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ドイツ担当者に聞いた「ライカSL2-S」Q&Aレポート

2,400万画素の位置づけ、Mレンズとの相性など

ライカカメラジャパンは12月11日、ミラーレスカメラ「ライカSL2-S」(12月17日発売・税別60万円)の新製品発表会を実施。関係者向けのライブ配信で、ドイツ本社と中継を繋いだQ&Aセッションもあった。

冒頭、ライカカメラ社主のアンドレアス・カウフマン氏は、ロックダウン中だというオーストリアのプライベートオフィスから動画メッセージを配信。「ライカは皆さんの創造性を引き出すツールを提供することに使命を感じています」前置き、新しいツールとしてライカSL2-Sを紹介した。

ライカSL2-Sの概要

同社で写真関連製品のグローバルディレクターを務めるステファン・ダニエル氏は、ウェッツラーのライカカメラ本社から参加。ライカSL2-Sは「Two worlds. One choice.」というタグラインで、2つの世界(静止画と動画)を1台に融合するというコンセプトで訴求する。

ポイントは、写真と動画のそれぞれのモードに専用のメニューを備え、サブメニューでの誤操作などを防げるとしている点。厳選された操作子による直感的操作と、ライカSL2譲りの堅牢性(アルミ削り出しのトップカバー/ベースプレートや、IP54相当の防塵防滴など)を備えたカメラとして、写真と動画の両方を使ってビジュアルストーリーを伝える人向けの製品だと説明した。

写真では、最高感度ISO 100000(ライカSL2は最高ISO 50000)の広ダイナミックレンジとマルチショット撮影(センサーシフト+連写合成による9,600万画素記録)、動画ではC4K/4Kの両方で4:2:2 10bit記録に対応するといった特徴がある。また、来年前半には"重要なファームウェアアップデート"も予定しているという。

写真・動画のそれぞれの使用イメージ。
Capture One 21への対応もアピール。Lightroomと共に、テザー撮影が可能に。
耐環境性をアピール。
ダイナミックレンジの広さを示す作例。
マルチショットの作例では、ライカのお膝元であるドイツ・ウェッツラーの街並みも登場。
Lマウントを採用。アライアンス各社のレンズも使える。

これにより、ライカSLシステムの現行機種は「ライカSL2」(4,730万画素)とライカSL2-Sの2機種となる。これらはイメージセンサー以外の部分が共通で、アクセサリーも共用できるという。

Q&A

通訳のライカカメラAG 杢中薫氏(左)、ステファン・ダニエル氏(右)

続けて、朝8時というドイツと中継を繋ぎ、ステファン・ダニエル氏とのQ&Aセッションが行われた。質問は、配信を視聴するプレスなどの関係者から集めたもの。

——ライカSL2-Sのセンサーは他機種で採用歴がありますか?

このセンサーは、このカメラで初採用です。最新のBSI(裏面照射型)センサーのため、暗所撮影やダイナミックレンジの広さなどにメリットがあります。

——ライカSL2-Sの"S"の意味は何ですか?

新しいカメラなので、前のモデルと別の名前にしなければなりません。とはいえ、ライカSL2がベースの機種なので"SL3"にはできません。Sの意味は特に定めていませんが、"Speed"や"Sensitivity"などと考えてもらえればよいかと思います。

——ライカSL2と比べて、画素数が少ないことで写真のダイナミックレンジは変わりますか?

同じ面積を持つ35mmフルサイズセンサーで、画素数が少なく、かつ裏面照射型のため、より光を取り入れる部分が大きくなります。これに伴ってダイナミックレンジも広がりますし、暗いところでの感度が高まるようなアドバンテージもあります。

——カメラ前面の"LEICA"の文字を黒のままにした理由は何ですか?

ライカSL2との差別化を第一に考えましたが、より目立たない道具感を演出するために黒としました。これはペイントしていないのではなく、白の代わりに黒のインクを入れています。

——ライカは現在、2,400万画素という解像度をどう位置づけていますか?

2,400万画素は解像度とファイルサイズがよいバランスです。暗いところでの感度もよく、解像度的にも十分といえると思います。大きなメリットは特に動画撮影時に見られます。2,400万画素は動画と相性がよいため、よりクリーンな動画ファイルを記録できるのではないかと考えています。静止画にそこまで高い解像度を求めず、動画の記録品質を求める方には最適なカメラです。

——ライカSL2-Sと、レンジファインダーカメラ用のライカMレンズの相性はどうですか?

Mレンズを使うのにベストなのはM型のデジタルカメラです。でも2番目にベストなのはライカSL2やライカSL2-Sと言えます。

理由の1つは、カメラの前面に環境光センサーを持っていることです。Mデジタルの前面にも環境光センサーが搭載されていて、電気接点を持たないMレンズを装着しても、カメラ側で絞り値を計算できるようにしています。それに応じて、周辺光量落ちなどを補正する機能が働きます。ライカ純正のアダプターなら装着レンズを識別する6bitコードを認識できるため、正しい補正が可能です。

もう1つ重要なのは、イメージセンサー前のカバーガラスが薄く設計されていることです。フィルムカメラ用に設計された多くのMレンズは、イメージセンサー前の厚いカバーガラスによって画質を落とす可能性があります。ライカSLシリーズはこれを避ける設計になっており、この点でもMレンズの性能を最大限に生かせる設計になっています。

また、特に強調したいのは、Mレンズで動画を撮影できることです。Mレンズの描写で動画撮影を行うことは、多くのカメラマンに好まれています。これを一度試してみると、ユニークな動画が撮影できると思います。

——ライカSL2-Sは、どのような被写体に適していますか? ライカSL2とどう棲み分けますか?

撮影目的が大きなプリントやファインアート、複写などであれば、4,730万画素のライカSL2がよいと思います。一方、撮影目的がルポや日常を切り取るといったもので、撮影条件がよくなかったり、暗い場所を撮りたい場合などにはライカSL2-Sが適しているため、それぞれを使い分けられると思います。

特にライカSL2-Sは動画の性能が高く、写真と動画の性能がバランスよくなっているという点でも、動画機能を多用する方にはライカSL2-Sをおすすめします。

南雲暁彦氏のインプレッション

フォトグラファーの南雲暁彦氏(右)

Q&Aセッションに続き、ライカSL2-Sを試用したフォトグラファーの南雲暁彦氏が登壇。ライカSL2-Sの見どころを語った。

南雲氏は、ライカSL2-Sにおける暗闇の中での質感表現の良さと、それを手ブレ補正の助けにより手持ちで撮れるメリットを強調。「バッグの中では立派な大きさだけど、撮っているときはカメラの存在も忘れるぐらい集中できる」と評価した。また、撮って出しでも期待通りの画像となる可能性がとても高いことにも言及していた。

「目で見て綺麗だなと思った夕焼けをそのまま撮れる。手ブレ補正の効きも良いので、撮ってがっかりすることがほとんどない。シャッターが進む」
「カメラを操作するのでなく、写真を撮るという目的の中で一体化できる。一緒に被写体を向いてくれる」「とても高い感度だったが、いい粒子が乗った雰囲気の写真になった」
車に東京タワーを映り込ませ、東京を表現。「Lens of Tokyo」と題して展示を行う。
タワーが何本も見える。手持ちで微妙なアングルを探れるのは手ブレ補正の恩恵だという。
南雲氏はライカSL2-Sで動画制作も行った。「この車を(被写体に)選んでよかった」と感じるほど、ボディカラーの青が綺麗に出たという。
動画撮影にはアポ・ズミクロンSLレンズを使用。鏡筒デザインと開放F2のスペックが統一されたLマウントレンズ群。

南雲氏の作品は、ライカプロフェッショナルストア東京とライカ大丸心斎橋店で12月12日(土)から展示される。

12月17日追記:発表会のアーカイブ映像が公開

Leica SL2-S launch in Japan

本誌:鈴木誠