赤城耕一の「アカギカメラ」
第54回:EOS R7とEFレンズの邂逅
2022年9月20日 09:00
昨日は「敬老の日」だったというのに、筆者は誰からも相手にされず、お誘いもありませんでした。友達少ない老マーメイドです。そこでキヤノンEOS R7と戯れ、この原稿を書くことにしました。寂しい老人です。
EOS R7は購入後、ほぼ毎日、アサインメントでもプライベートでも撮影しているんじゃないかなあ。筆者としてはすごく珍しいんですよねEOSと戯れるなんてね。フィルムのEOS 7sはプライベートでも長いこと使っており、一時は集中的に撮影したことがあったのですが、それ以来かもしれません。
この理由は単純です。EOS R7のサイズが小さいことですね。いや、お仕事カメラのEOS R5と比べて極端に小さいというわけではないのですが、どこかお気軽感が増していることは確かで、いつも持ち歩きたくなります。これ、スマホに加えて、ということですから、携行したくなる魅力がどこかにあるわけです。これはよくできたカメラである証であります。
ただEOS R5ですと、プライベートな時間に持ち出すまではいいのですが、街角スナップとかを撮って、本気で画像を追い込むとデータがデカいし(約4,500万画素)処理が面倒臭いとかなるんですが、EOS R7はそれに比較するとずいぶんと取り扱いラクですね。
それでも3,000万画素とかあるんで、いざという時は、きっちり仕上げることができますから遊びを超えた写真制作も可能であります。
で、例のごとくなんですが、筆者の場合には問題がございます。RFマウントのレンズがいまRF16mm F2.8 STMとRF35mm F1.8 MACRO IS STMとRF50mm F1.8 STMしか所有していないことであります。
今はミラーレス時代なんだからEFレンズなんか潔く全部売り飛ばしてRFレンズに買い換えるという方向が、デキる写真家のあり方だと思うのですが、なんだかね。一応査定もしてみたのですが、EFレンズの下取りは安いんです。勘弁してくれよくらいの価格を提示されて、悲しくなるわけです。
なんせ還暦超えてる年寄りですからね。仕事は細くなる一方ですし、目は霞むし、膝は痛い。人生の残りの時間も少なくなってきましたのでRFレンズを取り揃えても、自分が生きている間にモトをとれる保証はありません。
若い時はろくに使いもしないのに交換レンズを買い込み、ゼロハリのケースに隙間なく詰めることで悦に入ってましたが、それが間違いであったことを今ごろ気づくわけです。ええ、もう手遅れです。
したがって、もうお金もないことですし、長いこと愛用しとりますEOS一眼レフ用のEFレンズで当面は行こうじゃないかとなるわけです。いや、今後可能な限りずっとかもしれないですけどね。
EF-RFのマウントアダプターでEFレンズを装着しますが、なんとキヤノン純正で3種類も用意されています。筆者はコントロールリングつきの「コントロールリングマウントアダプター EF-EOS R」を選択して、コントロールリングにはAv(絞り値)を割り振っております。EFレンズにはなかった絞り環もどきを操作して楽しもうというわけです。このあたりも年寄りくさい発想です。
言うまでもなく、EFレンズではEOS R7の持つ強力なポテンシャルを引き出すには不十分であります。スペックマニアさんには許せない行為でもありましょう。正直、フランジバックの短いRFレンズはレンズの光学性能を引き出しやすいということもあるのでしょうが、いずれも性能に関してはとても評価が高いですね。多くのレンズのお値段も高いけど。
いいんです。アサインメントのレビューじゃないし。開き直ります。結論を先に言えば、筆者の使用目的ではEFレンズの性能で十分すぎるほどでございました。満足です。
何度か書いておりますが、EOS EFマウントは当初はフルに電子化された最新のマウントなのに、少し軽んじて見られたこともありましたね、記憶によれば。保守的なプロは硬直しているので、電磁絞りでさえ少しバカにしてるようなところがありました。
そう、往時のニコンFマウントレンズの絞りはカメラボディ側からレバーを動かし、叩きつけるようにして、レンズの絞りを動かしていたわけですが、このために絞り込んだ時にもコマ速は落ちないぜ、と自慢していた記憶があります。フィルム時代のEOSは絞り込むとコマ速が落ちるとか言われておりました。ウラは取れてませんが、筆者はこういうことを問題にすることの方がおかしいんじゃないかと思っておりましたけどね。で、Fマウントニッコールも最終的には電磁絞りになったりしますからね、おいおい話が違うじゃねえかよとか思いましたけどね。
話が余計な方向にすぐに行きますね、すみません。いや、何が言いたいかといえば、EFマウントでフルに電子化したからこそ、EOS Rシリーズのカメラにマウントアダプターで装着しても実用上は問題なく動作するんじゃないかということを言いたいだけであります。筆者は新旧製品を確実に繋いでゆくことに、真摯に対応したキヤノンの姿勢に打たれたのであります。
EOS R7はAPS-Cサイズセンサー搭載のEOSですから、装着レンズの焦点距離を1.6倍した焦点距離のレンズと同等の画角になります。ここでもEFレンズの持つ本来の性能を出しきれないという見方もあります。
逆にいうとフルサイズのEFレンズ描写の一部で確認しておりますが、弱みである画面四隅の画質低下部分をEOS R7で使用することでカットできる理屈になります。イヤなところを見なくても済むわけです。中には四隅のよろしくない画質が好きという奇特な方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方はフルサイズのEOSをお使いください。
EFレンズは、当たり前ですがEOS一眼レフ用に設計してありますからサイズは大きめで、小さいEOS R7に装着すると、中には少々不恰好になるものもあるのですが、そうしたアンバランスさを許容しちゃうような面白さもあります。こういう変態的な外観を愛でる楽しみは筆者だけかもしれませんけど。
先に描写性能の話をしましたが、EFレンズもRFレンズも多くがデジタルレンズオプティマイザ(DLO)のレンズ補正機能に対応していますから、レンズデータがあるものなら、古いレンズを使用してもそれなりに安心ではありますし、その効果も確認しています。
レンズの多くは新型になればなるほど性能は向上しますが、旧型レンズの画質のマイナス面を強調したりしてあまり神経質になるのも、写真の楽しみとしてはなんだか滑稽な気もしますね。一般的な使用に関しては一、二世代程度古いレンズで描写の違いなどで大騒ぎする必要はないのではないでしょうか。
ここではうちにあるEFレンズを試しましたが、みんな古いわけです。それでも一緒に仕事してきた仲間意識があります。EOS R7で使用した結果は全部合格というか、筆者の仕事なら十分に対応できることがわかりました。
とても良い印象だったのは画質云々というより、とくに広角や標準大口径レンズを使用する場合にデュアルピクセルCMOS AFでのフォーカシングは、EOS一眼レフの位相差AFよりも、高い合焦精度を感じることですね。EFレンズでは手ブレ補正の協調補正ができないようですが、ボディ内の手ブレ補正は機能するようです。これ、ボディ側の手ブレ補正だけでも、補正のありなしでは気持ちの余裕がかなり違います。
人物をはじめとする被写体認識も機能するので、このAFの便利さは感動的ですね。たまに遠ざかる人物の後頭部の後を追い続けてしまうのには苦笑してしまいますが、フォーカシングは確実で、トラッキングなんかも執拗に追いますね。一度捕まえたら逃れられない感じがします。怖いくらいです。
ただ、一部の古いEFレンズの場合は機能や測距エリアに制約があるものもあります。それでもまず大きな問題にはならないのでしょうし、便利な部分も際立ってきます。
EOS R7にEFレンズを使用しても、一眼レフと異なるミラーレスならではの特性を生かした制作を行うことができます。これが今回の結論となります。