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「積層センサー」のメリットとは? 裏面照射やグローバルシャッターとの違いを整理
超高速連写、動体追従、ゆがみのない動画記録などで有利に
2026年4月11日 12:00
最近のカメラに搭載されるイメージセンサーにおいて、「積層センサー」という言葉を目にする機会が増えてきました。上位モデルの訴求ポイントとして扱われることが多く、連写性能や動画性能、電子シャッターの使いやすさと一緒に語られることも少なくありません。
ただ、読者の中には「普通のセンサーと何が違うのか?」「裏面照射型とどう違うのか?」「積層なら画質も必ず上なのか?」といった疑問を持っている人も多いでしょう。さらに最近は「グローバルシャッター」という言葉まで登場し、ますます分かりにくくなってきました。
そこで今回は、積層センサーを“撮影のしやすさにどう関わる技術なのか”、という視点で整理してみます。
そもそも積層センサーは、なぜ出てきたのか
できるだけ簡略化したイメージで技術的な説明をすると、イメージセンサーは、光を受けて電気信号に変える「画素」と、その信号を読み出して処理する「回路」の組み合わせでできています。
従来の一般的なセンサー(非積層センサー)では、「画素」と「回路」を1枚の基板上に配置して製造してきました。しかしカメラに求められる性能が高くなるにつれ、このやり方だけでは限界が見え始めます。高画素化したい、読み出しも速くしたい、動画性能も上げたい、オートフォーカスも高度化したい、となると、1枚の中に全部を詰め込むのが難しくなってくるからです。
そこで出てきたのが「積層」という考え方です。これはざっくり言えば、光を受ける「画素」部分と、信号処理を担う「回路」部分を上下に分けて重ねる構造です。こうすることで、「画素」と「回路」を別々のプロセスで製造することができるため、設計の自由度が上がり、高速化や多機能化を進めやすくなります。
ここで混同しやすいのが「裏面照射型」との違いです。裏面照射型(Back Side Illumination、BSI)は、従来の表面照射型(Front Side Illumination、FSI)CMOSイメージセンサーで光が入ってくる側にあった配線層を反対側に回し、受光面で配線の影響を受けにくくすることで、より効率よく光を取り込もうとする技術です。
一方の積層は、画素と回路の配置を分ける構造上の工夫です。両者は別の話で、実際には「裏面照射型の積層センサー」という組み合わせもあります。つまり、積層は“光をどう受けるか”よりも、“どう速く、どう賢く読み出すか”に効く技術だと理解すると分かりやすいでしょう。
積層センサーの何がメリットなのか
積層センサーの最大の利点は、読み出しを速くしやすいことです。
CMOSイメージセンサーは、シャッターを切った瞬間にすべての情報が一気に処理されるわけではありません。多くのカメラでは、上から下へ、行単位で順番に読み出していきます。この読み出しが遅いと、電子シャッター使用時に動体が歪んだり、速い横移動で被写体が斜めに見える「ローリングシャッター歪み」が生じてしまいます。これは、積層、非積層にかかわらず、CMOSイメージセンサーの大きな弱点の1つです。
この読み出し速度を強化するための技術として生まれたのが積層センサーです。積層化してしまえば、大きく、微細な回路(高性能な読み出し回路)を組み込みやすくなるため、読み出し速度を高速化し、次の様なメリットに繋がります
・電子シャッターでも歪みが出にくい
・超高速連写を実現しやすい
・ブラックアウトの少ない表示や動体追従時の高速オートフォーカスに有利
・動画撮影時のローリングシャッター歪み(こんにゃく現象)を抑えやすい
つまり、積層センサーの価値は画質面より、速さが必要な撮影で使いやすくなると考えるのが良いと思います。積層センサーだから画質が良くなると言うわけではありません。
メカシャッターでは到達不可能だった20コマ/秒を超える超高速連写を、メカシャッター同等レベルのローリングシャッター歪みに抑えて撮影できるようになったり、歪みをかなり抑えたハイフレームレートの動画撮影ができるようになることがメリットです。
2017年にレンズ交換式カメラとして世界ではじめて積層センサーを搭載したソニー「α9」を手にした時は、私も「時代が変わった!」と感動したのを覚えています。
グローバルシャッター、部分積層とは?
ちなみに、ソニー「α9 III」(2024)に搭載され、最近耳にすることが多くなった「グローバルシャッター」は積層センサーとはまた違う技術です。
従来のCMOSイメージセンサーは記録した情報を行単位で順次読み出していく方式で、いくら積層化して読み出しを早くしても必ず読み出しの時間差が生じます。
一方、グローバルシャッター方式のCMOSイメージセンサーは行単位で順次読み出すのではなく、全画素を同時に露光する方式で、この時間差を完全に除去することができる従来とは露光方式が異なるセンサーです。ただ、この全画素同時露光を実現するためには複雑で大規模な回路が必要になるため、結果的に積層センサーとなることがほとんどだと思われます。
積層かどうかは、イメージセンサーの構造の話、グローバルシャッターは読み出し・露光方式の話です。
また、最近はニコン「Z6III」、ソニー「α7 V」のように「部分積層」という表現も出てきました。この目的もやはり読み出し高速化で、読み出し回路の1部を積層化して強化したものだと考えられますが、私が知る限り「部分積層」という言葉の定義があるわけではなさそうなので、積層センサーほど大規模な回路を積層してはいないというイメージで良いかと思います。
ちなみに、キヤノン「EOS R5」や「EOS R6 Mark III」は非積層センサーと言われていますが、読み出し速度は(非積層としては)非常に早く、部分積層に迫る読み出し速度を実現しています。回路の設計次第では単純に非積層だから遅いとは必ずしもならない場合もあります。
積層センサーの弱点とは
一方で、積層センサーにも注意点はあります。
積層センサーの最大のメリットは主に“スピード”にあります。したがって、必ずしも高感度や階調表現で有利、とは限らないことです。センサー性能は画素ピッチ、回路設計、画像処理エンジン、熱設計など複数の要素で決まります。最新型であればセンサー全体の設計を工夫して、スピードも、画質も向上している場合もありますが、積層はあくまでセンサー性能の重要な要素のひとつでしかありません。
また、積層センサーは「画素」と「回路」の2つのチップを製作し、それを正確に貼り合わせる必要があるため、従来の単層式のイメージセンサーに比べて製造コストが大きく上がってしまうこともデメリットです。
まとめ
積層センサーがカメラに使われ始めてから約10年が経過し、中~上位機では積層センサーの採用例がかなり増えてきました。
特に動体撮影をよく行うユーザーにとっては、積層センサー搭載のカメラを使うと従来のミラーレス機とは全く異なる撮影体験を実感できるようになると思います。まだ未体験の方はぜひ1度体験してみることをおすすめします。









