中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

新緑の東北てつたび④

バーチャル構図づくりにチャレンジ!

みなさんこんにちは。新緑の東北てつたび4回目は、ちょっと趣向を変えてバーチャルな構図のお勉強をしたいと思います。舞台は仙台と山形を結ぶ仙山線。撮影地は四輪駆動車じゃないとちょっと不安な林道を分け入った、作並〜奥新川の深〜い山の中です。カメラの右奥にチラッと赤く見えるが仙山線の鉄橋です。なかなかの絶景ポイントでしょ?

さぁこんなときに悩むのが構図ですね。ここでの主役はもちろん列車が通る赤い鉄橋ですが、それをどこに置いたらいいのか、どんな大きさで撮ったらいいのか、悩んでしまう人は多いでしょう。

ここで思い出してほしいのが、この連載の第1回でもご紹介した「せいや君構図」です。

せいや君構図

「せいや君構図」を復習しますと、画面を縦に4分割した線と、対角線の交点から中心を除いた4点に主題を置くという構図作成方法です。これはまず主題を置く位置を決めることで、あとの構図づくりが簡単になるという考え方です。この「せいや君構図」を頭に入れたら、今回は実際にバーチャル構図づくり体験をしてもらおうと思います。

「バーチャル構図づくり」体験用写真

こちらは風景全体を広めに写した作品です。スマホの画面でこの写真の上に指を1本置き、そのまま長押ししてもらうとメニューが出ますので、「イメージを保存」をクリックしてください。するとカメラロールに写真が保存されているので、写真編集の一つ「トリミングツール」を使って切り取ることで、構図づくりのバーチャル体験をすることができます。

パソコンでご覧になっている方はダウンロードしてから、画像編集ソフトなどでトリミングしてお楽しみください。操作方法はiOSに沿って解説していますが、Androidでも同じ操作をすることができます。

アスペクト比のマークをタップ。
トリミングの枠を任意のアスペクト比に固定できる。

やりかたは簡単。まずはカメラロールから写真を選択し、表示させます。続いてトリミングのマークをタップしますが、そのままだと縦横比が自由に変わってしまいます。それを防ぐために、アスペクト比の選択で縦横比がずれないようにしておく必要があります。

上はiOSの写真編集画面。右の縦方向のメニューバーの上から2番目にあるパンタグラフみたいな(笑)マークをタップし、トリミング画面に入ります。すると赤矢印で示したアスペクト比マークが出てきますので、それをタップ。すると2枚目の写真のように縦横比の一覧が表示されます。「オリジナル」または「3:2」を選択すれば、縦横比を変えずにトリミングできますので、バーチャル構図づくりにチャレンジしてみましょう! 縦位置でトリミングする場合は、縦横比を自由に変えられる状態でまずアバウトに縦位置の構図を作り、そのあとにアスペクト比選択ボタンを押して、「3:2」を選択しましょう。

さぁまずは頭の中にたたきこんだ「せいや君構図」を脳内起動させて、列車を4点のどこかに置く感じで、フレーミングしていきます。トリミングの枠の端をつかんでドラッグすると枠の大きさを変えられます。これは実際の撮影ではズームみたいなものですね。続いて写真を1本指でドラッグすると、トリミングする位置を自由に変えることができます。これは実際の撮影ではカメラの向きを変えることと同じです。

iOSのグリッド表示は3分割法なのでちょっとわかりづらいですが、せいや君構図の左下の1点に列車を置いてトリミングしたのが上の1枚。背景の山のカタチが入ることで山深さは薄まりますが、現場の状況はまっすぐに描写できています。

こちらの2点は、同じ「せいや君構図」の左上の1点に列車を置いた構図ですが、周囲をどれくらい入れ込むかによって、大きく印象は変わっているのがわかると思います。つまり現場でも同じで、まずは列車を置く位置を決め、レンズの焦点距離を変化させるだけで、写真の印象を変えることができるのです。

構図づくりのときは、先にレンズを決めてしまい、その後に主題の位置を決めちゃう人もいます。でもまずは主題の位置を決め、その周りにどれくらいの情報をいれるかを想像してからレンズの焦点距離を決めるクセをつけると、構図づくりの迷いは少なくなります。

まず構図のなかの主題の位置を決める

周囲をどれくらい入れるかを決める

レンズの焦点距離が決まる

構図づくりにはいろいろな方法があり、また撮り手の経験値によってさまざまな作り方がありますが、初心者で風景を前にするとどうしていいかわからなくなるような状態でしたら、ぜひ試してもらいたい構図作成法です。

自分の部屋でも、電車の中でも、まるで撮影地で構図づくりをしているかのように訓練できるスマホを使ったバーチャル構図特訓。ぜひお試しくださいね。

↓バーチャル構図づくりの方法を動画で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

さぁここからは実際にこの場所で僕がどんな構図にしたかを、お見せしましょう。

ソニーα7R III FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(114mm) 絞り優先オート(F7.1、1/500秒) ISO 400 WB:太陽光 風景

ここでは「せいや君構図」の左下の1点に列車を置いていますが、バーチャルのときとは違い空をカットしています。山の稜線は画面から外れてしまいましたが、そのぶん山深い感じが強調された構図になりました。ここではもっとも定番の構図と言えるのではないでしょうか?

ソニーα7R III FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(100mm) 絞り優先オート(F7.1、1/320秒) ISO 400 WB:太陽光 風景

こちらは意表をついて画面右上の1点に列車を置いた構図。山の麓の新緑がキレイだったので、新緑の部分をメインにした構図にしています。先程の写真と同じ場所とは思えない、画面下側の広がりが感じられるのではないでしょうか?

ライカSL (Typ 601) APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm(123mm) 絞り優先オート(F6.3、1/500秒) ISO 400 WB:太陽光

こちらは縦位置で左下の1点に列車を置いた構図にしています。最初は空を切っていたのですが、列車が大きくなりすぎる気がして、思い切って奥の山と空までいれた構図にしています。この鉄橋につながる川が生んだ谷の表情が強調された構図になりました。

このように風景を切り撮るときには、なんとなくフレーミングするのではなく、「山深さを出したい」や「山麓の新緑を目立たせたい」とか、「谷の深さを強調したい」というように、自分が強調したいテーマを見つけることが大切なのではないかと思います。チコちゃんに「ボーっと構図作ってんじゃねーよ!」って怒られないように、テーマをもったフレーミングを心がけましょう。

こちらはちょっとオマケ。仙山線の陸前白沢〜熊ヶ根には、第二広瀬川橋りょうがあります。1931年に完成した高さ52mを誇る鉄橋で、今は泣き旧余部鉄橋のようなスタイルが素敵です。並行する国道48号から撮影できますが、ごらんのとおり高い柵が。

でも僕が使うライカSLはバリアングルモニターではなく、画面のチルトもできません。そんなときに便利なのが、ライカSL専用ソフトを使ったカメラコントロール。iPadでアプリを立ち上げるとカメラのファインダー画像が写し出されるので、その画面を見ながら構図づくりをすることができるのです。

ライカSL (Typ 601) SUPER-VARIO-ELMAR-SL F3.5-4.5/16-35mm ASPH.(21mm) 絞り優先オート(F6.3、1/500秒) ISO 400 WB:太陽光

そして撮れたのがこちら。鉄橋の高さがバッチリと伝わる豪快な写真になりました。残念ながらライカはチルト式モニターを採用する気がまったくなさそうなので(笑)、いろいろと困るシーンもありますが、このように専用アプリを使ってカバーする方法もありますので、ぜひお試しくださいね。

中井精也からのお知らせ

8月23日の金曜日、ブログでおなじみの出羽公園にて「いつもの公園写真教室」を開催します。当日は、中井精也が皆様へ撮影指導と講評を行います。

おおまかなスケジュールは、
・午前〜午後にかけて撮影実習
・午後2時ごろ、路線バスと電車で、講評会会場へ移動
・午後6時ごろ、講評終了
を予定しています。
詳細が確定次第、ブログにて改めてご案内します。

参加方法について

参加募集は8月16日(金)の昼12時から開始します。1日1鉄!ブログにて参加申込みフォームをご用意致します。
皆様の参加をお待ちしております。

<いつもの公園写真教室(予告)>
開催日:2019年8月23日(金) 午前10時〜午後6時
撮影場所:出羽公園(埼玉県越谷市、公園内行為許可済)
講評会:東武スカイツリーライン沿線の施設を予定
参加費:おとな15000円、こども7500円、税込。

募集開始:8月16日昼12時、ブログにて告知。
定員:20名

出羽公園への地図はこちら

特記事項

・当日は、電車と路線バスで移動をします。
・バスと電車の運賃は料金に含まれません。
・登録頂いたメールアドレス宛に振込情報を返信致します。
・お振込をもって参加確定となります。
・定員に達し次第、募集を終了します。

中井精也が参加者へ写真の撮り方をアドバイスする。中井精也への質問もできるので、分からない事はどんどん聞きたい。(写真はいずれも7月に開催した「ゆる鉄画廊写真教室」のもの)
初心者にはむずかしい「流し撮り」を練習するため、電車の代わりに走る中井精也を撮影する。もちろん「流し撮り」のコツについても解説がある。
撮影のあとは、最寄りのレンタルスペースで参加者の作品を講評する。自分の作品に対して、中井精也から直接アドバイスが受けられるまたとないチャンスだ。

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォート・ナカイ代表。2015年、講談社出版文化賞・写真賞、日本写真協会賞新人賞受賞。著書・写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。2018年5月、東京都荒川区に鉄道写真ギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊」をオープンした。甘党。https://ameblo.jp/seiya-nakai/

■TVレギュラー:「中井精也のてつたび」/NHK BSプレミアム、「ヒルナンデス!沿線フォトさんぽ」/日本テレビ、「ひるまえほっと てくてく散歩」/NHK総合、中井精也の「にっぽん鉄道写真の旅」/BS-TBS、カメラと旅する鉄道風景/CS各局