赤城耕一の「アカギカメラ」

第145回:マイクロフォーサーズ+レンズ固定のスナップカメラ、「LUMIX L10」に思うこと

今年のはじめあたりから、LEICA D-LUX8をお迎えしようと密かに画策していたのですが、ぐずぐずしている間に暑〜い夏になってしまいました。

そう、すでに今年は半分が終わってしまいました。日々、ときめきのない年寄りの生活をしているからでしょうか、若いころより、すぐに時間が経つような気がします。

若いころなら思い立ったが吉日みたいに、気になるカメラはすぐにお迎えし、このために生活を苦しくしながらも、快楽的カメラ酒池肉林の宴を繰り広げていたのですが、でもいまは、思い立っても先立つものがない初心高齢者ですから、欲しいカメラがあっても、静かにじっとしているわけであります。

筆者はLUMIX LX100 IIを所有しておりまして、それなりの稼働率を誇ります。本連載でもご報告したような記憶があります。

OMやLUMIX G9PROIIのようなミラーレスのマイクロフォーサーズ系のカメラと同時に仕事に携行してゆくと、思いもよらないところで活躍することがあるのです。

そのコンパクトさゆえにどこまでも入ってゆく、あるいは仕事の合間のちょっとした時間に軽くスナップしたカットが本番撮影よりもよい。なんてこともありました。それに同じマイクロフォーサーズフォーマットであるということに整合性があるからでしょうか。

スナップワークに長けるカメラは、モチーフを見つけてから撮影するまでの、“気持ちのタイムラグ” をどう埋めるかなんですが、L10は気持ち的に合いますね。
LUMIX L10/14.3mm/プログラムAE(1/800秒、F6.3、−0.7EV)/ISO 400
マイクロフォーサーズ機は通常はプログラムAEで撮影しちゃいますね。まずは考えずに出会ったものをとにかく撮るのみです。
LUMIX L10/10.9mm/プログラムAE(1/800秒、F4.5、−0.7EV)/ISO 400

そうです。だからD-LUX8をお迎えしてもいいんじゃないかという論理になるわけです。少々無理があるのか。

ご存じ、D-LUX8はLX100 IIをベースとしていますよね。その前のD-LUX7もそうでしたっけ。ライカだってパナソニックだって、そのことを公式に認めることは地球が割れてもないと思いますが、だからこそ、うちのLX100 IIをライカに出世させてやろうと考えたくなるわけですね。

まったく逆の意味で、LX100 IIがあればD-LUX8はイラネという論理もなくはないのですが、「その2機種はね、ぜーんぜん別ものと考えたほうがいいですぜダンナ、へへ」と囁く声も耳元で聞こえたりするのです。これは幻聴と信じたいのですが実際にはUIが違うし、画像処理エンジンも別のものですね。そのあたりをどう考えるのか。これは人それぞれですか。

重要なことはLX100 IIがディスコンになってもD-LUX8は現行機種として存在していることです。しかもD-LUX7から発展していることであります。だから、それらのカメラを同じ土俵で語るのは粋ではないのかもしれません。

曇天の描写をみます。紫陽花のハイライト部分の再現は見た目に近く落ち着いた描写になります。
LUMIX L10/15.4mm/絞り優先AE(1/2,000秒、F4、−0.33EV)/ISO 400

ああ、こういう低級な禅問答みたいな話はもうヤメにして、今回のお題に入りたいと思います。

はい、今回のお題はLUMIX L10ですね。

LUMIX L10はパナソニックの「LUMIX25周年記念モデル」として、新しいシリーズのレンズ固定タイプの高級コンパクトカメラとして登場してきました。

オンラインストア限定販売のチタンゴールドも悪くはないのですが、昨今、カメラはシルバーがよいと考えており。街中では「写真を撮る人」であることを周囲に知らせたほうがいいと思うわけです。

35mmフルサイズセンサー搭載のSシリーズではなくて、マイクロフォーサーズ機を25周年記念とするところにLUMIXの矜持があると筆者は信じたいのです。こういうマイクロフォーサーズの魅力的なカメラを出してくるところは、さすがだぜパナソニック。

姿と形を見た時、久しぶりに筆者は呼吸が荒くなり、脈が早くなって心臓がドキドキして、息苦しさを覚えました。不整脈か低血糖の発作の疑いもあるのですが、久しぶりに自分の価値観にハマるキレイなカメラが出てきた気がしたのです。

微光量下ですが、鮮鋭性に文句なく、色再現にも優れていますね。階調の繋ぎ方がいい感じです。
LUMIX L10/18.6mm/絞り優先AE(1/25秒、F4、−0.7EV)/ISO 1600

フラットタイプのその姿はクラシカルで同社のフルサイズミラーレスLUMIX S9にもデザインが似ています。これは好みなわけであります。

ただね、LX100 IIと大きさ比較するとそれなりにデカいですね。といってもホールディングのバランスは悪くないので、撮影時には大きさや重量に対する不満はありませんでした。右にあるわずかな膨らみのグリップもきちんと役割を果たしています。

LX100 IIとの大きさ比べであります。並べるとそこそこにL10は大きいのですが、手にしてみると気にならないわけで、これが不思議です。

ただ、少し興奮を抑えて、冷静になって全体から仔細なところまで観察してみますと、個人的にいくつか気になる要素が出てきました。

それは鏡筒まわりのデザインがLX100 IIと酷似していることです。

搭載レンズはライカの「DC VARIO-SUMMILUX10.9-34mm F1.7-2.8 ASPH.」でLX100 IIと同じ仕様となっています。このために目新しさは感じませんが、すでに定評のある描写性能であることから、改良の必要性はないと判断されたのでしょうか。それとコストの抑制も理由でしょう。

日常の光景でも歪曲が強いとリアリティが削がれたりするのですが、きちっとした描写が気持ちいいですね。
LUMIX L10/18.8mm/プログラムAE(1/1,000秒、F14、−0.7EV)/ISO 400

個人的に最も残念に感じるのが、メインスイッチを入れた時にレンズ鏡筒がするっと延びてしまうことです。

LX100 IIでも同じことを感じたのですが、これではせっかくのL10のキレイなデザインを著しく損ねます。テレ端で延びてしまうのは諦めるとしても、せめてワイド端時の全長がもう少しだけ短かくなれば、異なる印象になったのではないでしょうか。

メインスイッチを入れると、するするとレンズが出てきます。この形はずっと好きになれないのですが、なんとかならんのでしょうか。

もちろんズームレンズの仕様として全長が延びるのは宿命的な要件でありましょう。ただ、カメラの見た目を重視する筆者としてはがっかりします。この本体ボディのままで構わないので、レンズ全長に変化のない単焦点レンズのモデルを用意していただいてもいいのではないかと考えるわけであります。フォーマットは異なれど、ライカQシリーズやリコーGRなどをみれば、このことはご理解いただけるのではないかと思うわけです。

レンズの仕様は35mm判の画角換算で24-75mmと3.1倍ズームと抑え気味なのはいいと思います。開放Fナンバーが明るいので実焦点距離が短くても、絞りの設定を工夫すればそれなりのボケ効果は期待できることでしょう。

テレ端側でマクロ撮影してみます。描写性能には影響なしです。実焦点距離が短いので被写界深度は適度に深いので、合焦した花はちょうどいい被写界深度の範囲になりました。
LUMIX L10/34mm/絞り優先AE(1/640秒、F5.6、−0.7EV)/ISO 100
ワイド端で至近距離から撮ると、描写性能はどう変わるのかということを試します。これもまた変わらないですね。
LUMIX L10/10.9mm/プログラムAE(1/160秒、F2、−0.7EV)/ISO 400

もうひとつ、不満はあります。LX100 IIでは、カメラ軍艦部にシャッタースピードダイヤルがありましたが、これがL10では撮影モードダイヤルに変更されています。

筆者はずっと「撮影モードダイヤル嫌い」を強く主張してきたのですが、ついにL10でシャッタースピードダイヤルからモードダイヤルに置き換わったことに、「思想の敗北」を感じるわけであります。

ええ、たしかに普通の撮影ではシャッタースピードダイヤルなんぞ触れもしませんよ。それでも個人的に欲しいのであります。

年寄りの戯言をもう少し続けるならば、LX100 IIではシャッターダイヤルと、鏡筒の絞り環を使用すれば、メインスイッチを入れなくても、絞りとシャッタースピードを設定することができます。つまりマニュアル露出時には撮影者自身が読んだ露光量設定がすぐに可能になり撮影することができます。

果物店。光源を気にせず、そのままシャッターを切りました。これも肉眼に近い印象に写るのがうれしいですね。ISO 1600なら常用感度であります。
LUMIX L10/13.8mm/プログラムAE(1/1,000秒、F7.1、−0.7EV)/ISO 1600
昨今は昼呑みできる店も多くなり、アブないことこの上ないのですが、雑な提灯の飾りがまたソソるわけです。よい色再現です。
LUMIX L10/13.3mm/プログラムAE(1/800秒、F6.3、−0.7EV)/ISO 1600

加えて、AE撮影時には、LX100 IIでは補正量単独の露光補正ダイヤルがありますから、便利に使っていました。このダイヤルには補正量の刻みが1/3EVで表記されていますからメインスイッチを入れなくても、あらかじめ補正量を決めておくことができました。

L10には後ダイヤルが装備されました。メニュー画面で機能設定すれば後ダイヤルを露光補正ダイヤルとして使うことができますので、この設定を行った場合、LX100 IIとのUIはあまり変わりません。

ただ、露光補正量は、EVFなりLCDの表示を見て確認して設定する必要があります。もちろんメインスイッチを入れなければ、補正量は確認することができません。

とはいえ、本機はLXシリーズとは異なる立ち位置の、新しいシリーズのカメラだぜ、ということを主張したかったのでしょう。

下町の光景。こうしたモチーフは大型のセンサーの高画質機で撮影しないとダメみたいなことも言われたりしますが、L10でも見た目の印象は伝わります。渋い色の被写体はきちんと渋くきっちりと仕上げてくる印象です。
LUMIX L10/13.6mm/プログラムAE(1/1,000秒、F9、−0.7EV)/ISO 400
3倍ほどのズームですが、どうしてもワイド端とテレ端側での設定が多くなってしまうので、あえて最初から40mmくらいという設定にして撮影したり。鏡筒に焦点域表示があるといいんですが。
LUMIX L10/21.8mm/プログラムAE(1/1,000秒、F9、−0.7EV)/ISO 400

L10の機能面に目を向けてみましょう。センサーも画像処理エンジンも新設計になりました。最新のリアルタイムLUT(Look-Up Table)にも対応しています。いまや動画のための必須機能ですが、もちろん写真にも反映できます。

カメラに内蔵のフォトスタイルのほか、お気に入りのLUTを読み込むことで、オリジナルのフォトスタイルとして使用することもできます。

筆者はカメラ側の設定で色再現コントロールは行うことはほとんどありませんが、リアルタイムLUTを利用して撮影することで、撮影と同時に自身のイメージを的確に当てはめることができるでしょう。

LUTのSample3とフォトスタイルのビビッドを組み合わせます。写真は必ずしも正確な色再現がよいということはありません。とくに動画撮影ではLUTは色再現コントロールとして重要です。
LUMIX L10/19.9mm/絞り優先AE(1/25秒、F4、−0.7EV)/ISO 1600
右はLUMIX Labから「Everything golden」をダウンロードして反映しています。気に入ったLUTをあらかじめカメラ本体に読み込んでおけば、すぐに反映させることができ、かつLUTもカスタマイズできます。フォトスタイルとも組み合わせることができるのでその組み合わせは無限ですね。

筆者が非常に高く評価しているのはファインダーを省略しなかったことです。おそらく本機の特性上、多くのユーザーは背面LCDを使うことが多いと思うのですが、夏のこの時期、日中晴天下では、きわめて見にくくなります。本機はマルチアスペクト比に対応しているので、もちろんEVFを使用したほうがフレーミングもラクになります。

EVFはLX100 IIのフィールドシーケンシャル式から、OLEDになりました。色ずれがなく動体の観察時でも像が乱れにくいのが特徴ですが、あのLX100 IIのざらざら感はほとんど感じません。

背景が明るくて、描写も何らかの影響が出てくるのかと思ったのですが、何ら問題なく、窓からの自然光撮影ですがコントラストも高いですね。
LUMIX L10/15.9mm/プログラムAE(1/50秒、F2.3、−0.33EV)/ISO 800

フラッシュ非内蔵であることは論議が分かれるそうですが、筆者はフラッシュの発光部がカメラ前面にあると、デザインに悪影響を与えてしまい萎えてしまうので、非内蔵で正解だと考えています。またS9のようなコールドシューではなくて、ホットシューですから、堂々とフラッシュ撮影をすることができますし、静止画のこともきちんと考えていただいているようです。

マイクロフォーサーズは高感度領域ではいまも弱含みではあるのですが、本機は大口径レンズを搭載していますから、低照度下での撮影にも有効で、かつ手ブレ補正も内蔵していますから、被写体が静止している要件なら、超高感度撮影を避けることができます。

画質はとても優秀だと思います。レンズ固定一体型のカメラですから、搭載レンズの光学性能に合わせて画質を追い込むことができるからでしょうか。

カメラ内でどの程度の画像補正しているのかはわかりませんが、レンズは固定されているわけですから、すべて込みで画像が作られるイメージですね。まっすぐのものは、もちろんまっすぐ写るレンズです。
LUMIX L10/13.4mm/プログラムAE(1/1,000秒、F7.1、−0.7EV)/ISO 400

いまだにセンサーサイズの違いによる画質論議を聞くことがありますが、L10で撮影した画像で、マイクロフォーサーズセンサーの弱みを感じることはまずありませんでした。それよりも、搭載レンズの特性をうまく応用しマイクロフォーサーズならではの個性的な作品を制作しようと考えることに意味があるでしょう。

L10を使用して、現在ココロがかなりグラついておりまして、お迎えを考えていますが、本稿に示した、いくつかの筆者の気持ちに寄り添わない要件が、物欲のブレーキをかけています。

とはいえ、これまでLX100 IIを入れてきたバッグでは、仕切りを変更しないとL10を入れることができないではないか。などと、深夜にバッグを手にしてあれこれ考えている自分もいたりするわけであります。

ライカモノクロームDに設定しハイライトを抑え、粒子を載せてみます。デジタルでは何でもありの印象ですが、気が済むまで調整できてしまうので終わりが見えなくなることがあります。
LUMIX L10/10.9mm/絞り優先AE(1/15秒、F5.6、−0.7EV)/ISO 1600
フォトスタイルのライカモノクロームで撮影してみます。通常のモノクロームとどう違うのかという質問は来ますけど、検証してません。
LUMIX L10/10.9mm/プログラムAE(1/1,000秒、F5.6、−0.7EV)/ISO 400

ただし、現在パナソニックからは「本商品について想定を大きく上回るご予約をいただいているため、新規受注を一時停止しております」という公式のアナウンスが出ています。

これは筆者にとって、物欲抑制効果となっています。このため、いまは平和な日々を送ることができています。

筆者もバリアングルのLCDに慣れてきました。アングルの自由度が得られるので思いがけないところからモノをみることができます。
年寄りはヒザが痛いので、バリアングルのLCDを利用しました。昨今はチルト並みに慣れて曲がらずに撮れるようになったのは練習のたまものであります。
LUMIX L10/10.9mm/プログラムAE(1/1,000秒、F9、−0.7EV)/ISO 400

ただね、どうなんですか。これまでの経緯を考えますと、L10をベースにした「LEICA D-LUXなんちゃら」なんていう新しいカメラが登場してきたらどうしましょうか。

別にいいのか。ここはしばらく静観しているほうが良いのでしょうか。どうしましょう。

好きな鉄塔を見つけました。湿度の高い日でしたが、撮影時の予想よりヌケはよい描写です。
LUMIX L10/33mm/プログラムAE(1/1,000秒、F11、±0.0EV)/ISO 400
おしゃれな公衆トイレの壁でして、思わず撮影してしまいました。滑り込みセーフというやつかもしれません。線がきっちり立った描写です。
LUMIX L10/10.9mm/プログラムAE(1/1,000秒、F9、−0.7EV)/ISO 400
赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に「アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。」(インプレス)「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。