インタビュー

新しくなったフォトブックサービス「PhotoJewel S」の魅力とは

PC版アプリが大幅リニューアル GOTO AKIさんに聞く

「PhotoJewel S」でオリジナルフォトブックを制作した写真家のGOTO AKIさん。

大切な写真を気軽にフォトブックとして残せるキヤノンのサービス「PhotoJewel S」のPC版アプリがアップデートされました。ユーザーインターフェイスを一新した上で、大幅に強化されています。

フォトブックといえば、小さい子どもを持つ母親を中心に、カジュアル層の利用が中心と思われてきました。しかし最近キヤノンのフォトブックサービスでは、カメラを愛用する男性が、自分の写真作品を愛着を持ってまとめるケースが増えているとのことです。

今回のリニューアルは、まさにそれを受けたもの。これまで「光沢紙」と「半光沢紙」の2種類だった用紙に、「ファインアート紙」と「ラスター紙」が追加されました。さらに完全に平らに開くことができる「レイフラットタイプ」を選択できるようになるなど、市販の写真集に迫るフォトブックが制作できるようになりました。自動レイアウトも進化していますし、高品質なフォトブックが作成できます。

そこで風景写真家のGOTO AKIさんに、リニューアルした「PhotoJewel S」を使ってもらい、感想をうかがいました。

GOTO AKI

1972年神奈川県川崎市生まれ。東京在住。

1993年の世界一周の旅から現在まで56カ国を巡る。総合商社で天然ガスのパイプライン輸送ビジネスに携わった後、東京綜合写真専門学校へ入学。鈴木清氏、小林のりお氏に学ぶ。1999年より写真家としての活動を開始。同年、初個展 「journey on life」(ニコンサロンJuna21)を開催。2018年「日経ナショナルジオグラフィック」誌にてキヤノン連載広告「テラ〔地球〕の声」を撮影。写真集に「LAND ESCAPES 」(traviaggio publishing 2012年)、「LAND ESCAPES - FACE -(traviaggio publishing 2015年)、「terra」(赤々舎 2019年)がある。

現在は、火山と地殻変動でうまれた日本の風景をモチーフに、地球的な時間の流れと光を織り交ぜた根源的なランドスケープの表情を継続して撮影中。時間と場所の属性を消失させた写真群は、具象と抽象の狭間を揺り動きながら、自然と人間の関係性を鑑賞者に問いかける。風景撮影にスナップ撮影の手法を持ち込んだ作品は、自然科学的な視点を内包する。

撮影:GOTO AKI
撮影:GOTO AKI
撮影:GOTO AKI

◇   ◇   ◇

市販の写真集に迫る高級感

——今回「PhotoJewel S」でフォトブックを作成いただきました。写真集を何冊も出されているGOTOさんにとって、フォトブックの魅力とはなんでしょう。

出版社を介して作る写真集と、インターネットで注文できるフォトブック、それぞれにメリットがあります。

私が写真集を作るときは「誰に見せたいか」というターゲットを設定して、作品のチョイス、並び方などを長時間かけて考えていきます。これは普段僕が撮影している作品に抽象的な写真が多く、見た瞬間「これは〇〇を撮ったんだね」と言いづらいこともあるからです。

一方フォトブックは短い時間で完成させることができるので、「写真集を作るぞ」と身構えなくても作業ができます。また、写真集を自費出版するのと比べて、1冊から注文できるので、ポートフォリオとして活用したり、少部数を知り合いにプレンゼントするなど、写真集とは違う使い方ができますね。

——とはいえGOTOさんの作った「PhotoJewel S」の完成品は厚みも重みもあり、市販の写真集に近い高級感がありますね。

はい、まず用紙の厚さに驚きました。裏打ちしたプリントのような厚みがあり、手触りも良い。新しく選べるようになったファインアート紙ということですが、これだけの仕上げをしてくれると、見る側に緊張感も生まれますね。手から伝わる感覚は大きいんです。これだけ重量と高級感があるフォトブックをプレゼントされたら嬉しいと思います。40ページというボリュームに、渡された人は作り手の本気度を感じることでしょう。

GOTO AKIさんが作ったフォトブック「EOS SCAPE」。ファインアート紙で計40ページ。表紙もしっかりした厚みがある。

——表紙もハードカバーで、高級感のある仕上がりになっています。ハードカバーにするのかソフトカバーにするのか、選ぶときの基準はなんでしょう。

作品によると思います。フワッとした花ならソフトカバーが合うかもしれませんし、都市風景や建築写真が表紙ならハードカバーの方が存在感を出せるかもしれません。今回、私はハードカバーを選びましたが、作品のテイストに合わせて選べばいいと思います。

——プリント画質はいかがでしょう。

フォトブックを手にするまで一番気にしていたのが、黒い部分——シャドウの表現力です。結果、階調をしっかりと表現しつつも緊張感のある引き締まった黒になってくれました。正直もっと浅い表現になると思っていましたから、いい意味で驚きました。

色についても満足しています。今までの「PhotoJewel S」は光沢紙と半光沢紙しかなく、ツヤ感はあるのですがその分派手な表現になってしまうのが気がかりでした。今回、新たにマット調のファインアート紙が選択できるようになっています。普段からプリントする時はファインアート紙を使っているので、細かい描写なども違和感なく、見慣れた写真という感じがします。目に優しく、ずっと見ていられる感じですね。

——PhotoJewel Sは最大60ページまで作れます。今回40ページで制作いただきましたが、写真の順番や並びについて、何か意識されましたか?

これだけの大きさでページ数も相当あるので、同じような距離感や色の写真が続かないようにすることを意識しました。写真集やフォトブックの場合、最初から順番に見るのではなく、途中のページから無造作に見始めることはけっこうあるんですよね。フォトブック全体で1曲を構成するのではなく、短い曲が集まってアルバムになっているようなイメージです。新しいアプリはレイアウトの自由度も高くサクサク動くので、直感的に気に入らなかったら入れ替えたり外したりしました。

PC版「PhotoJewel S」新アプリ
(使用作品はGOTO AKIさんのもの)

——新メニューのレイフラット仕上げのおかげで、見開きでの写真の迫力も増しました。

写真は第一印象がずっと残るので、今回のフォトブックでも見開きの裁ち落とし写真を多く配置しました。ハイアマチュアの方に見てもらいたいという想定で作ったので、インパクトを与えられる写真を大きく配置しました。

写真集やフォトブックをパラパラとめくっていると、1枚の写真を見る滞留時間は1秒もありません。どんどん流し見されるのが常ですが、それでもできれば数秒見てもらいたい。それができるのは、見た瞬間に「うわっ」と思える写真なんです。

今回からメニューに加わった「レイフラット仕上げ」は、ページを完全にフラットで開ける。もちろんノドの部分で不自然な段差がみられない。

——今回GOTOさんは、30cmスクエアというフォトブックのサイズを選ばれました。写真の大きさは、見る人にどんな影響を与えるのでしょうか? 大きければというわけでもないように思えますが……

写真に限らず、絵画や本などにも「鑑賞距離」というものがあります。写真展でも写真集でも、もちろんフォトブックでも、鑑賞距離はものすごく重視しますね。大きな写真を遠くから見ていると迫力のある写真に感じても、近づきすぎると解像度が荒い部分に目がいってしまう。その逆も然りです。

本の場合、基本的に適正な鑑賞距離よりも近い30〜40cm程度の距離で観る人がほとんどなので、30cmサイズの写真は強い印象を与えがちです。ただ、その状態で大きくインパクトのある写真が続いてしまうと、見ている方は圧迫感を覚えて疲れてしまうんです。そのため、レイアウトする時には余白のあるページや写真を少し小さめに配置するページがあった方が良いでしょう。

——見開きで大きく見せる写真と、余白を残すページに置く写真、選定のポイントはありますか?

「自分の目の動きを本の中でも再現する」ことを意識しています。僕は撮影の時は全身を目にしているような感覚で、落ち着きなくキョロキョロ動き回っているんですよ(笑)。右を見て、左を見て、少し呼吸を置く。フォトブックでは、右に余白を置き、左に余白を置き、その後に見開きの作品がドーンと出てきます。こういったリズムを作るのに余白は重要なんです。直前に見た写真の残像をリセットさせる役割もあります。

——余白の大きさは自分で作りましたか?

今回はもともと「PhotoJewel S」に用意されているレイアウトパターンを利用しました。操作もかんたんでプレビューも素早く見れて、選ぶのに苦労はしませんでした。それも含めて、「PhotoJewel S」の操作性は非常にスムーズで満足です。一度慣れれば本当に簡単ですよ。逆に、簡単になんでもできるからこそ凝りすぎに注意です(笑)。ある程度まで進んだらプレビュー機能で確認するといいと思います。

「自動レイアウト」は第三者の視点

——お話をうかがっていると、「読者にどう受け取ってもらうか」と、「自分がどう伝えたいか」のバランスをとても気遣っているように思えます。

撮影者は写真に思い入れを持ちます。山に登って苦労した末に撮ったものもあるでしょうし、寒い中で日の出前から粘って撮影した朝日もあるでしょう。その思い入れはとても大事です。でも、実は見る人にとってそれは関係ないんです。むしろ、「この作品はこう見てください」と言われるのは、読者にとっては自由度がなく重たくなってしまいます。

例えば「この料理は必ずこう食べてください」と言われたら、あまり味を楽しめませんよね。最高の料理を提供するのが料理人ですが、その料理をどう味わうかは食べる人次第なんです。同じように、写真を見て何を感じるかは人それぞれ。僕が写真集を作る時は、いかに客観的な視線を入れるかを考えて作っていきます。

——これからフォトブックで作品集を作ろうとしているアマチュアの方に、GOTOさんからアドバイスするとしたら?

「自分から離れることを意識しましょう」でしょうか。自分の思いで順番やレイアウトを組むと、どこかで見たような写真集になりがちです。読者に自由に見てもらうために、客観的な視点を持つことがとても大事です。本という「モノ」になった時、初めて自分の写真を冷静に客観的な視点で見ることになります。

——その点、「PhotoJewel S」の自動レイアウトは自分ではない、他人の客観的な視点でレイアウト組んでくれるのかもしれませんね。

そうなんです。自動レイアウトはかなり便利で、任せると自分がやるよりいいものになることもあります(笑)。いい意味で他人が入ってくるので、自分だったら選ばない写真をレイアウトに含めてきたりします。ある意味編集者のような。それで自分では気づかない作品の表情も引き出してくれます。撮影者の思い入れをはぎ取ってくれますしね(笑)

初めて写真展を開催したり作品集を作ったりする人は、どうしても春夏秋冬や朝から夜など、わかりやすいまとまりで納得したい方が多い印象です。でもその場合、構成が予定調和になりがちで、どこかで見たことがあるような作りになります。

PhtoJewel Sでは、自動レイアウトでベースを作り、こだわる箇所は自分で決めて手動レイアウトで作ることもできる。トータルでの制作スピードは早くなると思います。

——「PhotoJewel S」でかなり本格的なフォトブックを作れることがわかりました。どんな人にオススメですか?

何年か撮影を続けているハイアマチュアの方でしょうか。プリントする紙も高級感があるので、本格的な作品集が作れると思います。また、プロの写真家が本格的なフォトブックを作っておいて、クライアントにプレゼンする時も使えると思います。記念のアルバムというより、きちんとした作品集というイメージです。初めて写真展を開催する方が、20冊程度作成して写真集の会場で販売する、といった用途にも合うでしょう。

——これだけ立派だと、ポートフォリオとしても使えそうですね。

時間・費用面を考えると、いわゆるポートフォリオ用のアルバムに作品をまとめるよりも、「PhotoJewel S」の方が得られるクオリティは高いと思います。グループ展だと1人あたりの展示点数が少なくなるので、展示できなかった作品をフォトブックにして会場に置くのも良いでしょう。使い方は色々ありそうです。

データではなくプリントで見る・残す意義

——ところで、写真をプリントする機会が減っている現在、GOTOさんは写真をプリントして残すことの価値をどう考えていらっしゃいますか?

今は動画の時代です。SNSでも動画は拡散されますし、スマートフォンで映画を見ることもできます。にもかかわらず、写真も同じくらいニーズがありますよね。それは写真が自由度の高いメディアだからだと思います。

例えば映画ならすべて見るまで2〜3時間かかりますし、小説なら完読するまで2〜3日かかる場合もあります。その点、写真は時間に縛られることなくいろいろな楽しみ方ができます。僕は朝に写真集を5分だけパラパラっとめくってから出かける時もあれば、夜にお酒を飲みながらじっくり眺めることもあります。今、これだけ自由な楽しみ方があるメディアは写真くらいではないでしょうか。

現在はさまざまなSNSが発達し、そこから台頭する写真家などもいて、ネットで写真を見ることを否定できない時代になっています。ただ、あくまで個人的にですが、1週間前にどんな写真に「いいね!」を押したか覚えていません。SNSで発表できる写真の数や、SNSを通して写真を見てくれる人数は多いかもしれませんが、その写真を記憶に残してくれる人は多くないんです。それは、SNS上の写真は流れていく消費物だからです。

一方で、何週間も前に見た展覧会の素晴らしい作品は覚えています。それは映像だけではなく、作品を見た場所がどんな空間だったのか、見た時のにおい、写真集なら手触りや重さ、インクの匂いなどが記憶に直結するからでしょう。

写真は目で見るメディアではありますが、写真展に行けば照明の光、壁の色と写真の色の配合、距離感、空間の雰囲気など、無意識の内に五感が働いて感じるんです。PCやスマートフォンの画面で見るのと、目の前のモノをじっくり見るのでは、記憶の定着率が違います。だから作品としてプリントを残すことはすごく大事だと考えます。写真を自分でフォトブックにまとめることにも、大きな価値があるのではないでしょうか。

制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社
撮影:山本春花、加藤丈博

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。