カメラ旅女の全国ネコ島めぐり
日本最西端、“どぅなんちま”猫が暮らす国境の島を訪ねて(与那国島・後半)
2019年1月23日 12:50
東京から直線距離にして約2,000km離れた与那国島は、日本最西端の島です。晴れた日には台湾がうっすらと見える、日本の国境の島でもあります。
島をぐるっと囲む海は、ハンマーヘッドシャークとの遭遇率も高かったり、謎に包まれた海底遺跡があったり、ダイビングする人々を惹きつけてやみません。島の中は、断崖絶壁の岩山やジャングルのような山があり、草原のような牧場で在来種の与那国馬が暮らしています。
そして集落では、愛らしい“どぅなんちま・まゆ”が安穏と暮らしています。島の方言で、与那国島は“どぅなんちま”、猫は“まゆ”と言います。
与那国島1日目は島の東側を探索したので、2日目は、西側をぐるっとめぐりたいと思います!
“最西端”の西側、対岸には台湾が
2日目は、与那国島の西側をゆっくりめぐります。
祖納の近くにあるホテルから、北側を通って西へと向かうと、与那国駐屯所が左手に見えてきました。2016年から自衛隊の駐屯地ができて、国境の島を砦のごとく、南西諸島の防衛に力を入れているようです。
祖納から車を走らせて20分ほどで、西の集落「久部良」に着きました。
久部良湾の周辺にひっそりと集落があり、青い海と緑の山の間に溶け込んでみえます。
異国の港町にも思える光景を、パチリと一枚。
久部良の集落から西崎(いりざき)に向かうと、「最西端の地」という石碑が立っていました。西の方角、約111km先には台湾があります。
あいにくの曇天でしたが、晴れた日には台湾が見えるそうです。
ぐるっと見渡さなければ視界に収まらない、180度以上に広がる海を一度に眺めると、もはや大海原に地球を感じてしまいます。壮大とは、こういうことだ、と思うのです。
世界の地図では、日本は極東の端っこに描かれていることがよくあります。西を眺めるということは、世界を眺めることでもあります。
ぼうっと、はるか西を眺めながらそう思えば、果てしない旅情が胸にこみ上げてきます。
小学校で心和む場面に出会う
その後、最西端から南下して、島にある3つの集落のうち、比川へと向かいました。
集落の海側にある比川小学校に車を止めると、道端をてくてく行く猫に出会いました。とくに警戒心が強いわけではないですが、「まゆ(猫)さ〜ん」とカメラを向けると、ぎょっとした表情を返されてしまいました。
島では、猫たちは自然体で暮らしているようで、誰かに声をかけられるということもないのでしょう。
せっかくなので、比川小学校を覗きにいくと、超絶微笑ましい光景に出くわしました。
猫ちゃんと小学生の女の子が一緒に遊んでいるのです。
猫は嬉しくて仕方がないみたいで、女の子が持っている棒がくるくる動き、棒の先端の紐がちょろちょろ動くのを追いかけ回していました。
「こんにちは〜」と、女の子のお母さんに声をかけると、
「あの猫、小学校に住み着いていて、ああして子ども達に懐いているんですよ〜」と、教えてくれました。
仔猫のときから、ずっとここにいるみたいです。
本当に、お友達同士で遊んでいるみたいで、楽しそうな雰囲気でした。
ふと、気づくとぽっちゃりとした猫さんもいました。
「だ、だれだい、見かけないヤツだにゃあ」
そんな訝しがる目つきをいただき、パチリと撮らせてもらいました。
Dr.コトーの診療所を訪ねて
小学校の校庭脇を歩き、海辺に出ると、左手奥に、「Dr.コトーの診療所」が見えました。
入場料300円で、中に入れます。
受付の女性曰く、「ここは撮影のために建てられたんですよ〜」と。中の道具もインテリアもすべて撮影用で、当時のままだそうです。
どこに、観光客がいるのかしら? と首を傾げたくなるほど、島の中で観光客に出会わなかったのですが、診療所では人口密度が高くて驚きました。
診療所の目前には、三日月型の比川浜が広がり、与那国島では珍しい遠浅の海は美しいターコイズブルーをしています。夏には、大勢の人が海水浴を楽しむのだろうけれど、冬の静かで穏やかな景色もいい。
島旅は、冬こそ島の性格がよく出るのかもしれません。
エビそばで一休み
比川小学校のほうへと戻り、ぺこぺこのお腹を満たすため、食事処「さとや」へ入りました。
比川には車海老の養殖場があるのですが、なんと「車海老そば」があるというので、注文してみました!
スープにエビの出しがよ〜く出ていて、海鮮風八重山そばという感じ。ぷりっぷりの車海老は殻をむいて食べても、身がきゅっと詰まっていて美味しい! ちょっと肌寒い日だったので、心も体も、ぽっかぽか。
森の中に楽園が!?
さて、最後に行こうか迷っていたところへ、行ってみることにしました。
東側の立神岩の近く、森の中になりますが、「人面岩」があるというのです。
「人面岩がなぜあるのか、あれは作られたものか、不思議ですよ」と島の方から聞いて、行ってみたくなったのです。
とはいえ、具体的な行き方を聞かなかったので、行けるか謎のまま。
比川から東側へと車を走らせると、ふと右手の森の中に、車が一台通れる程度の狭い道がありました。
「もしや?」
と車を止め、どきどきしながら、森の中へと踏み入れてみました。
亜熱帯植物が生い茂り、時折、オオゴマダラと思われる蝶がパタパタと飛んで、楽園のよう。
道が続く限り行ってみようと歩くこと30分ほど。
小さなビーサンが置かれている、と思ったら、そこに「人面岩」と書いてありました。誰かの、心もとない、けれどありがたい道しるべです。
道はさらに細く、狭くなるけれど、ふっと左手に大きな岩があるのに気づきました。
「人面岩!」
笑っているのか、威嚇しているのかわからない表情ですが、ふと、人より猫の顔みたいだなと思ってしまいました。猫が好きだと、なんでも猫に見えるようです。
来た道をまた30分ほどかけて戻り、ふうっと一息つきました。