カメラの描き方

第3回:簡単・はやい・正確 トレースする!

確実&時短の作画術

みなさんこんにちは! 飯田ともきです。がんばってカメラを描いてきましたが、デザインを理解する必要がなければ写真をトレースするほうが簡単で確実です。

ただぼんやり見るだけでは造形や質感を理解できません。描いてみることで1回自分の内側に落とし込み、より深い理解へとつながります。理解まではできたとしても、うまく描くのはまた話が別です。うまく描くにはペンという道具への習熟や、質感を表現するいくつかのアイデアを必要とするからです。それができたとしても、まるで写真のように正確に描く、とまではなかなかいきません。

てっとり早くカメラの絵が必要なら写真をトレースするのがおすすめです。

トレース用写真の撮影のコツ

ご存知のように広角レンズで近づいて撮るとパースがついてしまうので十分な距離をとって撮影します。100mmレンズで撮るつもりといえば分かりやすいでしょうか。あるいは、スマホだと3倍くらいの倍率にすればよさそうです。それでパースがきつくない、自然な見た目の写真が撮れます。

机が汚れていますね! トレースするだけなので問題ありません(ごめんなさい)。

描いたのがこちら。写真をなぞるだけなので簡単です!

  • 1番外側のエッジを太く描く
  • それ以外は細く描く
  • 金属と貼り革の質感の違い
  • 下になる部分(ここではボトムカバー)を太く描く
  • 丁寧に

などを意識すればよいでしょう。

線画テクニック:質感と立体感の表現

ここで使ったいくつかのテクニックを説明しましょう。

斜線で面の向きを表現する

平面をアピールするために斜線をいれました(図の「好みで」の部分)。今回は例示するために多めです。どれも同じ方向を向いているのは、これが同一の面だからです。Mの左にある(わざとらしい)斜線は下を向いており、ここが天面と比べて直角であると伝えています。

線の密度と長さで質感を描き分ける

カーブは質感に差をつけて表現しています。斜線の重なり具合で調整したり、線の長さを変えたりしていますね。線だけで質感を表現するテクニックはいくつかありますが、銅版画・エッチングにその真髄を見ることができます。アメリカン・コミックも白と黒の使い方がとても美しいです。ぜひ参考になさってください。平面をつくるのによく方眼のような斜線がありますが私は避けています。方眼は線がぴったり揃ってやっときれいになるので、難しいからですね。

白色線でエッジとハイライトを演出

塗り残しだけで細い線を描くのは難しいので、いったん面を黒く塗ってしまったあとに白色の線でエッジを描く方法もあります。絞りリングやピントリングの段差などをしっかり白ヌキしたいときや、最後にハイライトを入れたいときに使います。

著作権について:安心してトレースを楽しむために

ここまでトレースのテクニックをお伝えしてきましたが、「参考にする写真はどうすればいいの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。

自分で撮影した写真をトレースすることに問題はありません。他者が撮影したものでも、個人が練習用にする(=公表しない)のなら基本的に大丈夫です。

ただし、他人の写真からトレースした作品を公開・販売する場合は著作権の問題が生じる可能性があります。安全にトレースを楽しむなら、自分で撮影した写真を使うか、著作権フリーの素材を活用することをおすすめします。

2010年に漫画サークル「ていこくらんち」をはじめる。2015年に出した同人誌「カメラバカにつける薬」が、あれやこれやでデジカメ Watchで連載させていただくまでになりました。カメラだけじゃなく、その向こう側にいる人たちの想いを伝えていければいいなと思っています。