カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

玄界灘の美しい小島で、ツンデレ猫たちに翻弄される(姫島・前半)

九州の玄界灘に浮かぶ小さな姫島に、猫がたくさんいるというので来島しました。

今、地域活性化の勢いで、盛り上がりをみせている福岡県糸島市の中心地、筑前前原の前原駅北口から昭和バスに乗って約30分、岐志というところで降ります。

そこから歩いて3分ほどで、姫島行きの船が出ているので乗船。切符は船の中で買って、カメラを抱えていざ出航しました!
姫島は、糸島半島の北西4kmほど沖に位置する周囲約3キロの小島で、散策するには徒歩で充分歩き回れます。私は歩いて回れる規模感の島々がとても好きです。

歩いて回れば、猫に出会う機会もぐっと増えます。

歴史的には江戸時代、鎮山という島内最高峰の山に遠見番所が置かれ、外国船の監視をしていたようです。集落は島の南部に固まり、猫もそこで暮らしています。

姫島は初めて来島するので、どんな島で、どれほど猫たちがいるのか、散策してみたいと思います!


これまでのねこ島めぐり

気づけば周りは猫だらけ

姫島行きの客船「ひましま」に乗って16分、姫島に到着しました。

港には、ずらりと漁船が並び、人口200人ちょっとの島にして、漁業が今も盛んな様子がうかがえます。玄界灘の豊かな海の恵みを想像すると、当たり前なのかもしれません。

きっと、人口が最多の全盛期には、漁船もさらに多くあったことでしょう。

船が桟橋に着岸する前に、海側から島の風光をパチリ。漁船がいいアクセントになります。

始めての島に降り立って、まずは荷物をどうしようか、待ち合い所に置かせてもらおうかと思って探していましたが、見当たらない。

船から降りてきたおばあちゃんに、

「すみません〜! 荷物を置く場所はありませんか?」と聞くと、

「ここにはねえ、待ち合い所とかなかと。あのベンチに置いておったらどう? 誰も取らんばい」

そう言って、「暑かとねー」と集落のほうへと、ゆったりと歩いていきました。

では、と荷物を桟橋近の屋根がついているベンチ小屋に置こうと向かうと、

「にゃーーーーーん」

と、愛らしい猫の声が聞こえて、その姿を発見!

さらに、タタタタタタッと、あちこちから猫が近付いてきました。

暑いなか、それぞれ涼しい木陰で休んでいたのでしょう。

向かってくる猫を写真に取っているうちに、気付けばベンチは猫の衆がずらり。

「にゃーにゃー(ご飯くれないかねえ)」

その訴える瞳に目を背けながら、写真撮影に勤しんでいると、猫たちも諦め、銘々寛ぎはじめました。

実は猫たちにご飯を持ってきたのですが、島の人に確認する前にはご飯をあげないようにしています。島によっては、「餌やり禁止!」という所もあれば、「どうぞどうぞ」という所もあるからです。

さっそく、誰かいないかな〜と散策開始。

集落のほうへと向かいました。いきなり、木造の立派な家並みが続きます。

一番驚いたのは、足元です。

小さな島のメインストリートが綺麗なテラコッタと思われる鋪装道路なのです。他のこの規模の島々では、ほとんど見たことがありません。

木造家屋との対比が印象的で、パチリ。

さっきの威嚇はどうした……ツンデレな猫たち

その後、島で唯一の商店「シーガルショップ」へ入ってみました。

「うわーー涼しい!」

クーラーが効いて、一気に汗がひんやりとしてきました。商品の品揃えもよくて、ドリンクの種類も一般的なコンビニくらい置かれていました。

「いらっしゃい〜」と島のお母さんらしき人に出迎えられ、

「すみません〜。さっき港にたくさん猫がいたんですけど、ご飯てあげてもいいんですか?」と聞いたところ、

「この店の前じゃなければ、まあ大丈夫よ。あそこの電柱を左に曲がった突き当たりにも猫たくさんいますよ。でも、今は暑いからどうかしらね〜」と、あっさりと猫スポット情報もゲット!

さっそく、言われた場所へと意気揚々と向かいました。

たしかに、この暑さでは、猫は茂みに隠れていないかも……。

すると……、「にゃーーーう、にゃーーーう」と威嚇する猫の声!

畑のほうから白猫と目が合いました。他の猫に威嚇をしていたようですが、私に気付くと、とことこやってきて、愛想をふりまいてくれるのかと思ったら、

「シャー!」といきなり威嚇!

「そ、そんな怒らないで。ほら、ご飯あげていいって言われたよ〜」とバッグからごそごそご飯を取り出すと、

「にゃ〜ん♡」と声も変わる。

「お召し上がりくださいませ(その代わり、写真撮らせてね♡)」

ご飯のおかげ、なんとか心を通わせることができ、他の猫の衆も集まってきてくれました。

そして、言葉通り、すっかり味をしめた猫の衆は、いつの間にか私の後をとことこ追いかけ、気付けば私は猫使いのようになっておりました。

ただ、ダルマさんが転んだ状態で、振り向くとピタッと止まるので、ここはシャッターチャンス!

私がしゃがみ込むと、猫たちもべた〜と寝そべり始めます。

猫たちとしばらくぼけ〜っと道端で休憩して、猫たちが気まぐれにあっちに行ったり、こっちに寝そべったりするのを眺めて過ごしました。

姫島の猫は、触れる猫が港にいた1匹だけ。あとは近距離で撮影できますが、触ろうとすると、「シャー!」となります。

人に怯えることなく、堂々と道のど真ん中で寝ている猫たちですが、素性はワイルドな猫らしくて、いいなあとも思いました。

港沿いから、いよいよ集落の中へと歩いていこうと思います。
集落入り口のメインゲートのような存在なのが、この大鳥居です。

傍には豊漁祈願のえびす大黒様が。漁の際にはえ縄や網に掛かった珊瑚に囲まれています。海の中にいるえびす大黒様。

漁業の島ならではの神様に手をあわせて、いざ、集落の中へ!

(つづく)

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。