赤城耕一の「アカギカメラ」
第115回:“ヘリテージデザイン”にもの申す。「OM-3」に見るMFフィルム一眼レフの再現力
2025年4月5日 07:00
これまであれだけ、オリンパスOM-1だOM SYSTEMがどうだと騒いでいたのに、なぜ OM-3の話をしないのですかと、読者の方から連絡をいただきました。
その理由は、あちこちにこっそり書いてはいます。なんだかはしゃぎすぎるとOM SYSTEMのヘリテージ挑発に乗ったみたいに思われるのがイヤで。よく言われるんですよ、ヘリテージデザインのカメラが出るとメーカーの方に「アカギさんのために作りました」とか、ウソつけ(笑)。
ヘリテージデザインのカメラは性能も大事なんですが、各人の印象評価って大きく分かれますよね。筆者自体がこれをどう考えるのかですが、先に述べましたように、もう年寄りですから、オリンパス時代からのカメラの付き合いって、もう半世紀以上にもなるわけです。
PENやOMなど、いわゆる「昔の名前で出ています」的なミラーレスカメラが登場するたびに、「はいはいそうですか、懐かしいですね」とすぐには納得できない自分がいるわけです。頑固であります。ジジイですから仕方ないですね。
ニコンZfcが登場した時にも聞いたのですが、これは年配者のためのカメラではなくて若者向けであると。若者にウケると、それをみたジジイが騙されて興味を示すと。ホントか?
今回はOM-3をお借りして、自分なりの検証をしてみることにしますが、前述のようにまだ本機を素直に受け入れづらい自分もいるわけです。この理由をいくつか述べてみます。
まず、うちにはオリンパスPEN-Fが現在のヘリテージデザインカメラの絶対的エースとして、現在も活躍しています。
この当時はまだ「ヘリテージ」などという謎の文言が出てはいなかったと思いますが、フィルム時代のハーフサイズ一眼レフPEN Fシリーズを意識して出てきたわけです。面白いのはPENのデザインに加えて、一部、スクリューマウントライカからの影響を受けているところもあり、ここで独自のオリジナリティをみせていました。
ただし、現実としてはPEN-Fは一部の人には評価されたのですが、実売としてはさほど数が出なかったというのが事実ということを聞きまして。これは若者に向けなかったからですかね? そうでもないと思うけど。
よく言われるのですが、カメラ好きな人やカメラ雑誌の特集でことのほか騒いだり、話題になったりするカメラは意外に一般的には受け入れられず、あまり商売にならないという現実があります。
これは某カメラメーカーの方に言われましたから事実でしょう。でも筆者だって1ユーザーの立場ではありますから、少なくても趣味カメラは気に入ったものを楽しく使いたいのは事実です。
このことでOM SYSTEMとしてPEN-Fの後継機は潔く諦めて、OM-3の路線で行きますよということにもみえるわけです。
そんなにPEN-Fはダメなのかなあと思っていたんですが、やはりディスコンになってから、中古相場でも価格は高値維持されています。デジタルカメラとしては珍しいことでありますが、少量しか売れないカメラがディスコンになってから人気が出て高額になるのは、珍しいことではありません。
ヘリテージデザイン思想の方向としてはPEN-FとOM-3はカブることになります。歴史としてはPENのあとにOMが登場しておりますから、これも段階としては似ていますよね。オリンパスのミラーレスの初号機はPEN E-P1でしたし。そこからOMになってゆくというのは既定路線でしょう。筆者はE-P1はすんなり受け入れることができましたが、2012年に登場するミラーレスOM名の初号機OM-D E-M5をすんなりと受け入れることはできませんでした。これはOMとの付き合いの長さからきているのだろうなと。
それに筆者はミラーレス機のデザインはアタマのとんがった一眼レフスタイルのものよりも、長方形のぺったんこなカメラがほしいわけです。少なくてもプライベートで使用するカメラはそうありたい。
ミラーレスは一眼レフに媚びてはいけないと考えています。でもファインダーの大きさやデバイスの性能を考えると、どうしても一眼レフスタイルにならざるをえないようです。
ヘリテージデザインという文脈でゆくと、OM SYSTEM OM-1とOM-1Mark IIの後に登場するOM SYSTEM OM-3の方が、フィルム一眼レフのOM-1に似ているということに筆者はかなりの衝撃受けました。
つまりOM-1名称を冠するならば、最初から頑張って、今回のOM-3のデザインにするのが筋だったのではないかと考えるわけです。
また、筆者はフィルムのオリンパスOM-3 Tiも現役で使用しておりますから、名称的にも自分の中では釈然としないわけであります。少し怒っています。
フィルムのOM-3はマルチスポット機のOM-4をフルメカニカルにした、傍流の機種ともいえるかなりマニアックなカメラでした。
マルチスポットで測光した値を演算して表示させ、はたしてどのような意味があるのかと思いました、当然、売れなかったOMの代表格でもありますが、この後継機としてOM-3Tiが登場した時は、AFに乗り遅れたオリンパス一眼レフのやぶれかぶれな企画にもみえました。でも筆者は粋に感じて、2台導入はしましたけど。両機ともに数が出なかったのでこれも中古市場ではかなりの高額で取引されています。
まあまあ、そんなに固いこと言いなさんなという声が聞こえてきそうですが、先日、とあるカメラ店で出会ったお客さんとたまたまOM-1の話になったのですが、どうにも噛み合わない。
ヘンだなあと思ったら、私はデジタルのOM-1の話を、お客さんはフィルムのOM-1の話をしていたというオチがありまして、これもまた「昔の名前で出ています」の弊害というわけであります。
もっともライカやペンタックスのブランドでも同姓同名のカメラは存在していますから、OMのことだけをことさら言っても仕方ないわけですけど、かりにゲンを担ぐために名前を同名にするというのならば、筆者なら、栄光のフィルム一眼レフである「OM-2」と名前をつけますけどねえ。いや、もしかすると意図的にこの名称は空けてあり、将来超絶高性能OMが登場してくるのかもしれませんね。
ここまで書いたら疲れましたが、今回のOM-3の話も頑張ってすることにします。
多くのヘリテージデザインのカメラがそうであるようにOM-3もグリップを廃しています。このためとてもシンプルで、シュッとした男前にみえますね。フィルムOM-1では上部にISO感度ダイヤルがあり、おそらくその中に摺動抵抗が入っていたはず。
シャッタースピードダイヤルはマウント基部にありましたが、これらは踏襲されていません。
フィルムを巻き上げる必要はないから、前後ダイヤルやタッチパネル操作でことたりますが、私はあまりモードダイヤルが主張しているカメラは好きではないので、本来はシャッタースピードダイヤルが表にあるカメラが好きです。使用するしないにかかわらずです。メインスイッチの位置はフィルムOM-1と同じ位置にありますが、ずいぶん可愛らしくなりました。
各種ダイヤル形状や仕上げはことのほか気が使われた仕上げであり、小型だけど、緻密感を感じます。
フィルムOM-1のように少々華奢なイメージがあるのですが、マグネシウム合金のボディ各所にシーリング部材を配し、OM-1 Mark IIと同等となるIP53相当の防塵防水性能も備えているそうです。
本機の特徴のされるクリエイティブダイヤルはPEN-FとかE-P7からの継承機能ですが、筆者はほとんど使用したことがありません。
プロファイルコントロールやアートフィルターの設定はRAWのファイルをOM Workspaceで処理するか、あるいはカメラ内RAW現像時に反映させます。
だからダイヤル自体はありがたみがないのですが、グリップ代わりというか指のとっかかりにはなりますし、撮影現場でリアルタイムにその効果を確かめたいような場合は便利でしょう。
小型の単焦点レンズを装着しているときはグリップがなくても問題は感じませんが、大きな長焦点レンズを使う場合はOM-1 Mark IIと比べるとホールディングが少々不安定になってしまうことは否めません。
でもMFフィルム一眼レフのデザインに寄せるには、グリップは邪魔ですね。フィルムのOM-1には専用の小型のモータードライブ1が装着できるのですが、こうしたデザイン形状のグリップを用意するという手段はありそうですがどうでしょうか。
ただ、OMの得意とするボディ内手ブレ補正があるので、ホールディングバランスが少々悪くなっても実用上は問題ないと思います。
OM-1 Mark IIとの撮影スペックの違いは連写コマ速度でしょうか。
OM-1 Mark IIのメカシャッターは最高約10コマ/秒ですがOM-3では約6コマ/秒となりました。筆者は意図的に連写速度は4コマ/秒程度に落として設定していますので、これは問題にはなりません。
なおAF/AE固定で最高約120コマ/秒、AF/AE追従で約50コマ/秒の高速連写はOM-1 Mark IIとは変わらないので、高速連写大好きさんにも不満なく使うことができるでしょう。そうでもないですか?
画質面では信頼のOM SYSTEM OM-1、OM-1 Mark IIと同じということですから、信用できますね。画の好み云々はあると思いますが。
筆者はアサインメントでもOMは使用していることもあり、OM-1を街歩き撮影などに持ち出すと、なんだかお気楽感が薄れてしまいます。仕事を思い出すからであります。でもOM-3は、借りものとはいえ、気楽に使用することができました。
作例はほとんどカメラ任せのままですが、被写体認識が少々甘かったり機能しないこともありましたけど、このあたりは、どんどん改良されてゆくのでしょう。
ちなみにOM-3を膝に乗せて電車に乗ってたら、女性からOM-3に熱い視線をいただいたような気がしました。いや、思い違いかもしれません。それに酒宴にぶら下げて行ったら、ちょっと見せてください、と人気になりました。うーむ……人気ありますね。
OM-3、そう遠くない将来、うちにお迎えせねばならんカメラになるかもしれんなー。でも、このところ、あれもこれもそれも出ましたしねえ、お迎えしたいものがたくさんある。悩ましいですよね。楽しい悩みかもしれないのですが。