ニュース

ニコン、ソフトバンクと「トラッキング光無線通信技術」実証に世界初成功

360度追尾可能 車車間通信やドローンなど市場創出に期待

ソフトバンク株式会社と株式会社ニコンは3月18日、光無線通信技術の新たな利用シーンの創出を目的とした「トラッキング光無線通信技術」の合同実証に成功したと発表した。

2台の光無線通信機が同時にそれぞれ任意の方向へ移動しながら相手を追尾し、通信が途切れないことを確認する実証実験として、世界初としている。

光通信無線は、電波障害に強く秘匿性が高い一方、光の直進性という性質から、動く物同士の通信への適用は難しいとされてきた。これが今回の実証を通じて可能となることで、安全運転支援のための車車間通信や路車間通信、無人搬送車などの産業ロボットやドローンとの通信、電波が通らない水中での無線通信などの領域で、新たな市場創出が期待されるという。

これまで電波通信は、波長の長い電波から波長の短い電波へと活用が進み、従来はレーダーなどの限定された用途で用いられてきた、極めて波長が短く光に性質が近い"ミリ波"も、5G通信では活用が進んでいる。

今後到来する6G以降の世界では、さらに波長が短く用途が限定されていた"光"の活用も期待されているという。光は電波より直進性が高く、物体を透過しない性質を持つため、見通し(LOS:Line of Sight)の確保と、通信機同士の双方向トラッキング技術が必須になる。そのためソフトバンクとニコンでは、光無線通信機同士が双方向にトラッキングし、途切れることなく通信できる技術の検討を進めてきた。

実証実験のために開発したトラッキング光無線通信機は、AI技術、画像処理技術、精密制御技術により水平方向360度、垂直方向50度の追尾性能を持つ。2台の通信機が互いに捕捉することで光軸を合わせ、それぞれが移動してもデータ通信が途切れない実証に成功したという。

今回の実証は街中を想定して安全なLED光無線通信機(通信距離100m、通信速度100Mbps)で実験したが、今後は高出力なレーザー光を用いることによる長距離化、高速化、小型化を通じた、より専門性の高い領域での市場創出を見込む。

本誌:鈴木誠