【特別企画】いまどきのミラーレンズ「トキナーReflex 300mm F6.3 MF MACRO」を試す

Reported by 大浦タケシ


 “反射望遠”などとも呼ばれるミラーレンズ。MF一眼レフ全盛期の1970年代から80年代前半をカメラとともに過ごした人にはいずれも懐かしい響きだろう。比較的リーズナブルな価格で超望遠の世界が楽しめたため、当時愛用したカメラ愛好家も少なくないはずだ。しかし、一眼レフのオートフォーカス化や、さらにはデジタル化の波でマイノリティなレンズとなって久しい。

 そのようなミラーレンズの現状に一石を投じたのが、ケンコー・トキナーの「Reflex 300mm F6.3 MF MACRO」である。デジタル時代に相応しいミラーレンズとして、同社の光学技術の粋を集めたものだ。


現代に甦るミラーレンズ

 そもそもミラーレンズとは、その名のとおり2枚のミラーを合わせ鏡のようにした光学系を特徴とする。レンズに入ってきた光を鏡筒内で2度反射させ撮像面/フィルムに送り込む。同じ焦点距離を持つ一般的な光学系の望遠レンズと比較して、鏡筒は軽量コンパクトであるほか、ドーナツ状のミラーから生まれる独特のリングボケも特徴だ。さらに、構造的に絞りはほとんどの場合固定式としており、他の写真用レンズとは大きく趣きの異なるレンズである。

Reflex 300mm F6.3 MF MACROのレンズ構成図。ミラーレンズらしい独特の構成となっている

 マイクロフォーサーズ用のミラーレンズであるReflex 300mm F6.3 MF MACROは、フルサイズ判換算で焦点距離600mm相当の画角となる。光学特性上の要となるミラー面は、「オスカー低速研磨」により高精度に仕上げられるとともに、アルミ増反射ミラーコーティングが施され光のロスを最小限に抑える。加えて高屈折ガラスの採用や、解像感の低下やフレアの発生を招く内面反射を徹底的に抑えた光学系としている。


フィルム時代の同社ミラーレンズ500mmF8とくらべると「Reflex 300mm F6.3 MF MACRO」の小ささが際立つ。デジタルでの描写特性は、もちろん後者が上手だ

MF、固定絞りながら距離エンコーダを内蔵しているためカメラとの接点を持つ。撮影した画像のExif情報には撮影距離のデータが記録される。

 実はフィルム時代の古いミラーレンズを最新のデジタルカメラで使うと、その解像感の低さに驚かされることがある。これはレンズやミラーの光学特性、あるいは内面反射の処理がデジタルには適していないためだ。Reflex 300mm F6.3 MF MACROの光学系は上記のようにデジタルに最適化されているため、そのような心配は皆無だ。

 金属製の鏡筒の質感の高さもこのレンズの特筆すべきところ。工作精度の高さを感じさせるローレットや、どこまでも滑らかに回転し、思った位置に正確に停止するフォーカスリングなど、プライスタグ以上のつくり。メーカーとしてのこだわりや、レンズに対する意気込みも感じさせる。

丁寧な加工によるローレットはクラス以上の仕上がりだ。フォーカシング時の感触も上々で、ヘリコイドのトルク感とともに操作性はたいへんよい。

ライブビューの活用で使いやすく

 Reflex 300mm F6.3 MF MACROの優れた描写を満喫したいなら、超望遠ゆえ他のレンズ以上にピントとブレには留意が必要だ。マニュアルフォーカスである本レンズの場合、ライブビューの拡大表示機能を積極的に活用しよう。EVFを内蔵しているマイクロフォーサーズ機ならば、ファインダーに接眼してピントを合わせるとなおよい。

 ブレに関しては、三脚とリモートレリーズがあった方がよいだろう。さらにISO感度はオートを選択しておくと、被写体ブレをより防ぐことができる。


付属するフードを装着するとより精かんな印象となる。遮光効果も十分で、内側は光の反射を抑える植毛処理が施される。

 撮影はとにかく楽しい。点光源や木漏れ日などのある背景を選べば、リングボケのある独特の描写を味わうことができる。裸眼で見たときとは違った印象なので新鮮にも感じるはずだ。狭い画角ゆえに被写体を大胆に切り取った意外性のある写真が得られるのも、このレンズならでは。

 もちろん描写はデジタルに最適化された光学系により、シャープネス、コントラストとも上々。従来のミラーレンズにありがちなフレアやコマ収差の発生もほとんど見受けられない。さらに、0.8mという最短撮影距離も使い勝手がよく、600mm相当の画角を活かした望遠マクロ撮影も存分に楽しめる。

 マイクロフォーサーズユーザーなら、Reflex 300mm F6.3 MF MACROをぜひ手に取ってみてほしい。超望遠の世界が手軽に楽しめるレンズとして、独特のボケ描写や精度の高いつくりとともにその魅力に引き込まれることと思う。イメージサークルの大きさから、そのまま流用することは難しいだろうが、今後他のフォーマットでの展開も期待したいレンズである。


作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
最短撮影距離は0.8mを実現する。トンボのような小さな被写体でも大きく画面に引き寄せることができる。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約7.4MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F6.3 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート

MFであるため動いている被写体は不得手とするが、置きピンなら十分楽しめる。狭い画角ゆえ大胆なアングルで被写体を切り取ることも可能だ。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約7.4MB / 4,608×3,456 / 1/320秒 / F6.3 / 0.0EV / ISO250 / WB:オート

ピントの合った部分はシャープだ。解像感の低下など見受けられず、ミラーレンズとしてはコントラストの高い締まった描写である。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約7.1MB / 4,608×3,456 / 1/800秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート

ミラーレンズのボケといえばリングボケだが、二線ボケも特徴のひとつ。上手く表現に活かすようにしたい。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約6.1MB / 4,608×3,456 / 1/800秒 / F6.3 / -2.0EV / ISO200 / WB:オート

リングボケを活かした描写はミラーレンズならでは。点光源のある背景を意識的に探すのも楽しい。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約7.9MB / 4,608×3,456 / 1/320秒 / F6.3 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート

木漏れ日が樹液を吸うセミを照らす。鳴くときはじっとしているセミはミラーレンズの格好の被写体。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約6.1MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F6.3 / -2.0EV / ISO400 / WB:オート

こちらの作例では、背景にリングボケが盛大に現れている。ISOオートで撮ると被写体ブレも三脚ブレも気にせずに撮影が楽しめる。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約8.0MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO1600 / WB:オート

リングボケの発生が少ない背景を選び撮影してみた。この条件だと二線ボケもさほど気にならないレベルである。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約7.0MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F6.3 / +1.0EV / ISO640 / WB:オート

色のにじみなどなくエッジの効いたシャープな描写である。こちらも背景を選び、リングボケを抑えている。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約5.9MB / 4,608×3,456 / 1/320秒 / F6.3 / +1.7EV / ISO250 / WB:オート

窓の奥に見える灯りをねらった。フォーカシングはEVFのスルー画を拡大表示して行なうとより正確に合わせられる。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約6.7MB / 4,608×3,456 / 1/320秒 / F6.3 / +0.7EV / ISO800 / WB:オート

ガラスに映りこんだ点光源がリングボケとなる。このような描写はEVFやモニターで見てはじめて気がつくことが多い。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約7.5MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F6.3 / +0.7EV / ISO1600 / WB:オート

コントラスト、シャープネスとも高い描写だ。これまでのミラーレンズの常識を大きく覆すものといってよい。E-M5 / Reflex 300mm F6.3 MF MACRO / 約7.7MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO250 / WB:オート

(協力:株式会社ケンコー・トキナー)




大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2012/8/22 00:00