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RICOH THETA Vに機能を追加できるプラグインストアがオープン

Oculas GOなどへの接続が可能に ソースコードの公開も

RICOH THETA プラグインストア
RICOH THETA V

株式会社リコーは7月23日、全天球カメラの「THETA V」に機能追加する「RICOH THETA プラグインストア」をオープンした。PC経由でTHETA Vにインストールすることで、新たな機能を追加できる。リコーのほか、NTTドコモなどがプラグインを開発して提供しており、プラグイン開発を支援する「RICOH THETA プラグイン パートナープログラム」が一貫して展開される。

THETA Vは、4K解像度の360度動画や5.4Kの360度静止画、360度の空間音声を記録できる、THETAシリーズの最上位モデル。従来のモデルとは異なり、AndroidベースのOSを採用しており、第三者がプラグインを開発できる。これによって、スマートフォンアプリのように、プラグインをインストールすることで機能向上ができる。

プラグイン パートナープログラムは、このプラグイン開発をサポートするための取り組みで、リコーが一般向けに提供するAPIとSDKやフォーラムに加え、オンラインサポートやTHETA Vの開発者モード化(ADBロックの解除)、ストアで公開するためのプラグイン登録申請を提供する。

THETA プラグイン パートナープログラムの仕組み。
パートナープログラムの登録は無料で、API/SDKなどに加えてサポートなども受けられる。
プラグインはPCにダウンロードして、THETAアプリ経由でインストールする。
パートナーに登録する際に、デバッグ用THETA Vのシリアルナンバーを登録する必要があり、ここに登録したTHETA Vは製品の保証対象外になるそうだ。「サポートが難しくなるぐらい内部をいじれる」(同社)ためだという。

6月28日にスタートしたパートナープログラムに続いて、7月23日にストアがオープンし、これにあわせてリコーは3種類のプラグインを公開した。

「自動顔ぼかしβ版」は、撮影時に自動で顔を検出してぼかしを入れる機能。Android向けに一般に公開されている顔検出機能を利用しているそうで、「すべての顔の認識、完璧なぼかしを保証するわけではない」(同社)という。

自動顔ぼかしβ版は、不特定多数がいる場所で撮影する場合にプライバシーを保護したい場合などに利用できる。

AndroidベースのTHETA Vであるため、こうしたAndroid向けのツールが応用できることを示す意味もあるそうだ。ソースコードはGitHubにて公開されるため、これをカスタマイズして開発者が自身のプラグインに応用することも可能。

「クラウドアップロード」は、撮影した動画像をGoogleフォトにアップロードするプラグイン。スマートフォンなどを経由せず、THETA Vの無線LANを使って直接アップロードできる点が特徴。ルーターなどを経由することで、スマートフォンにいったん保存せずにアップロードが可能になる。今後、ほかのクラウドストレージにも対応させたい考えだが、これもソースコードがGitHubに公開されるので、開発者が好きなサービスに対応させるようにカスタマイズも可能。

クラウドアップロードは、スマートフォンを経由しなくてもクラウドサービスにアップロードできるので、撮影してすぐさま共有したり、バックアップしたりできる。

「無線ライブストリーミング」は、同様にルーターなどを経由して直接THETA Vからライブストリーミングができるプラグイン。従来も、PC経由でライブ配信は可能だったが、このプラグインを使えば、YouTubeを使った360度動画のライブ配信を、THETA Vとスマートフォンのテザリングだけでも行えるようになる。

PCがなくてもストリーミングが可能になる無線ライブストリーミング。

「Facebookにも対応させたい」(同社)としているが、こちらもGitHubにソースコードが公開されるので、開発者は任意のサービスに対応させるようにカスタマイズすることもできる。

パートナープログラムに登録した企業として、NTTドコモとソニーもプラグインを23日からストアで公開。ドコモが提供するのは「デバイスWebAPIプラグイン」。デバイスWebAPIは、ブラウザ経由で各種デバイスにアクセスするためのAPI仕様で、国際標準としてはOMA GotAPI仕様に準拠する。これに対応するデバイスは、それぞれの仕様の違いを意識することなく、共通するAPIでデバイスの機能にアクセスできる。

異なるデバイス間でも同じAPIで機能にアクセスできるデバイスWebAPI。これをTHETA Vにインストールすることで、ブラウザを備えたデバイスからTHETA Vの各種機能にアクセスできるようになる。

今まで、こうしたデバイスにインストールするアプリ側にデバイスWebAPIを組み込んでいたが、プラグインとしてTHETA V側にインストールするため、ほかのプラグインはこのデバイスWebAPIにアクセスすればTHETA Vを操作でき、プラグイン開発が容易になるというメリットもある

デバイスWebAPIプラグインでは、THETA VにWebブラウザ経由でアクセスしてカメラ機能を利用しての撮影の制御、ライブビューの取得、各種センサー情報などの取得が可能。これを使えば、Oculus Goやスマートフォンを使ったDaydreamデバイスなどのVR HMDでも、ブラウザ経由でTHETA Vの360度映像を見たり、撮影したりできるようになる。

Oculus GoなどとTHETA Vが接続できるようになる。
ブラウザからTHETA Vのカメラにアクセスしたところ。ライブビューを見ながら撮影もできる。

THETA VのデバイスWebAPIプラグイン経由で、HMD向けのアプリがTHETA Vにアクセスしてカメラを制御するといったことも可能。THETA Vの加速度センサーなどを使ってHMDのリモコンとして使う、といったこともできるそうだ。

ソニーが提供するのは、同社内の新規事業創出プログラムから生まれたMESH向けのプラグイン「MESH plugin for Ricoh THETA」だ。

MESHは、単一のセンサーやボタンを備えたブロックを使って簡単にIoTデバイスを作れるというもので、今回は7種類のブロックのうちリモート撮影ボタンと人感センサーの2ブロックに対応した。

プラグインをインストールすることで、2つのMESHブロックに対応する。

リモート撮影ボタンは、そのままボタンを押すとシャッターが切れて、静止画や動画を撮影できる。人感センサーは、人や動物に反応して静止画・動画を撮影したり、人が通ったときだけシャッターを切る連続写真を繋げてコマ撮り動画を作成したり、といった使い方を想定する。

このプラグインを使うと、PC用のMESHアプリがなくても2つのMESHブロックを利用できるが、MESHアプリを使うことでさらなるカスタマイズも可能だ。また、Raspberry Piを使ったMESHハブにも対応させることが可能だ。

ほかにEVERYPLACE、HoloBuilder、Everywoahという欧米の開発者がプラグインを提供。当初はこの8つのプラグインを公開するが、登録申請が次々と寄せられているそうで、日米でのワークショップなども開催して、プラグイン開発者の拡大を目指していく。

プラグインはAndroidアプリ開発者であれば容易に行えて、既存のAndroidアプリの移行も簡単に行えるという。現在は無償プラグインのみだが、今後は有償プラグインの提供にも対応していく考えだ。

ちなみに、プラグインは同時に起動できるのは1つのみで、THETA Vをプラグインモードにすると、THETAアプリから設定したプラグインが起動する。プラグイン自体の設定は、スマートフォンなどからブラウザ経由でTHETA Vにアクセスして行う。

今後リコーでは、プラグインとしてシングルレンズ撮影、タイムラプス動画撮影、スマートデバイス連携、レンズ別時間差撮影、ViewLapsといったプラグインを提供予定。このうちスマートデバイス連携は、外出先から自宅のTHETAにアクセスして制御する、スマートスピーカーのように声でTHETAを制御する、といった機能が実現できるそうだ。

また、THETA Vと同様にAndroidベースのOSを採用してプラグインが利用可能な新機種を今後さらに増やしていきたい考えも示している。

プラグインロードマップ

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。