特別企画

まさに"フライングカメラ"!DJI Phantom 4を試す

静止画用途にも使っていきたい、機能満載の最新ドローン

近年、ポジティブまたはネガティブの両面で、「ドローン」という単語を耳にする機会が増えたはずだ。最近では家電量販店でも購入できるようになっており、以前よりは身近な存在になってきた。

筆者も2年半ほど前からドローンによる撮影に取り組んでいる。DJIの「S1000」「S900」という大型機から「Inspire 1 Pro」小型機の「Phantom 3」まで、用途に合わせて使い分けている。

筆者の場合は主に空中からの動画撮影で使用しているが、ドローンのおかげで低予算でも映画のような画が撮れるようになった。

もちろんドローンは静止画の撮影にも使える。写真に詳しい方なら、カメラの位置を構えるだけで、写真が変わることはご存知だろう。ドローンは最大で100m近くの高所から撮影できる。個人レベルででは撮影できなかった世界だ。

DJI Phantom 4 / 1/200秒 / F2.8 / ISO100 / 20.7mm
DJI Phantom 4 / 1/3,200秒 / F2.8 / ISO100 / 20.7mm
DJI Phantom 4 / 1/160秒 / F2.8 / ISO100 / 20.7mm
DJI Phantom 4 / 1/160秒 / F2.8 / ISO100 / 20.7mm

ドローンのパイオニアとして世界的に圧倒的なシェアを誇るDJI。そのドローンは、ラジコンなどに詳しくなくても簡単に飛ばせるのが特色。今回は最新モデルの「DJI Phantom 4」(3月15日発売 直販価格・税込18万9,000円)を紹介したい。

飛行中のブレを強力に補正

Phantomシリーズは、DJIが提供するドローンの中でも最もユーザーが多く、手軽に扱える機種だ。今回紹介するPhantom 4は、ドローンとカメラが一体型になっているモデルであり、その名も「フライングカメラ」とも呼ばれている。実質、撮影専用機と言ってよいだろう。

DJI Phantom 4

送信機側には露出補正のダイヤルやカメラの上下の角度調整ダイヤル、シャッターボタン、動画の録画ボタンなどを備える。送信機にiPadやAndroidタブレットなどを接続し、「DJI GO」アプリを起動して撮影や操作を行なう。

これが送信機。スマートデバイスを取り付けてみる。
9.7インチのiPadを装着。
こちらはiPhone 6を装着した例。
送信機の左手側操作部。
右上のボタンがシャッターボタン。露出補正ダイヤルも備えている。
静止画・動画はmicroSDカードに記録される。

カメラ部のスペックを見てみよう。撮像素子にはソニーのExmor 1/2.3型センサーを搭載。有効画素数は1,200万画素。

レンズは単焦点で、35mm判換算20mm相当の画角になる。絞りはF2.8固定。

感度の調整幅はISO100-3200(動画)、ISO100-1600(静止画)となっている。

連写も可能で、3/5/7枚を設定できる。

ドローンからの映像はHD(720P)画質で確認できる。ダウンリンクは最長で3.5km(国により制限あり)というスペック。動画は最大で4,096×2,160 24/25P、3,840×2,160 24/25/30pに対応。1,920×1,080であれば120Pにも対応できる。また、D-Logモードにも対応している。

静止画はJPEG、RAW(DNG RAW)を記録可能。写真として見ると、一般的なデジタルカメラと比べて少しシャープさが物足りない印象。RAW現像で少しシャープネスなどの調整を行うとより良いだろう。

4K動画はディテールもしっかり写っており、このサイズのイメージセンサーということを考えると十分なクオリティと言える。

空撮に欠かせないジンバルは、静止画用カメラで言う手ブレ補正機構に近い役割を果たす。機体が傾いた場合でもカメラを水平に保ってくれる大事なパーツだ。この部分が優秀でないと、良い空撮動画や写真が撮れない。

Phantom 4は3軸ジンバルを搭載しており、前後左右の傾き、そしてヨー(yaw)を補正することができる。撮影してみると、小さなブレもなくとても優秀だ。

オートパイロット機能も充実。簡単操作で被写体追尾AFも

「ドローンで撮影をしている」というと、いつも聞かれるのが「難しそう」という言葉。実際のところ多少のコツは必要だが、少しの練習で撮影はできるようになる。

基本的には送信機のスティックを動かし、上昇/下降、左右移動、回転、前後移動の操作を行う。この操作には多少の慣れが必要で、自由に操作できるようになるまで、ある程度の練習をした方が良い。

困ったらスティック操作をやめよう。するとその場でホバリングして静止する。落ち着いたらまた操作を始めれば良い。

自動離陸や自動帰還といった、オートパイロット機能も数多く用意されている。離陸した場所に自動的に戻ってくることも可能だ。

「インテリジェントフライトモード」を利用することで、さらに高度な自動操作も行える。例えばマップ上にGPSポイントを設定すれば、その場所まで自動的に飛行してくれる。被写体を中心に機体は旋回し続ける「ポイント オブ インタレスト」機能もある。手動では難しい操作も、こうした機能を使うことで、ドローンが自動的に行ってくれる。

それに加え、Phantom 4には今までに無い最新の機能を搭載している。

「タップフライモード」は、画面にタッチするだけで、その場所へ自動的に飛行するモード。方向を変えたい場合も、再度画面をタッチするだけだ。スティック操作を必要としない点も初心者には使いやすいだろう。

タップフライモード

そして注目の機能が「アクティブトラック」。追尾AFのような機能で、画面内の被写体を指定するだけで被写体を適度な距離を保ちつつ追いかけることができる。実際に使用して見たところ、その精度の高さに驚かされた。スムーズに追いかけ、複雑な動きをしてもしっかりと追ってくれる。万が一被写体をロストした場合は、アプリ上で見失ったことこを知らせてくれる。

Phantom 4の魅力の一つが障害物を自動的に感知し、自動回避できる機能を持っていることだ。Active Obstacle Avoidance(能動障害物回避)機能により、飛行経路上にある障害物を回避可能だ。この機能を搭載したことにより、アクティブトラックやタップルファイが効果的に使えるようになった。

障害物はタブレットの画面上に表示され距離も出る。デフォルトでは2.5mで止まるようになっている。広角レンズを搭載したPhantom 4だけに、静止画主体のアマチュア写真家なら、ある程度被写体に迫って撮影したくなるだろう。そんなとき、Active Obstacle Avoidanceが働くのは安心だ。

Active Obstacle Avoidanceが動作している例。

基本的にこの手のドローンは、GPSによる位置情報を使って飛行する。屋内やGPSの電波を得られない場合、Phantom 4では機体の下部にあるビジョンポジショニングシステムを使う。2つの超音波センサーを使ったシステムで、GPS電波がなくても安定した飛行が可能だ。Phantom 3で搭載されたが、Phantom 4で性能は5倍に向上。検知高度は10mになっている。

機体下部には障害物認知用のカメラや超音波センサーを備える。

バッテリーは前機種から改良され、最大で28分の飛行が可能になった。実際に飛ばして見たところ、バッテリー残量30%まで約15〜17分ほど飛ばすことができた。影響されるので、夏場などはもう少し飛行できる印象。さすがにバッテリー1本では楽しめないので、2〜3本ほど予備は用意したい。

専用バッテリー
LEDでおおよその残り容量がわかる。

その他、プロペラの着脱がワンタッチで行える「プッシュ&リリース」も新機能。Phantom 3ではネジ回しの要領で、回転させて装着していた。バックや箱から出してすぐにプロペラを装着できるのはうれしい。

そしてスポーツモードを使えば時速72kmまで加速可能だ。スピード感のある動画を撮影するには最適だろう。

動画の簡易編集機能を備えた専用アプリ「DJI GO」

冒頭でも簡単に紹介したが、Phantom 4を飛ばすにはスマートデバイスと「DJI GO」アプリが必要だ。

DJI GOは、カメラのセッティングからリアルタイムの映像の確認、フライトのセッティング、ビデオ編集、SNSにシェアまでこなしてしまう便利なアプリだ。

画面上ではバッテリーの状態や電波の状態、スピードや高度まで知りたい情報がすべて把握できる。フライトログも記録可能。

また、アプリはダウンリンクした映像も記録しているので、その場で素材を編集してSNSなどでシェアすることもできる。編集機能には音源も用意され、エフェクトも加えることが可能。ぜひ活用していただきたい。

なお、現在ドローンを飛ばせる場所には規制があり、自由に飛ばすことができるエリアは限られる。DJIのWebサイトで確認できるので、事前に確かめてほしい。

禁止空域で飛ばす場合は、国土交通大臣の許可や承認が必要となる。忘れずに申請すること。また、Phantom 4を購入すると無償で保険に加入できるので、こちらも必ず加入しよう。ルールを守って、今までにないダイナミックな写真や映像の撮影に挑戦していただきたい。

本体と送信機を収納できる専用ケースが付属する。
Phantom 3用のケースよりかなり軽量化されたのがうれしい。

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/