赤城耕一の「アカギカメラ」
第144回:改めてAPS-Cコシナ大口径レンズで磨きたい、絞りを選ぶ感覚値
2026年7月5日 07:00
単焦点標準レンズを選択するとき開放Fナンバーを気にする人は多いと思います。
選択の基準は撮影目的によって、予算に応じて選択することになるわけですが、当然F2よりもF1.4が、F1.4よりもF1.2が偉くなるわけですが、筆者は貧しいものですから特別な大口径レンズは望まないわけであります。
また、仕事ではF1.2の開放の軟らかさと優雅なボケを堪能するなんてことはほとんどできないわけです。たとえば売れっ子の俳優さんは時間がとれない。移動の合間に撮影をお願いしますというオファーがあると、場所も選べず急ぎライティングを組んで絞りはF8で、という具合に素早く撮影するわけですが、これはもう時間と効率を求めているからで、これが世界の平和に繋がるわけであります。
したがって、当サイトやデジタルカメラマガジンのレビューでは標準レンズに限りませんが大口径レンズを無理やり開放で設定して、その実力をみなければ記事になりません。
高額の対価を支払って、大口径レンズを購入したのですから、すべての撮影を開放絞りで撮影しないともったいないという論理というのがありまして、これは気持ち的にはよくわかるのですが、絞りの決定は写真表現領域でかなり重要な位置を占めていると土門拳は訴え、かつ筆者もこれに習い生きてきました。
たとえば大口径レンズで至近距離でポートレートを撮影する場合、眼にピントを合わせるといっても、まつ毛なのかまぶたなのか眼球なのか、の選択を考えることがあります。
でも、「瞳AF」という言葉があるのですから、ミラーレス機では「眼球」にフォーカスがされるのではないかと思うのだけど、これは明確に検証はしてはいないのですが、どうでしょうか。
人によって印象が異なるかもしれませんが、眼球にピントが合っても、あまり長くはないまつ毛の人の場合はなんとなく目全体のピントが甘く感じることは経験としてはあります。つまりまつ毛から眼球までピントの範囲に入ることで、ピント合わせに成功した、という感じがしてきます。
レンズの特性として、被写界深度が奥に深くて前に浅いという要件があるので、まつ毛があまり長くない人の場合は、まつ毛にピントを合わせれば眼球までが被写界深度域に入るという考え方でフィルム時代はやってきたのですが、デジタルになって高鮮鋭になるとそう簡単なものではなくなるのかもしれません。他にはメガネをかけた人の場合も厄介ですね。
メガネレンズにピントが合って、その奥の目がボケていると、ポートレート作例では失格ということになるかもしれないのですが、逆に目にピントが合って、メガネフレームが大きくボケていると条件によってはなんとなく、“外した” 気になったりもするわけです。
じゃあ、どうするんだという。
答えは簡単です。絞ればいいんですよ。まつ毛と眼球、メガネのレンズとその奥にある眼球が被写界深度内に入ればいいわけですから。
こうした条件で大枚はたいて購入した大口径レンズを絞って使うなんて、もったいないなんていう人は少ないんじゃないかなあ。
その昔のガウスタイプの大口径レンズというのは開放では残存収差がそれなりにあって、これも仕事での撮影では、開放絞りで撮影するケースはかなり稀でした。
都市伝説的な話をするならば、F1.2のレンズをF1.4の絞りで撮ると、F1.4のレンズを開放絞りで撮影するよりも像が締まり描写はいいんじゃないかといわれていました。
同様にF1.4のレンズをF2で撮るとF2のレンズを開放絞りで撮影するよりも描写はいいんじゃないかと言われましてね。
何が言いたいかといえば、絞り選択の幅というのは、画質にも余裕をもたらすということであります。
筆者のような年寄りは体験的にこのことを知っているのですが、最近のレンズは開放絞りからギンギンなのでこのおまじないのような絞り設定は意味がないとされますが、大げさにいえば撮影者が描写性能の安定のために経験則で絞り値を選ぶのは当然じゃあないかと考えていた時代もありました。
その昔はカメラメーカーのレンズカタログでも、大口径レンズをがんがん絞って撮影している作例なんかたくさん掲載されていましたが、当時はなぜ開放絞りで撮らないのか、というクレームはあまりなかったんじゃないですかね。レンズの特性よりも、作例写真の中身に比重が置かれていたようなところもあるわけです。開放絞りでの蘊蓄は筆者のような五流写真家に任せるということなのかもしれません。
なんでこんなことを長くつらつら書いているかといえば、本連載で取り上げたキヤノンのRF45mm F1.2 STMの導入についてまだ迷いがあるからです。
EOS Rのシステムは筆者にとっては、日々共にあるというよりもお仕事カメラというニュアンスが強いものですから、本レンズのように入手しやすい価格設定が行われていても、45mmでF1.2の絞りを使うような撮影シーンは、先のエピソードで申し上げたとおり仕事ではあまり思い浮かばないわけです。
このため大口径レンズと戯れようという欲望が仕事カメラではあまり起こらないわけですね。もちろん割り切って使えば済むことなのですが、本レンズが廉価設定といっても、開放での軟らかい描写では仕事ではリスキーすぎます。
とはいえ、先に述べたように、うちにあるEF50mm F1.4 USMを開放絞りで使用するよりも、RF45mm F1.2 STMをF1.4に絞って使うほうが安定感のある描写になると予想していますからRF45mmを導入する理由はあるのですが、それでも絞ったとはいえF1.4で撮影することは躊躇してしまう可能性があります。
先に述べた論法でいえばまぶたか、眼球か、という論議をかわすにはF1.4の絞り値ではまだ足りないと思うからです。
なにかどうでもいいことを書いておりますが、それだけRF45mm F1.2 STMという存在は筆者の中ではものすごく大きくて、F1.2のレンズなのにステータスな価格ではないこと、性能面でも安定したものを持っていることに喫驚したわけですが自分で使うシーンが思い浮かばないところに矛盾があるのです(笑)。
今回はコシナからXマウントの大口径標準および準広角系レンズ、NOKTON 23mm F1.2 Aspherical、NOKTON 35mm F1.2、NOKTON 35mm F0.9 Asphericalの3本をお借りして、APS-Cフォーマット用の大口径広角、標準レンズってどのようなニュアンスでみることができるのか考えてみました。Xマウントの純正レンズでは意外にF1.2の開放Fナンバーのレンズは多くないのです。
APS-Cセンサーのサイズに合わせて、標準レンズでも実焦点距離が短めですから被写界深度が深くなります。
そういう理屈ならマイクロフォーサーズ用のレンズでも同じと言われそうだけど、筆者はおおむね仕事では35mmフルサイズかマイクロフォーサーズフォーマットの2択で仕事に対応しています。仕事では、マイクロフォーサーズ機で撮影する写真はその特性からパンフォーカスの設定になることも多く、これもまた大口径レンズを使いこなしてはいないのです。
早い話が、これまでAPS-C用の標準、広角系の大口径レンズのことをきちんと学習してこなかったので、少し真面目に考えてみようと考えたのであります。
いずれもマニュアルフォーカスのレンズですから、ある程度絞り込んだとしてもピントの位置決めが重要になります。
筆者は甘えが最近強すぎて、AFで撮影する場合はフォーカスモードも自動選択にすることが多く、昨今のカメラではそこそこになんとか見られるものになってしまうので、その甘えを排除しようというわけです。
作例すべてが筆者の思い通りになっているわけではない、つまり失敗作例も含んでおりますが、この公の場をお借りして恥をかいて次に繋げようと考えております。エラいぞヲレ。

























