カメラ旅女の全国ネコ島めぐり
今、もっとも勢いがある猫島で、島唯一の老舗猫宿に泊まる(相島・前半)
2017年12月21日 17:00
いま、もっとも観光客で賑わっている猫島の1つと言われるのが、福岡県の相島です。新宮町の沖合8kmほどの玄界灘に浮かぶ三日月形の島です。もちろん、観光客の多くは、猫に会うために来るのです。
猫島として有名になったのは、遡ること2013年。アメリカのニュース番組CNNが取材に来島して、「世界6大猫スポット」の1つとして紹介しました。その後ジャパンタイムズや、そのほか日本中のメディアがこぞって取材をはじめ、最近では、NHKの「ダーウィンが来た!」でも紹介されました。
気付けば、あれよ、あれよと、たくさんの猫に出会える“猫島”として知られるようになって、今、減少傾向にあった船の乗客は年間で1万人増しとなり、ついに黒字になったというのです(島民談による)。
しかし、実際に宿の数は減ったまま、島には一軒の老舗宿があるのみ。そこで、この勢いのある相島へ行き、島唯一の老舗宿に泊まってみることにしました!
いざ、船で相島へ!
14時3分、福岡県の福工大前駅からコミュニティバス“マリンクス”に乗って約10分、新宮港へ到着。すぐに新宮渡船待合所で片道460円のチケットを買い、乗船しました。
生憎の雨で、空はどんより暗く、これでは猫たちもどこかに隠れていないかも? と、少し気持ちが下がりますが、晴天日和では観光客で溢れかえり、船に乗れなかったかもしれないので、のんびりと雨の猫島を楽しむことにしました。
やがて、船は14時40分に出航。
約20分ほどの船旅で相島に着きました。雨はほぼ止んでくれましたが、猫はお迎えに来てくれません。猫島では、たいてい船が着岸すると、猫たちがとことこと出迎えにきてくれるところが多いのですが、やはり雨だからでしょう。
ひとまず、島唯一の宿“丸巳屋旅館”へと向かうことにしました。
すると、雨の中をトトトトトと、やってきてくれた黒猫ちゃんが。荷物にまとわりついて、「いらっしゃ~い」と上出来のご挨拶。一気に心がほわっと満たされました! 島の第一猫さんを写真にパチリ。
船着き場から海を背にして右手のほうへと歩き、宿に向かいます。
その間、目を凝らして見れば、あちこちに猫たちが雨宿りしています。みんなで身を寄せ合っていたり、段ボールの中におさまっていたり、特等席の椅子に座っていたり。
それぞれの方法で、雨の時間を過ごしていたようです。その模様を写真に収めながらなので、なかなか宿にも着きません。
仲良くごはん
ようやく、レトロな雰囲気の二階建て宿“丸巳屋旅館”を発見(港から直行すれば5分もかかりません)。
そこでも、宿主よりも先に出迎えてくれたのは、宿の守衛さんたち。猫隊です。
「キミは怪しいものではないかね?」
「まあスーツケース持ってるし、お客さんでしょ?」
「でも、この客はいい(食べ物の)ニオイしないにゃあ」
そんな台詞が彼らの鋭い眼差しを通して聞こえてきます。
その時、ガラガラっと扉が空き、中から宿主のおじさんが現れました。
「いらっしゃい。ここの猫がね、また最近増えたの。まあ、おあがりなさいよ」
「はい! お邪魔します!」
猫の間をすり抜けて、二階の部屋へ荷物を置いていると……下から猫の「ニャーニャー」大コールが聞こえてきました。部屋の窓から外を見下ろすと、猫たちのご飯時間だったようです。
宿のおじさんがご飯を等間隔で塀の上に並べています。
なんて、幸せな猫ちゃんたち! ひと猫にひとご飯をしっかりともらって、ご飯を奪い合う必要がないのです。そのせいか、とってもおっとりとして、ご飯をぜんぶ食べ切らずに「ごちそうさまでしたにゃん」と塀を飛び降りていく猫も。
ニャーンとおねだりすれば、ご飯をくれるお父さんがいると、猫たちはわかっているようです。
後でおじさんに、「猫が好きなんですねえ」と伺うと、
「こないだ3日用事があって島を出てたら、帰ってきて猫たちがギャーギャーないて、すっごく怒られたの」と笑いながらお話してくれました。
NHKで紹介されたコムギくんが!
この宿にはもう何十年も前から猫が住みつき、一緒に過ごしてきたそうです。
それからすっかり雨が止んだので、少しだけお散歩にでかけました。
船着き場のすぐ近くの「島の駅 あいのしま」へふらっと入ってみると……。
NHK「ダーウィンが来た!」で紹介された巨体の茶トラ猫コムギくんがいました!
道の駅は、お土産や食堂があって、島の小さな観光スポットです。コムギくんはここに常駐しているわけではないので、出会えてラッキー。
常駐していないのは、コムギくんが立派な島のオス猫であり、日中はいそいそと島の中をパトロールをしているからなのです。(それか、どこかでお昼寝?)
お店の方に、「抱っこした写真撮りましょうか?」と声をかけていただき、すかさずカメラを渡して、ツーショットを撮ってもらいました。改めて写真をみると、コムギくんの巨体っぷりにびっくり! でした(笑)。
猫と過ごす静かな時間
それからまた、ふらっと薄暮の時間、島の中で猫たちと出会いながら、写真を撮りながら散策。お願いせずして、フォトジェニックな構図やポージングの猫の写真が撮れて、うれし、たのし。
さて、丸巳屋旅館へと戻ることにしました。ちょうど、最終の船が新宮町へ向かったところでした。
しーんと静まり返る港。私はこの島の夜の静かな時間が好きです。
宿で、ふたたびおじさんにお話を伺うと、
「実はね、もうねえ、体を壊してしまって。宿をたたもうか迷ったの。でも島ではここしか泊まるところなくなっちゃったからね。うちがやめたら、猫好きで遠くから来る人も、釣りが好きで泊まりたい人も、困るから。もうちょっと、がんばることにしたよ」
そんな彼の気持ちを後押しするかのように、外から、波の音に重ねて「ニャーン、ニャーン」と猫たちの声援が聞こえてきました。
(後編はこちら)