとなっている。

クリエイター目線のショールームであること

体験型の空間どりとなっている新拠点だが、提供したいのは機材単体での体験ではなく、クリエイターのワークフロー全体としての体験にあるとしている。

照明や音を実際に確認するとなると、やはり大きなスペースが必要となる。また、ミキサーなども整えて、となると中々個人単位で試みるのは難しいというのが実情だ。そうしたクリエイターの見たい・知りたい・体験したい、といった視点に立って構成したのが、この新拠点の機材配置であり、担っていこうとしているポイントとなっている。

例えば配信設備のセッティングや各種機材の組み合わせ。カメラ以外にもパソコンやディスプレイ、マイク、三脚、照明、スライダーなど、必要な機材・あると便利な機材は盛り沢山だ。これに加えてモニタリング環境をどう構築するか、というところまで含めて考えていくと、規模はどんどん大きくなっていく。そうした点からもスタジオ環境をどう構築していくのか、また活用していくのかといった視点から、まず現状の理想に近いセッティングで見ていけるというのは、大きな魅力となってくることだろう。

配信設備のセッティング
登壇者側から見た機材セッティングの様子

ここに来れば、映像配信に関する周辺機器に関する情報も得られるということ。そして、随時開催していくというイベントなど、いつも新しい情報が得られる場所としていくこと。そうした徹底して、クリエイターの目線に立ち、総体的に自分のワークフローに合っているのかどうかを確認できる場所となっていこう、というのが新拠点の基本的なスタンスだ。クリエイターとともに創っていきたい、というのは、そうした考え方を受けてのものとなっている。

配信モニタリング環境

このほか、キャリブレーション済みのディスプレイが備えられていたり、ノートパソコンとデスクトップパソコンも用意されている。ノートパソコンには処理能力をふまえてPhotoshopやLightroomをインストール。デスクトップパソコンではマウスのDAIVシリーズを設置して、Premiere ProなどAdobe CCのコンプリートプランをインストール。映像制作用途をふまえてDaVinci Resolveも利用出来る状態で整備しているのだという。

拠点名称に込められた想い

新拠点の名称は「LUMIX BASE TOKYO」と名付けられているが、この“BASE”という呼称が施設デザインの核となっている。

説明を担当してくれたスタッフによれば、「BASE」には、クリエイターの活動拠点としての「基地」という意味と、クリエイターとともに変化し、また共に創っていくという意味での「素地」という考え方が込められているのだという。これら二つの要素をロゴや空間のデザイン、什器の仕上げに反映させていくことで、施設全体を織りあげているのだそうだ。

基地と素地、これら二つの要素から、「シンプル・むき出し」というイメージを得ていったと続けるスタッフ。そうした考え方で空間デザインを仕上げていったのだという。その言葉どおり、什器は木肌がむき出しとなっている。そうしたプレーンなデザインを採用することで、これからクリエイターとともに歩み、創っていく場であることを表現しているのだそうだ。

ブツ撮りスペースは大きな紗幕も用意。人物撮影にも応えられるとしている

プロサービスも施設内に集約

フロア奥にはプロサービスも入る。センサー清掃などには即日で対応していく体制が整っているほか、クリエイターのワークフローを止めないために、代替機等の用意もその場で対応していけるという。また地方在住者には宅配サービス等を利用して対応していく考えだとしている。製品貸し出し等のサービスも変わらずに提供していく考えだ。

施設概要

所在地

東京都港区南青山2丁目11-17 第一法規ビル1階

営業時間

11時~19時

定休日

月曜日・年末年始

本誌:宮澤孝周