赤城耕一の「アカギカメラ」

第115回:“ヘリテージデザイン”にもの申す。「OM-3」に見るMFフィルム一眼レフの再現力

これまであれだけ、オリンパスOM-1だOM SYSTEMがどうだと騒いでいたのに、なぜ OM-3の話をしないのですかと、読者の方から連絡をいただきました。

その理由は、あちこちにこっそり書いてはいます。なんだかはしゃぎすぎるとOM SYSTEMのヘリテージ挑発に乗ったみたいに思われるのがイヤで。よく言われるんですよ、ヘリテージデザインのカメラが出るとメーカーの方に「アカギさんのために作りました」とか、ウソつけ(笑)。

ヘリテージデザインのカメラは性能も大事なんですが、各人の印象評価って大きく分かれますよね。筆者自体がこれをどう考えるのかですが、先に述べましたように、もう年寄りですから、オリンパス時代からのカメラの付き合いって、もう半世紀以上にもなるわけです。

PENやOMなど、いわゆる「昔の名前で出ています」的なミラーレスカメラが登場するたびに、「はいはいそうですか、懐かしいですね」とすぐには納得できない自分がいるわけです。頑固であります。ジジイですから仕方ないですね。

さくらトラムと本物のサクラを絡めようという意図です。あざといです。でも逆光でもこの階調とシャープネスが再現されますからマイクロフォーサーズは侮れないんですよね。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/47mm(94mm相当)/プログラムAE(1/100秒、F11、−0.7EV)/ISO 200
光線状態がフクザツですが、なかなか階調の繋がりがいいですね。クリアであることにも驚いています。
OM SYSTEM OM-3/SIGMA 19mm F2.8 DN/19mm(38mm相当)/プログラムAE(1/125秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 400
ビルの上の丸型の給水塔も好物でして、見つけると撮影しちゃうわけです。青空に玉が映えます。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/54mm(108mm相当)/プログラムAE(1/640秒、F11、−0.7EV)/ISO 400

ニコンZfcが登場した時にも聞いたのですが、これは年配者のためのカメラではなくて若者向けであると。若者にウケると、それをみたジジイが騙されて興味を示すと。ホントか?

今回はOM-3をお借りして、自分なりの検証をしてみることにしますが、前述のようにまだ本機を素直に受け入れづらい自分もいるわけです。この理由をいくつか述べてみます。

まず、うちにはオリンパスPEN-Fが現在のヘリテージデザインカメラの絶対的エースとして、現在も活躍しています。

この当時はまだ「ヘリテージ」などという謎の文言が出てはいなかったと思いますが、フィルム時代のハーフサイズ一眼レフPEN Fシリーズを意識して出てきたわけです。面白いのはPENのデザインに加えて、一部、スクリューマウントライカからの影響を受けているところもあり、ここで独自のオリジナリティをみせていました。

ただし、現実としてはPEN-Fは一部の人には評価されたのですが、実売としてはさほど数が出なかったというのが事実ということを聞きまして。これは若者に向けなかったからですかね? そうでもないと思うけど。

目についた光景は片っ端からいただきます。とにかく気張らずに使えるカメラ、どこへでも持っていけるカメラとして優秀です。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/25mm(50mm相当)/プログラムAE(1/800秒、F11、−0.7EV)/ISO 400
都市の隙間みたいなところにふと、こういう光景を見つけるとまったりしますね。素直にサクっと撮れて、しかも高画質です。
OM SYSTEM OM-3/SIGMA 19mm F2.8 DN/19mm(38mm相当)/プログラムAE(1/2,500秒、F11、−0.7EV)/ISO 800

よく言われるのですが、カメラ好きな人やカメラ雑誌の特集でことのほか騒いだり、話題になったりするカメラは意外に一般的には受け入れられず、あまり商売にならないという現実があります。

これは某カメラメーカーの方に言われましたから事実でしょう。でも筆者だって1ユーザーの立場ではありますから、少なくても趣味カメラは気に入ったものを楽しく使いたいのは事実です。

このことでOM SYSTEMとしてPEN-Fの後継機は潔く諦めて、OM-3の路線で行きますよということにもみえるわけです。

そんなにPEN-Fはダメなのかなあと思っていたんですが、やはりディスコンになってから、中古相場でも価格は高値維持されています。デジタルカメラとしては珍しいことでありますが、少量しか売れないカメラがディスコンになってから人気が出て高額になるのは、珍しいことではありません。

街の定食屋さんにお昼に入ったらこの人に見つめられて食事をすることになり落ち着きませんから、仕返しに撮影しました。顔認識はさっと機能しました。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 lI/17mm(34mm相当)/プログラムAE(1/125秒、F3.5、−0.7EV)/ISO 400
歩いていたら、見つめられたような気がしたので近づいたら、吊り下げられた植木でした。もうノールックで適当に撮影したら、ちゃんとフォーカスも合ってました。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 lI/17mm(34mm相当)/プログラムAE(1/400秒、F6.3、−0.7EV)/ISO 400

ヘリテージデザイン思想の方向としてはPEN-FとOM-3はカブることになります。歴史としてはPENのあとにOMが登場しておりますから、これも段階としては似ていますよね。オリンパスのミラーレスの初号機はPEN E-P1でしたし。そこからOMになってゆくというのは既定路線でしょう。筆者はE-P1はすんなり受け入れることができましたが、2012年に登場するミラーレスOM名の初号機OM-D E-M5をすんなりと受け入れることはできませんでした。これはOMとの付き合いの長さからきているのだろうなと。

それに筆者はミラーレス機のデザインはアタマのとんがった一眼レフスタイルのものよりも、長方形のぺったんこなカメラがほしいわけです。少なくてもプライベートで使用するカメラはそうありたい。

ミラーレスは一眼レフに媚びてはいけないと考えています。でもファインダーの大きさやデバイスの性能を考えると、どうしても一眼レフスタイルにならざるをえないようです。

ヘリテージデザインという文脈でゆくと、OM SYSTEM OM-1とOM-1Mark IIの後に登場するOM SYSTEM OM-3の方が、フィルム一眼レフのOM-1に似ているということに筆者はかなりの衝撃受けました。

つまりOM-1名称を冠するならば、最初から頑張って、今回のOM-3のデザインにするのが筋だったのではないかと考えるわけです。

フィルム一眼レフのOM-1N(1979年)とOM-3を並べてみます。似ているといえばそうですけど、OM-1Nを発売日から使用しているので、なんだか、ちょっと恥ずかしさを感じます。OM-1Nも現役使用中だからです。

また、筆者はフィルムのオリンパスOM-3 Tiも現役で使用しておりますから、名称的にも自分の中では釈然としないわけであります。少し怒っています。

フィルムのOM-3はマルチスポット機のOM-4をフルメカニカルにした、傍流の機種ともいえるかなりマニアックなカメラでした。

OM-3とOM-4からスポット測光ボタン、ハイライト、シャドーコントロールボタンも用意されているのですが、マニュアル露出なのでどのくらい意味があるのかわかりません。
OM-3Ti(1994年)とOM-3を比べてみます。OM-3Tiは外装はチタン製。OMで唯一、スローシンクロ撮影が可能なりました。スポットの演算機能は最高8点ですが、多くの箇所をスポットして演算したら、平均測光と同じじゃないかと。

マルチスポットで測光した値を演算して表示させ、はたしてどのような意味があるのかと思いました、当然、売れなかったOMの代表格でもありますが、この後継機としてOM-3Tiが登場した時は、AFに乗り遅れたオリンパス一眼レフのやぶれかぶれな企画にもみえました。でも筆者は粋に感じて、2台導入はしましたけど。両機ともに数が出なかったのでこれも中古市場ではかなりの高額で取引されています。

まあまあ、そんなに固いこと言いなさんなという声が聞こえてきそうですが、先日、とあるカメラ店で出会ったお客さんとたまたまOM-1の話になったのですが、どうにも噛み合わない。

ヘンだなあと思ったら、私はデジタルのOM-1の話を、お客さんはフィルムのOM-1の話をしていたというオチがありまして、これもまた「昔の名前で出ています」の弊害というわけであります。

もっともライカやペンタックスのブランドでも同姓同名のカメラは存在していますから、OMのことだけをことさら言っても仕方ないわけですけど、かりにゲンを担ぐために名前を同名にするというのならば、筆者なら、栄光のフィルム一眼レフである「OM-2」と名前をつけますけどねえ。いや、もしかすると意図的にこの名称は空けてあり、将来超絶高性能OMが登場してくるのかもしれませんね。

なかなか良い居酒屋さんを発見しました、今度入ってみます。実焦点距離が短いので被写界深度が深く、すぐにパンフォーカスになります。
OM SYSTEM OM-3/SIGMA 19mm F2.8 DN/19mm(38mm相当)/プログラムAE(1/320秒、F7.1、±0.0EV)/ISO 400
これもパンフォーカスだから納得できる画です。斜光線ですがハイライトの再現も良い感じです。なかなか優れたレンズですが、像面位相差に対応していないようで、オートフォーカスは速くはありません。
OM SYSTEM OM-3/SIGMA 19mm F2.8 DN/19mm(38mm相当)/プログラムAE(1/500秒、F11、−0.3EV)/ISO 400

ここまで書いたら疲れましたが、今回のOM-3の話も頑張ってすることにします。

多くのヘリテージデザインのカメラがそうであるようにOM-3もグリップを廃しています。このためとてもシンプルで、シュッとした男前にみえますね。フィルムOM-1では上部にISO感度ダイヤルがあり、おそらくその中に摺動抵抗が入っていたはず。

シャッタースピードダイヤルはマウント基部にありましたが、これらは踏襲されていません。

軍艦部はフィルムOM-1と比較するとけっこう賑やかな印象です。上から見るとボタン、ダイヤル類で「マル」のカタチが増えた印象です。

フィルムを巻き上げる必要はないから、前後ダイヤルやタッチパネル操作でことたりますが、私はあまりモードダイヤルが主張しているカメラは好きではないので、本来はシャッタースピードダイヤルが表にあるカメラが好きです。使用するしないにかかわらずです。メインスイッチの位置はフィルムOM-1と同じ位置にありますが、ずいぶん可愛らしくなりました。

メインスイッチのレバーはもっと堂々としていていいんじゃないのかなあ。静止画、動画の切り替えはこのダイヤルを使いますが、指標が2時方向というのがよくわからないですね。メインスイッチの白線と並行に並んだアイコンが現在その機能を果たすという方が良くないですか。

各種ダイヤル形状や仕上げはことのほか気が使われた仕上げであり、小型だけど、緻密感を感じます。

ニコンZfみたいに、なんちゃってケーブルソケットをつけておけばいいのにと思いました。穴がないとソフトシャッターレリーズをつけられないじゃないですか。

フィルムOM-1のように少々華奢なイメージがあるのですが、マグネシウム合金のボディ各所にシーリング部材を配し、OM-1 Mark IIと同等となるIP53相当の防塵防水性能も備えているそうです。

本機の特徴のされるクリエイティブダイヤルはPEN-FとかE-P7からの継承機能ですが、筆者はほとんど使用したことがありません。

プロファイルコントロールやアートフィルターの設定はRAWのファイルをOM Workspaceで処理するか、あるいはカメラ内RAW現像時に反映させます。

だからダイヤル自体はありがたみがないのですが、グリップ代わりというか指のとっかかりにはなりますし、撮影現場でリアルタイムにその効果を確かめたいような場合は便利でしょう。

クリエイティブダイヤルですね。グリップがないので指がかりにはなりますが、少し抵抗感ありますね。
バリアングルモニターにはもう慣れましたから、どんどん採用していただいて大丈夫です。ただ、作り込みはもうちょい高級感欲しいですね。
頭の上にカメラを上げて、ノールックで撮ってます。周囲が明るいので、バリアングルモニターもよく見えませんからテキトーに撮ったんですが、大丈夫でした。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/24mm(48mm相当)/プログラムAE(1/1,250秒、F11、−0.7EV)/ISO 400
昭和感たっぷりの街角です。建物を歪めたくないので、カメラを頭上に上げてバリアングルモニターを頼りにフレーミングしていますがきっちり実直に描写されました。
OM SYSTEM OM-3/SIGMA 19mm F2.8 DN/19mm(38mm相当)/プログラムAE(1/1,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 400

小型の単焦点レンズを装着しているときはグリップがなくても問題は感じませんが、大きな長焦点レンズを使う場合はOM-1 Mark IIと比べるとホールディングが少々不安定になってしまうことは否めません。

でもMFフィルム一眼レフのデザインに寄せるには、グリップは邪魔ですね。フィルムのOM-1には専用の小型のモータードライブ1が装着できるのですが、こうしたデザイン形状のグリップを用意するという手段はありそうですがどうでしょうか。

フィルムOM-1にはモータードライブ1という専用のモータードライブが用意されているのですが、これが小さくていいわけです。バッテリーは着脱式で、はずすと底面が薄いのです。OM-3にはこのグリップに似せたデザインで、中にバッテリーを仕込むというのはどうでしょうか。

ただ、OMの得意とするボディ内手ブレ補正があるので、ホールディングバランスが少々悪くなっても実用上は問題ないと思います。

OM-1 Mark IIとの撮影スペックの違いは連写コマ速度でしょうか。

OM-1 Mark IIのメカシャッターは最高約10コマ/秒ですがOM-3では約6コマ/秒となりました。筆者は意図的に連写速度は4コマ/秒程度に落として設定していますので、これは問題にはなりません。

なおAF/AE固定で最高約120コマ/秒、AF/AE追従で約50コマ/秒の高速連写はOM-1 Mark IIとは変わらないので、高速連写大好きさんにも不満なく使うことができるでしょう。そうでもないですか?

カレーはなかなか上手く撮れない代表の料理かも。豆とチキンのカレーですが、クリアで良い感じの再現性です。
OM SYSTEM OM-3/SIGMA 19mm F2.8 DN/19mm(38mm相当)/プログラムAE(1/80秒、F4.5、−0.3EV)/ISO 800

画質面では信頼のOM SYSTEM OM-1、OM-1 Mark IIと同じということですから、信用できますね。画の好み云々はあると思いますが。

筆者はアサインメントでもOMは使用していることもあり、OM-1を街歩き撮影などに持ち出すと、なんだかお気楽感が薄れてしまいます。仕事を思い出すからであります。でもOM-3は、借りものとはいえ、気楽に使用することができました。

作例はほとんどカメラ任せのままですが、被写体認識が少々甘かったり機能しないこともありましたけど、このあたりは、どんどん改良されてゆくのでしょう。

ちなみにOM-3を膝に乗せて電車に乗ってたら、女性からOM-3に熱い視線をいただいたような気がしました。いや、思い違いかもしれません。それに酒宴にぶら下げて行ったら、ちょっと見せてください、と人気になりました。うーむ……人気ありますね。

OM-3、そう遠くない将来、うちにお迎えせねばならんカメラになるかもしれんなー。でも、このところ、あれもこれもそれも出ましたしねえ、お迎えしたいものがたくさんある。悩ましいですよね。楽しい悩みかもしれないのですが。

盛り場の昼間、それこそ眠そうな町なわけです。目を覚ますために、シャドーは成り行きにて、コントラストが強い条件でパリッとした仕上げになりました。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/18mm(36mm相当)/プログラムAE(1/500秒、F11、−0.7EV)/ISO 400
OM SYSTEMの超絶名玉はこのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROだと信じています。OM-3にはグリップがないので、ホールディングは気に入らないのですが、実用上問題はありません。シンクロ手ブレ補正に期待できます。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/61mm(122mm相当)/プログラムAE(1/800秒、F11、−0.7EV)/ISO 400
右はクロスプロセス設定で撮影しています。単色の色の階段だったので、良いのではないかと。色の深みというより、OM-3はどのような解釈をするかが知りたかったわけです。
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/61mm(122mm相当)/プログラムAE(1/400秒、F8.0、−1.0EV)/ISO 400
電車の写真とか筆者は1mmも興味がないので撮影するとものすごくヘタです。流し撮りのマネっこをちょっとだけしたのですが、ニュークレール1を反映させてみました(右)。少しはごまかせますか?
OM SYSTEM OM-3/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/12mm(24mm相当)/プログラムAE(1/64秒、F22、−0.7EV)/ISO 200
赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に「アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。」(インプレス)「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。