山岸伸の「写真のキモチ」

第94回:山岸伸写真展「西田敏行Since1980~」中間報告

アシスタントと異なる場所で写真展を同時開催

(左)近井沙妃写真展「うつろい」DM(右)山岸伸写真展「西田敏行Since1980~」DM

山岸伸写真事務所始まって以来、アシスタントが同時に写真展を開催するのは初めてのこと。同時期の開催となった経緯、そして写真展の中間報告をしていただきました。(聞き手・文:近井沙妃)

1日違いの開催スタート

今回は山岸伸写真事務所の近井沙妃と私の写真展のご報告。近井は10月16日から27日までOM SYSTEM GALLERYⅡで、私は1日違いで17日からキヤノンオープンギャラリー2で「西田敏行Since1980~」を現在も開催中だ。

なぜ、同じ時期に違う場所でそれぞれ写真展を行ったか? 私の写真展は約1年前からキヤノンオープンギャラリー2での開催がほぼ決まっていた。近井は開催の3カ月前にお話しをいただき本人は当初尻込みをしていたが、OM SYSTEMの新しいレンズで作品を撮り下ろし、新しいギャラリーで写真展をやってほしいということだったので私としては是非やらせたい。彼女は私の写真展会期中にはやりたくない、忙しくなることも想定できるし、開催まで時間的な余裕が多くあるわけではないので作品を撮るにしても私のアシスタントをしながらのため、少し考えさせてほしいということだった。せっかくのチャンス、そして新しいギャラリーが気持ちよさそうだったので是非やった方がいいと話し合い、写真展を開催する運びとなった。

今回我々はせっかく作ったDMを敢えて郵送せず、手渡しと各写真ギャラリーや関係者にお預けして配っていただくということを選んだ。私は西田敏行さんの写真展を追悼展という意味で開催していない。現在も私の中で生きている西田敏行さんの姿、西田さんという被写体とカメラマンである私の関係性をお見せしたいと思った。

それ故にお花やいろいろな差し入れをいただくことはあまり良くないかな、という判断をした。それでもいつものように送ってくださる方がいる。その気持ちは当然嬉しく温かく、名札だけ外し会場に置かせていただいている。

近井沙妃写真展「うつろい」

近井の場合は一歩下がって私の写真展の邪魔にならないよう、気遣いでDMや諸々の案内を控えめにしたと思う。彼女にとって初の個展、私的には派手にやってほしかったんだけど(笑)。何度かグループ展やOM SYSTEM PLAZAのクリエイティブウォールで写真を飾ってもらったことはあるが本当の個展は初めて。

近井沙妃写真展「うつろい」DM
(上段)写真展搬入の様子。フレームマンが搬入を担当する中、写真弘社の川口さんが最後まで立ち合い、一緒にチェックしてくれた(左下)展示の一部、矢崎希菜さんの展示写真(右下)モデルを務めてくれた草野綾さんが所属するヴィスカエンターテイメントよりお花をいただいた

全て本人に任せ私は一切口も出さず、写真もチェックせずに開催当日を迎えたのだが、流石にトークイベントは気になったので顔を出した。被写体になってくれた草野綾さんと矢崎希菜さんもゲストとして参加してくれて、お客さんも約35名と多く来ていただけた。私的にはホッと一安心。私も飛び入りで少し話したが写真がどうのこうのという話はしなかった。

(上段・中段)トークイベントの様子(下段左下)草野綾さん・近井・矢崎希菜さん(下段右下)写真家の太田さんが撮影してくれた記念写真

まずは明るい会場で明るい写真を皆さんに見ていただけたということが大成功だと思う。本人もそう思っているはず。

記念写真の一部 (左上)株式会社アスカネット 村上大吉朗社長(右上)元オリンパス 半田さん(左下)彫刻家 松田光司先生(右下)大洋図書 後藤さん
(左上)写真家 西尾さんご夫妻(右上)東京駅研究家 佐々木直樹さん(左下)吉井画廊 佐藤さん(右下)山岸伸写真事務所アシスタントOBの横内くんと近井
(左上)モデルを務めてくれた蒼井めるださん(右上)モデルを務めてくれたあずりなさんと一緒に来てくれたカメラマンさん(左下)19代目ミニスカポリスの谷咲彩衣沙さん(右下)モデルの黒猫暦さん

私を応援してくれている方がこうして会場に駆けつけてくれている。これは本当に嬉しいこと。ちゃんと近井が働いている姿を見てくれているんだなと今回感じた。

これを機に、少し写真の撮り貯めでもしてもらおうかなと思ったりもするが、ポートレートは場所もメイクもいるし、何よりモデルを引き受けてくれる人も必要。仮に休みをあげたからといってなかなか大変だと思うが、今は女性ポートレートを撮る女性の写真家やカメラマンが少ないので近井には頑張ってもらいたい。

とりあえず、無事に写真展を終えられたこと、おめでとう。

山岸伸写真展「西田敏行Since1980~」

山岸伸写真展「西田敏行Since1980~」DM

ということで、私の写真展の搬入は近井が不在だったがアシスタントOBが3名来てくれたので非常に助かった。西田さんの写真はどう飾り付けるかが難しかった。会場としてお願いをしたのは品川のキヤノンオープンギャラリー2。この明るい空間で写真を一直線に飾り見てもらうのが一番向いていると思った。

搬入の様子

本当はもっとたくさん写真をお見せしたかったが、当時のフィルムやプリントからスキャンをする必要があり、費用がかかる。枚数を少し減らし、1枚のサイズをあまり大きくせず、1つの額装の中に2枚入れることを考えた。

この額装の仕方が今回の展示にぴったりだった

これは私の“作品”ではない。西田敏行さんの傍にいて、西田さんが許す限り撮らせてもらったものだ。決してこうして欲しいとか、ああして欲しいとかお願いをしたわけではない。西田敏行そのものが写っている写真展だ。

吹き抜け部分に掲示されているフラッグ
冒頭でも話したようにお花は極力ご遠慮いただいているが、お気持ちはとてもありがたい
(左上)朝一番で来てくれた乙丸先生(右上)いつも来てくれる北野さんと川邉さん(左下)若い頃から活躍されている杉山さんには刺激をもらっている(右下)元ベルボンの保母さん
(上)青年座の森社長が来てくださり、とても嬉しい(下)何故かOM SYSTEMのお2人と薬師先生と元オリンパスの早川さん、嬉しいですね
元オリンパスの半田さんをはじめ、いつも応援してくれている皆さま
いつも応援してくれている皆さま

本当はギャラリートークやトークショーもあまりやりたくはないのだが、皆さんに少しでも被写体とカメラマンの関係が明確に見えるように、時間があればお話しすると決めて10月25日にはギャラリートーク、11月1日にはトークショーを開催。

ギャラリートークは募集人数30名のところ、約45名と多くの方が来てくれた。

10月25日 ギャラリートークの様子
ギャラリートークを終えて記念写真

11月1日のトークショーではキヤノンホールSという大きな会場で私がほぼひとりで話さなければいけない。ゲストには坂本三佳ちゃんという俳優で世界ふしぎ発見!ミステリーハンターを長年務めた方にお願いしているが、彼女も私が撮っていた頃の西田さんを知らない。ただ、最後に彼女も私の紹介で西田さんの事務所に所属し、西田さんとも何度か仕事をしたことがあるので彼女に来ていただき進行もしていただこうと思う。

西田さんの姿を、是非会場で

今、こうして私が写真展をできているということは全て西田敏行さんのおかげ。まださほどカメラマン人生が上手くいっていない若い頃に西田さんと知り合って、映画やコマーシャルにテレビや音楽の現場、そしてそれに付随した撮影をさせていただくようになり、たくさん勉強させていただいた。それもこれも西田さんが主役であり私を指名してくれたから経験できたことだ。

今回展示しているのは1980年から1990年代半ばが中心、そして2年前に撮影し結果的に遺影に選んでいただいた写真を展示している。今回は中間報告。11月22日まで開催されている山岸伸写真展「西田敏行Since1980~」、西田さんの姿を是非見に来てほしい。

(やまぎし しん) タレント、アイドル、俳優、女優などのポートレート撮影を中心に活躍。出版された写真集は400冊を超える。ここ10年ほどは、ばんえい競馬、賀茂別雷神社(上賀茂神社)、球体関節人形などにも撮影対象を広げる。企業人、政治家、スポーツ選手などを捉えた『瞬間の顔』シリーズでは、15年をかけて総撮影人数1,000人を達成。また、近年は台湾の龍山寺や台湾賓館などを継続的に撮影している。公益社団法人日本写真家協会会員、公益社団法人日本広告写真家協会会員。